Appleのスティーブ・ジョブズCEOが1月27日に「iPad」を発表したとき、皆が興奮したのはよく分かった。IT業界には何カ月も前から、iPadがどんなものかといううわさや憶測があふれていた。だがジョブズ氏がステージ上でiPadを披露したとき、出てきたのは、一部ではユニークだが、ほかの部分ではがっかりする製品だった。
iPadは多くの人が期待していたような革命的な製品ではない。独自のOSを搭載し、1つの重要な要素を備えたタブレットコンピュータに過ぎない。その大事な要素とは、Appleの名前だ。
iPadがAppleから提供されるという事実は、同製品の最大の長所だ。背面にAppleのロゴがついていなかったら、27日のような注目は集められなかっただろうし、今日の給湯室の話題にもなっていないだろう。Appleのおかげで、決して革命的でないデバイスが、ほかのどの製品でも不可能なほどの話題を集めたのだ。
AppleロゴがなかったらiPadは失敗するだろう。そう考える理由を見ていこう。
ほかの企業がiPadのリリースを準備していたなら、発表前からうわさになることはなかっただろう。AppleはIT業界のほとんどの人から注目を集めている。それは主に、同社の過去の成功によるものだが、同社の秘密主義も一役買っているかもしれない。Apple社員から情報を引き出そうとしても、(うまくいっても)それほど多くのものは得られないだろう。それが、iPad発表前に話題を盛り上げる一助となり、皆を興奮させた。だからApple発表会は大イベントになったのだ。
CESでほかの企業が幾つかタブレットを発表したことは忘れてはいけない。これらの企業は他社と注目を分け合わなければならなかったし、メディアが自社の製品を取り上げてくれることを期待するほかなかった。一方Appleは、ぜいたくにもCESには出ず、その数週間後に、新製品を見に来るようにと多数のマスコミを招待した。DellやHewlett-Packard(HP)などのタブレットメーカーがこんなことをしようとしても、ほとんど気に留めてもらえないだろう。招待したのがAppleだから、マスコミは大挙してイベントに参加し、iPadはほかのタブレットではできなかったほどの注目を集めた。
Dellにはマイケル・デル氏がいるかもしれない。Microsoftにはスティーブ・バルマー氏がいるかもしれない。だが、ジョブズ氏のように尊敬や支持者を得ているCEOはこの業界にほかにはいない。ジョブズ氏が発表すれば、人々は耳を傾ける。それは主に、同氏のこれまでの実績によるものだ。同氏は長年Appleを率い、魅力的で革命的な製品を市場に送り出してきた。確かに同氏はiPadでもそれをやってのけるかもしれない。それは議論の余地がある。もしもバルマー氏が同じ製品を発表していたら、これほど熱烈な称賛を浴びることはなかっただろう。ジョブズ氏はすべてのApple製品にとって資産だ。その点はiPadも変わらない。
欲しいモデルによるが、iPadは60〜90日間は手に入らない。Appleほどの企業の製品でなければ、その間に忘れ去られるだろう。だがこの先60〜90日間、人々はiPadにどんな機能があるか、iPadがいかに画期的かを語り続けるだろう。それは単に、iPadがApple製品でしか得られないような注目を集めたからだ。HPが2010年にSlateコンピュータをリリースすることを、何人の人が知っているだろうか? JooJoo(Fusion Garageのタブレットマシン)という製品を聞いたことがある人はどのくらいいるだろうか? これらの製品は発表された後で、忘れ去られた。ほとんどの人は、いつ店頭に並ぶかも知らないだろう。iPadは違う。それはAppleロゴのおかげだ。
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