インタビュー
» 2006年07月03日 11時25分 公開

達人の仕事術:調査会社のRSSリーダー利用法――ネットレイティングス・萩原雅之さん

インターネットの動向を調査するネットレイティングス。その社長である萩原雅之さんは「最近RSSリーダーの使い方に変化があった」という

[鷹木創,ITmedia]

 「動画共有『YouTube』、日本から月200万人利用」「意外と高い!? 『GyaO』のアクティブ率」「mixiのバナー表示回数、Yahoo!に次いで2位」などなど、視聴率を切り口にインターネット上の動向を分析するネットレイティングス。そんな同社の代表取締役社長を務める萩原雅之さんに仕事術を伺った。

 「実は全然デジタルな仕事術はないんですよ」と萩原さん。ネット関連企業の社長だから、デジタルグッズ使いまくりの最先端仕事術を持っているのではとの“誤解”も多いが、「デジタルカメラを買ったのも去年。プライベートな写真は今でも銀塩カメラなんです。そもそも女房がPCをやりません。キーボードすら触らない。PCを1台買うにも“家庭稟議”が降りないんです」と笑う。

RSSリーダーの使い方に変化

ネットレイティングス社長の萩原さん

 仕事道具のノートPCは、主に会社から支給されたデルのノートPC「Latitude」を使っている。仕事柄、タブブラウザなどをガチガチにカスタマイズして利用いるように思われがちだが、ブラウザはInternet Explorer 6にGoogleツールバーやYahoo!ツールバーをインストールして利用するなど、それほどビックリするような環境ではない。ネット業界からすれば、一般的な環境であるとすらいえる。検索もGoogleやYahoo! JAPANを併用するほか、ブログ検索に「テクノラティ」を活用している程度だ。

 ただ、最近はRSSリーダーの使い方が変わってきた。以前はRSSリーダーに画面が占有されるのがいやだったが、最近また使い始めた。「ネットレイティングスの発信した情報がニュースになり、ブログに引用されるケースが増えてきました。そうしたブログを閲覧するにはRSSリーダーが都合がいいんです」。大量にURLがヒットする検索エンジンよりもRSSリーダーの一覧性の高さに軍配を上げたというわけだ。

 萩原さんのRSSリーダー利用法は、「必ずしもアルファブロガーをウォッチするためのものではない」という。冒頭のYouTubeネタをネットレイティングスから発信したときに、愛用の「goo RSSリーダー」で、ネットレイティングスの社名や萩原さんの氏名、「視聴率」「マーケティングリサーチ」などのキーワードで検索して、ブログ界隈の反応をつぶさにウォッチするのだ。

 日付順で並び替えられないWeb検索では、情報発信した時以降の盛り上がりを観察する萩原さんのやり方は難しい。また、ブログ検索であってもサービスによっては検索対象の更新頻度が低いため、リアルタイムでの意見の収集が難しいケースもある。

 「先日も、私は『mixiがWeb 2.0的ではない』ということを述べましたが、ブログの世界では賛否両論でした。引用だけじゃなくて、ちゃんと意見を表明してくれました。いずれにせよ、刺激になりますよね」。こうした反応を集めるのに役立つのがRSSリーダーだった。「これこそがWeb 2.0、すなわち集合知だと思いますよ」

メールの利用法にこだわり

 萩原さんといえば、調査系メーリングリスト「インターネットサーベイML(サーベイML)」の主催者としても有名だ。「サーベイMLはもともと自分のために始めました。私自身にとって重要な調査の情報を得るために始めたのですが、いつのまにかインターネットの話題が増えてしまいました。早く世論調査にもどりたい(笑)」

 サーベイMLのフォルダは7〜8年前から保存してある。「メールにURLを記載する場合、リンク切れを恐れて、リンク先の内容がなるべくわかる形でメールに記載している」ため、非常に貴重な資料になっているという。

 MLに関わらず、メールの全般的な利用法に気配りしている。アポイントを求めるメールには、「OK」「了解」などと本文ではなくサブジェクトに必ず何か言葉を入れる。返信メールにも「Re:」の前に「よろしくおねがいします Re:〜」というようにひと言添える。サブジェクトでメールの内容がわかれば無駄な時間を使わなくともいいという配慮だ。

 1日に返事が必要なメールの数は20通ぐらいだ。その返事も「OK」とか「了解」だけの場合もある。「日本人はOK程度の内容でもかしこまったメールになりがちですよね。米国の方は気軽にメールを書いてきてくれます。国民性でしょうか、違いが面白いですね」

 メールの処理は朝イチに集中するというわけではない。1日の大半は外出している萩原さんは最近、シアトル系カフェでメールを書く場合が多い。「そうしたカフェにはカウンターに電源コンセントがありますよね。最近は無線LAN環境やPHSなどによりインターネット接続環境は整いつつあるが、電源が持ちません。電源コンセントがあると気合を入れたメールが書けます。カフェにとっては回転率下げてる悪い顧客ですけど(笑)」

いつも持ち歩く“7つ道具”

ファイル管理は時系列順

 「技とか仕事術とか、そういうレベルではないんです」と謙遜するが、萩原さんのファイル管理術はわかりやすい。「1つのフォルダに、どーんと時系列順にファイルを保存するだけです」。更新順に新しいものが常に上に表示されるやり方で、「最新のものから処理します。しばらくすると処理した仕事が溜まるので、そうしたらごそっとフォルダを分けます」というわけだ。とはいえちょっとした工夫もある。「基本的には時系列順に管理しますが、直近のファイルについては、すぐ使う可能性があるかもしれないので、処理フォルダに残しておきます」

 「むしろフォルダがきれいに分けられているほうが信じられません。どうやったらそんなにキレイに分けられるのでしょうか? Web 2.0じゃないですけど、旧来からのディレクトリ型管理には限界を感じます」。確かに、なまじフォルダに入れてしまったがために見つけられないファイルもある。思わぬフォルダから出てきたファイルを見て、「あー、こんなところに入れてたっけ」なんて思った経験も少なくない。

 PCのファイルだけでなく名刺の管理も単純だ。原則アイウエオ順に分類するが、もらった名刺はすぐには分類しないで別にとっておく。「最新の名刺は100枚ぐらいを新しい順に手元においておきます。最近会った人の名刺はすぐに必要になることもありますから。PCのファイルも名刺も心構えの問題。記憶がちゃんとしていればあまり困らないですよ」と笑った。

手帳は英国製の「Letts」。以前に海外赴任した時(1991年ごろ)から愛用している。横書きのスケジュールがお気に入りだ。
手帳、名刺入れ、ボールペンをセットで持ち歩く。背広の内ポケットに入れても膨らんだりしない薄さがポイント

SNSは「現実の問題」

 orkut、mixi、GREEといったSNSについては当初から活動していた。しかし、「だんだん活動しなくなっていきました」という。「大学や会社の友達だけでなく、ビジネスで名刺交換した人も招待して、あっという間に何十人というコミュニティができました。でも、この集合ってなんだろうと思ったんですね。あまり知らない人たちとSNSでなにをやるんだろうと悩みました」

 それまで入っていたSNSもことごとくアクセスしなくなってしまった。「そういう集団では何も書くことがなくなってしまったんです。すっかり反省しました」

 ところが半年ほど前、前職の知り合いから「萩原君、mixiに入ろうよ」と誘われ、思わず「うん、入る」と了承してしまった。だが、その時はmixiで萩原さんが家族ぐるみで付き合っている人たちが活動していたので思いのほか居心地が良かった。

 「娘と映画に行った」なんていう萩原さんの日常を無駄な説明を省いた形で掲載できた。「これは面白いなと思いました」。以後、半年間毎日、萩原さんは夫人とともに日記を書いた。この「興味深い実験」を通じてわかったのは「SNSはリアル(現実)の問題」だということ。「20代の連中は、すでに学校や会社の仲間とSNSをプラットフォームにつながっているようです。現在、mixiで苦労している世代がいるとすれば、もともとのコミュニケーションをmixiのようなプラットフォームに移行するのに苦労している世代ではないでしょうか」

仕事は中庸を意識

 「インターネット業界にいるとみんな詳しいので世代を気にしないが、世の中には普通のオジサンたちがたくさんいます。最近は経済誌がWeb 2.0を取り上げるようになりましたが、オジサンたちがWeb 2.0をわからないからなんでしょうね」と、業界の特殊性を指摘する。

 「センスがみんな似たり寄ったりなので、つい見誤る恐れがあるのではと危惧しています。業界から離れて、例えば家庭などの全く別の集団に触れる機会があれば感じられるんですけども……。だいたい話が通じる業界は居心地がいいのですが、一般人の気持ちがわかるかどうかが重要ではないでしょうか」

 「テレビ業界ができたころ、“放送人”という言葉ができました。テレビ業界独特な雰囲気は放送人としか言いようがなかったのです」という。いまインターネット業界にも同じことが言える。「先端を追いかけるのは重要ですが、成功しているYahoo!や楽天の影に似たようなサービスが死ぬほどあります。というより、死んでるサービスのほうが山ほどあります。あとから解釈するのは簡単なんですけどね」

 「わかっている人たちはどんどん自分で勉強していきます。ミドルより少し下を意識することが重要です。ネットレイティングスの視聴率調査でも全体を見て、中庸を意識した上で解釈するようにしています」。流行っているサイトでも「なんでこんなサイトが」と思うこともあるという。先端を追いすぎない――これが“萩原流”仕事術のエッセンスだ。

プロフィール
お名前 萩原雅之(はぎわら・まさし)
PC 会社:Dell Latitude、自宅:Thinkpad
携帯電話/PDA(データ通信カードを含む) SO902i
デジタルカメラ CASIO EXILIM
ブラウザ Internet Explorer 6
収集ツール(RSSリーダーなど) goo RSSリーダー
メールクライアント 会社アカウント:Outlook、プライベートアカウント:Becky!
インスタントメッセンジャー 使用していない
ファイル整理ツール(デスクトップ検索を含む) 使用していない
検索サイト Google、Yahoo!ブログ検索、テクノラティ
Webメール Yahoo!メール
ブログ 使用していない
SNS mixi(プライベートのみ)
ソーシャルブックマーキング 使用していない
影響を受けた人/本/Webサイト アクセス向上委員会の橋本大也さん
座右の銘 人生万事塞翁が馬
手帳/ノート Letts
ペン こだわりなし
その他小物(ICレコーダ、ポストイットなど) あまり使用しない

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