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Microsoftの求人票から垣間見えたWindows 8の方向性

» 2010年11月11日 13時44分 公開
[Nicholas Kolakowski,eWEEK]
eWEEK

 わたしには、米MicrosoftがWindows 8の開発計画についてあまり多くを公表したがらない理由がよく分かる。なにしろ、Windows 7は好調に売れ行きを伸ばしているのだし(Microsoftによると、2009年10月の発売以来、すでに2億4000万本のライセンスを販売したという)、それに、次期バージョンを正式に発表したりすれば、まだXPやVistaを使っているユーザーにWindows 7へのアップグレードを思いとどまらせることになりかねないという懸念もあるだろう。

 それにもかかわらず、Windows 8をめぐるうわさは広がる一方だ。ブログ界では、次世代Windowsのリリースは2012年というのが大方の見解のようだ。またうわさによれば、Windows 8はMicrosoftが広く宣伝している「全部入り」の戦略に従い、WebアプリケーションやWebコンテンツと緊密に統合されたものになるという。

 Microsoft自身はWindows 8について公式には堅く口を閉ざしたままだ。だが同社の求人情報サイト「Microsoft Careers」に掲載された2件の新規求人票は、同社がWindows 8の開発にかかわる人材を積極的に探していることを示唆している。どちらの求人票もすでにMicrosoftのサイトから外されているが、WinrumorsWindows8newsなどのブログがその完全版のコピーを掲載している。わたし自身はこうした求人票がMicrosoftのサイトに掲載されているのを自分の目で確認していないため、ただそれだけの理由からだが(実際、これらの素晴らしいブログを疑う理由など何もないけれども)、以下の情報は念のため話半分で読んでいただきたい。

 1つめの求人票は、「Windows Azureベースのサービスの開発、およびMicrosoftの一部のオンラインサービスとWindows 8クライアントバックアップの統合を手伝えるソフトウェア開発エンジニア」を募集したものだ。

 2つめの求人票が求めているのは、「Microsoftの各種のオンラインサービスとWindows 8の統合において中心的な役割を果たせるWindowsシステムエンジニア」だ。

 今夏には、Microsoftの社内で作成されたとみられるスライドが流出したが、そのスライドは、Windows 8で実際クラウドが大きな役割を果たすであろうことを示唆する内容となっていた。スライドはMicrosoft JournalというWebサイトが6月26日に掲載したもので(このサイトはその後まもなくMicrosoftのブログサービスであるWindows Live Spacesから姿を消した)、Windows 8に関する社内の話し合いの詳細が2010年4月付で記録されている。Windows 8への搭載を検討中の機能としては、超高速起動、アプリケーションをダウンロードするための「Microsoft Store」、クラウドとの本格的な連係、顔認識技術を使ったログインなどが挙げられている。

 スライドの1つには、「Windowsアカウントはクラウドに接続できる」と書かれ、その下には箇条書きで、「ローミング設定と環境設定はPCと端末との間でユーザーに関連付けられる」と書かれている。

 10月に米フロリダ州オーランドで開催されたGartner Symposium/ITxpo 2010でのディスカッションにおいて、Microsoftのスティーブ・バルマーCEOは、「Windowsの次期リリース」は同社にとって最も危険な賭けになるだろうと発言した。デスクトップベースのWindows製品ラインは今もよく売れているが、Microsoftを退職することが決まっているチーフソフトウェアアーキテクトのレイ・オジー氏をはじめとする一部の人間は、「将来主流となるのはクラウドに接続された端末だ」と考えている。そして、そうした端末は、従来のデスクトップPCやノートPCとは大きく異なる形態になるものとみられている。

 Microsoftが退職について発表してから数日後となる10月28日、オジー氏は自らのブログで次のようにコメントしている。「コンピューティングとコミュニケーションの分野で起きているさまざまな出来事を考えれば、今のこの転換期において、われわれ皆が競合企業や顧客の最終目標を的確にとらえて実行することが重要となる。目を閉じて、PC後の世界がどうようになっているのか、現実的なイメージを思い浮かべてみようではないか」

 今回の求人票の情報が正確なものであるのなら、Microsoftが「全部入り」のクラウド戦略をWindowsに適用しようとしていることを示す、さらたに新たな証拠と言えるだろう。個人的には、わたしが気になっているのは、果たしてMicrosoftが従来のデスクトップ重視の方針とクラウドの新たなパラダイムとの間の難しい綱渡りをどのようにしてやりおおせるかということだ。その答えは数年後には明らかになっていることだろう。

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