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MS「ハイテクテーブル」のローテクな弱点

» 2007年05月31日 16時59分 公開
[Steven J. Vaughan-Nichols,eWEEK]
eWEEK

 米Microsoftの新しいテーブル型PC「Microsoft Surface」だが、あれはクールだ。一目見たら、コーヒーテーブルとして1つ欲しくなるくらいだ。たとえ、LinuxではなくWindows Vistaを搭載しているにせよだ。

 だが、おそらくわたしがこれを買うことは決してないだろう。実際のところ、わたしには、このテーブル型PCがコンシューマー向けの第2世代が提供されるほど十分に成功するかどうかすら疑問だ。ほら、だって、Surfaceのタッチパネルは複数のユーザーが同時に操作できるということだけれど、そういうアイデアはひどく昔からあるし、それに、けっこう問題のあるアイデアだから。

 タッチスクリーンは1974年以来、存在している。当時、今日のElo Touchsystemsの前身であるElographicsとその創業者のサム・ハースト博士が初めて真のタッチスクリーンを開発した。レストランのレジやバーのポーカーマシンなど、垂直的なキオスクコンピュータ業界にかかわっている人でもなければ、多分、ハースト博士やEloについては聞いたこともないだろう。

 それには理由がある。タッチスクリーンの支持者たちは、かれこれ30年以上もの間、タッチ式のコンピュータ操作の方が簡単で自然だと言い続けてはいるものの、実際のところ、タッチスクリーンは簡単でもなければ、自然でもない。これら2点のいずれか一方でも本当であれば、今ごろは皆、タッチスクリーンを使っていただろう。だか現実には、使っていない。

 まず最初の問題は、人間工学的に言って、大きなタッチスクリーンでは腕が疲れるということだ。そのため、「ゴリラ腕」と呼ばれる現象が起きる。これまでゴリラ腕については、「タッチスクリーンをしばらく使うとゴリラのような姿勢になること」と説明されてきたが、わたしは常日ごろ、本当は、腕がゴリラに引っ張られているように感じるからではないかと思ってきた。とにかく、どういうことかはお分かりいただけるだろう。小さなタッチスクリーンであれば、手首と指しか使わないから問題ないかもしれないが、いったん肩やひじを使い始めると、腕の疲労はすぐに始まる。

 では実際、大きなタッチスクリーンはどこで使われるだろう? 数分おきに数秒間使われるインタフェース機器であるのならば、例えば、Surfaceは携帯電話データのインタフェースとして使えるのではないだろうか。それならば、うまくいくかもしれない。だが、コンシューマー向けのデバイスとなると……。うーむ、わたしには、うまくいくとは思えない。

 タッチスクリーンには、ビジネスシーンにおいても、また別の問題がある。汚れや傷があると、タッチスクリーン上での作業は厄介だからだ。どんなタッチスクリーンであれ、正確に動作するためには、常にきれいにしておく必要がある。

 タッチスクリーンの登場以来、この問題は周知のことだ。例えば、わたしはタッチスクリーンのリセラー数社から、顧客にはトップクラスのディスプレイクリーニング製品Klear Screenを使用してデバイスを掃除するよう奨励しているという話を聞いたことがある。なぜか? なぜなら、Klear Screenを使えば、ディスプレイのタッチセンサーの性能を損なわずに、油やほこりを取り除けるからだ。

 ユーザーインタフェースを専門とするSynapticsなど、ベンダー各社がより丈夫な新しいディスプレイ技術の開発に取り組んでいる。例えば、SynapticsのClearPad技術は薄くて高解像度の静電容量型のタッチスクリーンで、強度にも優れている。だが残念ながら、この技術は今のところ、次世代携帯電話Onyxのコンセプトモデルでしか提供されていない。

 Surfaceの問題は、大型のフラットディスプレイに共通するこうした一般的な問題点に留まらない。何が起こりそうかは容易に想像できるだろう。そう、誰かがSurfaceの上にコカコーラの缶やコーヒーカップ、あるいはその両方を置くかもしれない。あるいは、スニッカーズのようなチョコレートバーが置かれたらどうなるだろう?

 スニッカーズはすぐに撤去するにしても、Surfaceのディスプレイはそういったスナック類で早晩ベト付き始めるだろう。そして当然、中には、マウンテンデューの缶を無造作に置いたりする人も出てくるだろう。となれば、どうなることやら……。こうしたタッチ式のコンピュータがどれだけ炭酸飲料に耐えられるかだ。

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