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MSはVistaのマイナスイメージをぬぐい去れるか?(1/2 ページ)

» 2008年07月29日 16時55分 公開
[Joe Wilcox,eWEEK]
eWEEK

 映画「フィラデルフィア・エクスペリメント」では、科学者が米海軍の駆逐艦エルドリッジをレーダーから消し去ろうとするが、米Microsoftは「モハーベ(Mojave)・エクスペリメント」でWindows Vistaに対するマイナスイメージを消し去ろうという計画のようだ。

 Microsoftは先週開催したアナリスト向けの年次会議Financial Analyst Meeting(FAM)において、このモハーベ・エクスペリメントに関する詳細を明らかにした。7月29日には、この実験結果について説明したWebサイトが公開される予定だ。

 Microsoftのオンラインサービス&Windowsビジネス部門担当上級副社長ビル・ベクティ氏はこの実験について次のように説明した。

 われわれはWindows XPユーザーを集めて面談し、その様子をカメラに収めた。適当な番号に電話をかけて、XPユーザーを集めたのだ。条件は、現在Windows XPを使っており、Windows Vistaに対してマイナスのイメージを抱いているというものだった。Windows Vistaを使っているわけではないのにVistaを否定的にとらえる傾向にある人たちを集めた。

 続いてベクティ氏はこのユーザーグループを撮影した動画の試作版を披露したが、その中でユーザーは次期Windowsとして紹介されたコードネームで「Mojave」と呼ばれるOSに対し、非常に好意的な反応を示している。だが実際、Microsoftが彼らに見せたのはまさにWindows Vistaだったのだ。

 「これはわれわれにとってチャンスだ。認識対現実、それこそがわれわれが今後顧客と対話すべきポイントだ」とベクティ氏は語った。29日にこのモハーベ・エクスペリメントのサイトが始動すれば、恐らく、認識と現実が相対することになるのだろう。

 ここでわたしが「恐らく」と付け加えたのは、実際にはこれは認識対現実ではなく認識対認識の戦いになるはずだからだ。実験に参加したユーザーたちがWindows Vistaに対してマイナスイメージを抱いていたのは、恐らく、製品レビューやブログ、掲示板のコメント、あるいは友人や家族、同僚らの反応が原因なのだろう。だが彼らの認識が突然プラスに転じたのは、10分間のデモを見たからであって、実際にVistaを使ってみた結果ではない。レビューやブログ、掲示板での否定的なコメント、あるいは友人、家族、同僚らの不満の原因になっているVistaの各種の問題を実際に体験した上での結論ではないのだ。

 MicrosoftがVistaに対するマイナスイメージを変えたいと思うのは正しいことだ。だがベクティ氏がこのチャンスを「認識対現実」と呼んだのは間違いだ。ここには現実など関係していない。現実が重要ではないというわけではない。だがマーケティングにおいては認識がすべてであり、商品を販売する上では現実などほとんど関係ないのだ。男性諸君にしても、ホットロッドの改造車の広告で、車の隣りにセクシーな女の子が立っているからといって、そのかわいい女の子まで手に入るとは思わないだろう。そもそも、なぜこうした改造車をホットロッド(熱い棒)などと呼ぶのだろう? 変速ギアからの連想だろうか? これはつまり、ホットロッドの製品イメージとしてセクシーさを印象付けたいということなのだろう。

 タバコの広告もそうだ。実社会では、マルボロを吸う人が皆、屈強なカウボーイであったり、しゃがれ声で話すわけではない。広告では、喫煙してこそ本当の男だというイメージを植え付けたいのだろう。

 Microsoftもイメージを売り込もうとしている。だが今回のケースで特殊なのは、Microsoftはプラスのイメージを生み出そうとしているのではなく、マイナスのイメージを消し去ろうとしているという点だ。これは難しい挑戦だ。イメージというものは糸くずのように製品にまとわり付いてなかなか離れないものだからだ。

 Microsoftは半ば都市伝説化しているVistaへのマイナスイメージをぬぐい去りたい考えだ。映画「フィラデルフィア・エクスペリメント」は駆逐艦エルドリッジに関する都市伝説に基づいている。民間伝承はなかなか忘れ去られないものだ。ましてやインターネット上でとなれば、なおさらしぶとく残り続けるだろう。米国政府がフィラデルフィア計画に関するうわさを一掃できないのと同じように、Microsoftもそう簡単にはVistaに対する悪評を消し去ることはできないだろう。

 Microsoftに必要なのは、映画「フィラデルフィア・エクスペリメント」で主役の乗組員2人に起きたことを、モハーベ・エクスペリメントでVistaにも起こさせることだ。それは、タイムトラベルだ。映画では、乗組員は40年後の世界にタイムスリップした。Microsoftも誰かを過去に送り込み、Vistaのマイナスイメージが広まる前に問題を修復させる必要がある。Microsoft幹部が犯した一連のミスでVistaは大失敗となってしまったのだから。

 面白いのは、Microsoftが自らのミスをいかにして他人のせいにしているかだ。ベクティ氏の数回のスピーチに先立ち、Microsoftのスティーブ・バルマーCEOはVistaのイメージに関する残念な現状について次のように語っている。

 われわれは、当社よりもはるかに排他的で狭い視野を持ち、当社よりもはるかに少ない選択肢しか提供していないある競合の1社から攻撃を受けているようなものだ。これからは、われわれが自分たちのストーリーを語る番だ。今後は、Windows PCは単により多くの選択肢を提供するだけでなく、Macやそのほかのマシンが提供する選択肢をすべて提供できるのだという点をもっと積極的にアピールしていく。

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