“情報ハブ”になる方法――データセクション・橋本大也さん達人の仕事術

ブログ、mixi、ソーシャルブックマーク――。インターネットを活用した仕事術をデータセクションCEOの橋本さんに伺った

» 2006年07月05日 18時22分 公開
[鷹木創,ITmedia]

 早稲田大学在籍中に「アクセス向上委員会」を立ち上げた橋本大也さん。その後、ITビジネス全般の技術評価及びマーケティング戦略のコンサルティングを開始し、2000年にはデータセクション株式会社を設立した。日本のインターネット業界草創期から活躍する橋本さんのインターネットを活用した仕事術に迫る。

危険な情報は書かない

データセクションCEOの橋本さん

 2003年からブログ「情報考学 Passion For The Future」を運営している橋本さん。2006年6月中旬には1000エントリーを達成した。いち社会人が個人メディアとしてのブログに記事を書く上で気にしていることは何だろう。

 鉄則は「公開できないことはけして書かない」ことだ。「mixiのようなSNSだろうが、ブログだろうが公開できないことは絶対に書きません。すごく書きたくなっちゃいますけど、“書いたらダメ、書いたらダメ”と自分に言い聞かせます(笑)」。インターネットでは匿名性が特徴だが、必ずしも完全ではない。むしろ保存されたログなどにより、個人を特定できることもある。mixiだってインターネットから完全に切り離されているわけではない。mixiのほかの会員から2ちゃんねるなどに紹介されてしまうケースだってあるのだ。

 物腰の柔らかな橋本さんだが、まれにブログが“炎上”することもある。とはいえ、橋本さん自身がパニックに陥ることはない。「炎上するのはむしろラッキーですよね。ページビューも増えますし(笑)」。そもそも、炎上してパニックになってしまうブロガーは炎上の仕組みがわかっていないという。

 「橋本流ブログの心構え」の鉄則は、インターネット上でここだけの話は書いちゃダメ、そして、世間の常識とは逆のことを書く場合は気をつけろ――だ。「世の中で『こうだ』といわれていることの逆を書くときは特に気を使う必要があります。また、公開できない情報をインターネット上で書くと、結果的に絶対悪いことになるのが経験則でわかっていますから」

 最近はソーシャルブックマークにも注目する。個人的にはexciteのソーシャルブックマーク「リンクポスト」の公式ポスト人でもある。私的なブックマーク(非公開)もあり「あとで読む」などの備忘録的に使っている。ブログのエントリーをブックマークされる側としても重宝している。はてなブックマークでのブックマーク数は、多いときで400を超える。「ソーシャルブックマークで読者のコメントが読めれば、ブログのコメント欄はいらないですね。はてブのコメントは、そもそも私の管轄外なので、たとえ荒れたとしても解消する必要はありませんし」

情報集めは「人」

 インターネットに精通する橋本さんだが、「公開してはいけない情報をブログには書かない」ことを身上とするだけあって情報集めは「人」が基本だ。愛用するMSNメッセンジャーのコンタクトリストは約80人。何かの当事者か専門家で占められており、以前、IT業界に事件が起きた時、このコンタクトリストにその事件の関係者がいたこともあったという。

 新聞記者の父親に連れられ、エジプトに5年間住んだ経験がある。「年中、英語のラジオつけながら記者同士でマージャンを打っていました。4人で聞いていれば誰かがわかるだろうという生活の知恵だったのではないでしょうか」。橋本さんにとってはメッセンジャーのコンタクトリスト80人が“マージャン仲間”なのだろう。

 橋本さんにとって情報は「引き出して終わり」ということでは決してない。「コミュニケーションしてよいアイデアが出て、コラボレーションや動機付けができるのが一番いいですね」。やり取りした言葉はたわいなくても「コミュニケーションをとった相手が何かやってくれちゃうのがいい」と無邪気に笑う。

 情報のわらしべ長者のススメ――。何かのエキスパートでなくても、情報のハブになると情報が集まり、結果として専門家になれることがある。「従来は1人で勉強して専門家になっていました。これからは専門家を集めてネットワーク化することで専門家になれる」という。

 このススメは、商用メディアに限ったことではない。「まずは一般のセミナーなどで2、3人の専門家と仲良くなります。『○○先生がこんなことを言っている』などとメーリングリストに流せばそれに対しての反応も得られるようになれますよ」。つまり、個人ブロガーでも情報のわらしべ長者になることは難しいことなのではないのだ。「ステップアップしたいビジネスパーソンはブログを開きましょう。そしてコミュニティを作って情報のハブになるとよいでしょう」

消息が途絶えがちな友人に“突然のメール”

 コミュニティができたら、今度は人と人とのつながりをどうメンテナンスするのか。「名刺は基本的にメールをしたら捨てちゃいます。名刺を探してコンタクトしたことはありませんね」。イベントの企画や講演依頼の多い橋本さんは年間で約2000枚の名刺を交換する。1週間程度はポケットにとどめておくが、「そのまま連絡がなければ捨てちゃいます。メールがつながれば次からはメールになりますね」

 毎日1000通のメールを受信する。返信が必要なメールはそのうち20〜30通。そのうち半分くらいは「はい!」とか「わかりましたー」などのひと言で済ます。

 とはいえ、メールだけを全面的に信頼しているわけでない。アポイントなどのスケジュールは電話派だ。メールでやり取りすると確定までに2、3回程度のやり取りが発生するケースが少なくないが、電話であればその場で決められることが多いからだ。最近はスパムメールが多く、必要なメールを見落とすことが増えたのも要因になった。

 橋本さんらしい友人関係維持の工夫は、消息が途絶えがちな友人に対して、突然その友人に何の関連もない話題のメールを送信することだ。

 「メッセンジャーとかメールアドレスを見て、最近会っていないご無沙汰の人に何らかの情報を送ります」。交友関係を維持できるだけでなく、メールを出すことで橋本さん自身を思い出してもらうことで、新しく事業が始まったりすることもあるという。

 「自分を中心にして友人の円があるとすれば、円の外周付近の人たちとの関係をどう維持するかが重要です。メールを送って反応を見るわけですが、反応がなくても関係を切ったりするわけでありません。“寝かせておく”というべきでしょうか。メールならではの方法ですよね。電話だといやらしいし、突然の連絡に宗教の勧誘かと思われるかもしれませんから(笑)」


突然のメールで友人関係を“活性化”させるという

影響を受けたのは増井さん、そして父親

 座右の銘は「人生我以外皆師也」。「人生において他人はみんな先生である」という意味だ。小中学生のころは登校拒否、高校は2度の中退、大学も中退したという橋本さんは学校の学問というよりは独学で現在の地位を築いた。その一方で、ややもすると人の話を聞かなくなるところがあり、高校時代の恩師に贈られた言葉が「人生我以外皆師也」だった。

 尊敬しているのは、ユビキタス技術や検索技術の専門家である増井俊之さん。「増井さんは、全部自分で作ったシステムで仕事をしています。日本語入力システムまで自作してますから。何より現役の研究者としてリスペクトしてますね。情報を扱うスタイルやモノの見方に影響を受けました」

 文章を書くことが好きなのは、やはり新聞記者である父親の影響だ。「事件が起きるととたんにモードが変わるんです」と現場記者時代の父親を懐かしそうに語る。情報をいつもウォッチし、ことが起きればすぐに動く――、いち早くインターネットに興味をいだいた橋本さんの原点を見た気がした。


橋本さんの“7つ道具”だ
プロフィール
お名前 橋本大也(はしもと・だいや)
PC NEC Lavie、IBM Thinkpad、Mouse Computer、他数台
携帯電話/PDA SH901i
デジタルカメラ FinePix F10
ブラウザ Internet Explorer 6(メイン)、Firefox(サブ)
収集ツール(RSSリーダーなど) Freshreader
メールクライアント Becky!
インスタントメッセンジャー MSNメッセンジャー
ファイル整理ツール(デスクトップ検索を含む) Googleデスクトップ
検索サイト Google、Yahoo! JAPAN
Webメール Gmail、Yahoo!メール
ブログ mixi
ソーシャルブックマーキング Linkpost
影響を受けた人/本/Webサイト 萩原雅之さん(ネットレイティングス社長)、増井俊之さん
座右の銘 人生我以外皆師也
手帳/ノート アイデアマラソン手帳
ペン 3色ボールペン、携帯ミニボールペン
その他小物(ICレコーダ、ポストイットなど) iPod iTalk

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