公式発表だ。MicrosoftはWindows 7のエディションを少なくとも6つリリースする。Vistaから引き継いではいけないものだったのに。
Windows 7がVistaを基盤にしていることは分かっている。だが、MicrosoftはVistaと同じ間抜けなマーケティングの間違いをしてはいけないのだ。あっていいのは多くて2エディション。わたしは1エディションだけの提供を強く勧める。
ここでMicrosoftは驚異的なマジックを演じようとしている。巧妙にわたしたちの目をそらし、どうにかして6つを2つにしようとしている。MicrosoftのプレスサイトのQ&Aで、Windowsジェネラルマネジャーのマイク・イバラ氏は次のように説明している。
Windows 7には2つの主要エディションがあります。Windows 7 Home PremiumとWindows 7 Professionalです。この2つのSKU(エディション)でほとんどの顧客のニーズは満たせると考えています。Windows 7 Home Premiumはコンシューマー向けの選択肢としてお勧めします。Windows 7 Professionalは小規模企業や自宅で仕事をされる方にお勧めです。
キーワードは「主要」、つまりほかのエディションもあるが、重要なのは2つだけだと強調しているわけだ。全エディションは以下の通り。
これは少々寛大な見方だ。エディションの数は、32ビット版と64ビット版を数に入れると、6つではなく11だ。PCメーカーは64ビットで統一するだろう。既に4Gバイト以上のメモリを積んだコンピュータ向けにはそうしている。欧州の独占禁止当局の要請で作った、Windows Media Playerを載せていない「N」バージョンも忘れてはいけない。当局はもうすぐInternet Explorer(IE)のないバージョンも要求するかもしれない。
Windows 7のエディションは基本的にVistaと同じラインアップだ。大きな変更はない。入手形態にも実質的な変化はない。ほとんどのPC購入者は、Vistaの2つの「主要エディション」(Home PremiumとBusiness)のうちどちらかを選んでいる。PCメーカーは既に、BasicとUltimateエディションの提供をほぼやめている。新しいVistaプリインストールPCの大半はPremiumを、一部はBusinessを搭載している。Home Basicは機能が少な過ぎるし、Ultimateは高価過ぎる。ほとんど需要がないのなら、なぜMicrosoftはこれらのバージョンを残さなくてはならないのだろうか。
そこでもう1つ疑問が出てくる。どうしてBasicとStarterの両方があるのだろう? どちらかだけにしておけば、理にかなっているし顧客の混乱も少ない。ところで、Starterは32ビット版だけで、64ビット版はない。
わたしはMicrosoftのエディション戦略にあきれかえっている。Microsoftには市場の声に耳を傾ける人はいないのだろうか。こういう状況では、独占企業的な考えが働いているのだと思う。MicrosoftはWindows XPでは3つだったエディション(Starterを入れて)を、Vistaでは6つに増やした。だが市場は2つのエディションに統一した。競争の激しい市場なら、Microsoftは2つのエディションが求められている市場で、6つのエディションを提供するようなことはしないだろう。
SKUにはさらに解説が必要な、微妙な変更が加えられている。
MicrosoftはWindows XPからWindows 7へのアップグレードを提供するとか何とか、2月3日午後にMicrosoftのPR代理店から聞いた。だが、そこにはわたしの警戒心を呼び起こす奇妙さがあった。Windows XPからアップグレードするには、クリーンインストールが必要だ。XP上にWindows 7をインストールすることはできない。その代わり、バックアップユーティリティを使ってデータをバックアップし、Windows 7のクリーンインストールをして、データを復旧しなければならない。Windows XPは「現行」バージョンではない。XPからのアップグレードはコストが高くなるなどの条件が付くのではないかとわたしは疑っている。
アップグレードと言えば、この最低なエディション分けのもう1つの問題だ。ほとんどの人はいずれWindows 7が載った新しいPCを買うだろうが、いち早く小売店でアップグレード版を買う人も多いだろう。Home Premium、Business、Ultimateそれぞれにアップグレード版とフルバージョンがある。かなりの混乱を呼びそうだ。Service Pack(SP)1を適用したVistaの場合、Amazon.comなどの大手小売店はエディション当たり2〜4つのバージョンを提供している。フルバージョンの32ビット版と64ビット版、アップグレード版の32ビット版と64ビット版だ。Microsoft Storeでは、Basic、Premium、Business、Ultimateの4つのエディションで10個のバージョンがある。
米AppleはもっとスマートなSKU戦略を展開している。バージョンは1つ、価格も1つだ。アップグレードしたすべてのユーザーが、最高の機能をすべて使える。誰がどの機能を使えるのかという点で混乱はない。AppleのOSアップグレード率はMicrosoftよりはるかに高く、通常は80%以上だ。これに対して、Vistaが発売されてから2年以上たつのに、同OSを採用した企業はわずか10%程度だ。
こうした比較について、同じ土俵では比べられないと主張する人もいるだろう。Microsoftは企業向けの販売が多く、Appleはコンシューマー向けで成功している。2つの市場のニーズは異なっており、企業はすべてのプラットフォームでアプリケーションとプロセスの互換性を確保することを求めている。わたしはこのような考え方には賛成しない。
Windows 7は以下の点で、Microsoftで最もMac的なリリースになるだろう。
これはアップグレードをできるだけ簡単にする適切な判断だ。バージョンは1つ。価格は1つ。シンプルで率直なマーケティング。
それからもう1つ。Microsoftのバージョン戦略は、同社がデジタルライフスタイルの統合に関して掲げている目標と大いに矛盾している。多くの人にとって、家庭生活と職場での生活は収束している。Windows 7の新しいネットワーキング機能は、職場にノートPCを持っていき、家に持ち帰るという問題の一部解決を目指すものだ。
同社のバージョン戦略は、家庭と職場の機能を分けている。両方のライフスタイルで使えるようにするべきなのに。Vista Home Premiumは仕事に使うには不十分だ。だからMicrosoftはUltimateを提供している。Windows 7では、Microsoftは家庭用にはPremiumを、仕事用にはProfessionalを推進している。その機能は、個人のニーズと仕事人のニーズを十分に満たすとは思えない。Ultimateが解決策になるというのなら、なぜUltimateは「マニア」「特別なニーズ(specialized need)」向けとマイク・イバラ氏が説明するQ&Aがあるのだろうか。「need」――複数形でもない。
MicrosoftはVista立ち上げ前に、わたしの「SKUは少ないほどいい」というアドバイスに耳を貸さなかった。Windows 7でもその戦略は何も変わっていない。読者の皆さんも同意見だろうか? バージョンは多過ぎるだろうか? それともちょうどいいか、あるいは足りないだろうか?
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