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» 2006年08月11日 15時36分 公開

平本メソッド アイデアを生み出すための26の方法:自分との対話でアイデアを生み出す

他人と話してアイデアを生み出すだけでなく、自分自身の中で対話することでも、創造性を発揮することができます。

[平本相武(構成:房野麻子),ITmedia]

16 自分の中の違うパートに対話させる

 椅子をAとB、2つ用意してください。対話するテーマは何でもいいのですが、今回は「カップ麺を売る」という例からご説明しましょう。

 「カップ麺が売れる」と思う自分と、「それは無理だ」という、ふたつの自分を設定してください。そして、Aの椅子に座って、なぜ売れるか、もう一方の自分を説得してほしいのです。

房野(A) 今、ラーメンが流行っている。特に池袋はラーメン店が多く、ジャンルもさまざま。どのジャンルもきちんとファンを獲得している。ジャンルごとに一番有名なお店の味を再現して、値段も安ければ手軽だから買ってもらえるはず。

平本 これが売れると思っている方の意見ですね。これだけだと発想が貧困なので、では、Aの椅子から立ち上がって、Bの椅子に座ってください。そして、売れない理由を言ってください。「とは言うけれど」という始まりで、どうぞ。

房野(B) とは言うけれど、「ラーメンは池袋」という評判は、もうすでに新鮮みがない。ラーメン屋さんも出尽くした感があり、最近は有名なラーメン店に飽きてきている人もいるはず。いまさら有名店のカップ麺を出しても、それほど売れるとは思えない。

平本 では、また売れる側に行って、意見を言ってください。「だけど……」

房野(A) だけど、全国的にはまだまだいけるはずだ。

平本 ここで、「全国的に」というアイデアが出てきていますね。池袋は東京だともうインパクトはないかもしれないけれど、地方だったら、まだいけるんじゃないか、と。


今回紹介する手法
1紙に書き出す
2図で表す
3絵を描く
4ジオグラフィ
5人に話す
6インプロシンキング
7たとえを使う
8イメージする
9タイトルをつける
10象徴するものを見出す
11魔法の杖
12誰か宛てにメールを書く
13問いかけを変える
14場所/位置/席を替わる(時間軸/空間軸を変える)
15誰かを想定して質疑応答をする/誰かになりきって答える
16自分の中の違うパートに対話させる
17ディズニーストラテジー
18体を動かす(姿勢、運動、発声、呼吸)
19歩く
20初めての場所に行く/違う世界の人に会う
21無心になる
22忘れる/いったん諦める
23無関係の本からヒントを得る
24結果の明瞭化
25終了のイメージ
26過去の成功体験を思い出す

 この対話の方法は、選択に迷ったときに使われる方法で、延々とやり続けているうちに、居心地のいい椅子が決まってきます。結局座ってしまった椅子が、「やっぱりダメだ」、という椅子だったら、「このアイデアはちょっと保留」ということ。「売れる」理由が挙がるなら、それはやったほうがいいのです。最後に居心地のいい椅子が、落ち着きどころです。

 ちなみに、メリットとデメリットを紙に書き出す方法もあります。これはこれでいいんですが、「良い理由が5つ、ダメな理由が7つ。じゃあ、ダメだな」ということになる場合がある。でも、口に出すと、口調で勢いや感情がわかりますね。そうすると、「これはやっぱり売れるかもしれない」と思える場合もある。逆に、「やっぱり無理だなあ、なぜかわからないけど、無理だ」という感じがするなど、字には出てこない、紙の上ではわからないものが、わかることがあります。

 なので、できれば声を出したり、実際に場所を移動しながらやったほうがいいです。声を出せない場合でも、立場を完全に分けてやってみてください。

17 ディズニーストラテジー

 これはウォルト・ディズニーがやっていたストラテジー(戦略)です。彼の家には3つの部屋があります。ドリーマー(夢想家)の部屋、クリティクス(批評家)の部屋、リアリスト(実際家)の部屋の3つです。

 ドリーマーの部屋に入ったら、それこそ無邪気でやんちゃな子供のように、好き勝手に夢を膨らませます。クリティクスの部屋では、徹底的に「そんなのできっこないよ。なぜなら……」と批判します。リアリストは、両方で合意が取れるところがないかを考えます。

 では、「新しい雑誌を創刊する」という設定で、ディズニーストラテジーをやってみましょう。

平本 椅子を3つ、用意します。Aがドリーマーで、Bがクリティクス、Cがリアリストです。じゃあ、Aの椅子の後ろに立ってください。自分が何百億円も持っていて、どんなことでも可能になるとしたら、どんな雑誌を作りますか? 金メッキの雑誌でも、ダイヤモンドをつけた雑誌もできる(笑)。無茶なことでもいいですが、やりたいことを言ってください。

房野(A) お金持ち向けに、不動産と絵画と時計とクルマなどで世界最高のものをそろえて、それを取材した雑誌を、お金持ちの人限定で作ります。

平本 価格は? いくらくらいで売りますか? 好きなだけ言ってみてください。

房野(A) いや、まあ、紙なので、1万円くらいかな……。

平本 扱うものの金額はいくらくらいのものですか?

房野(A) 何千万円クラスです。クルマだったら普通でしょ、という感じで。時計でも1000万円以上のものがゴロゴロという感じで。

平本 絵画だと安くないですか?

房野(A) 美術館クラスではなくて、ちょっとおしゃれで、ややマニアックなものを選びます。で、買ってもらえるようにする。


 こんな風に、ドリーマーは制約を受けずに、好きなことを言ってください。では、クリティクスにいきます。バンバン批判してください。「できっこないよ、そんなの」というように。

房野(B) まず、雑誌を作るお金がない。ツテがない。あと、そんなものを望むようなお金持ちが日本にいない。そういうことに詳しいライターがいない。紙の雑誌が1万円では売れないだろう。前例がない、お金持ちは、そんな雑誌なんか読む前に、デパートの外商などから聞いてすでに知っている。


 ドリーマーとクリティクスは、どちらも徹底的に変えるほうがいいです。考えが混じってしまうから、なんだか分からなくなるんですが、思いっきりイメージを膨らます方と、思いっきり批判する方とで完全に分けましょう。では、リアリストのところに行って、両方の共有点、「この辺なら可能かな」と思う部分を言ってください。

房野(C) 高級時計雑誌はけっこう、地道に売れている。お金持ち向けのもっとラグジュアリー感のある時計を扱う雑誌だったら、季刊くらいだったら出せるのではないか。お金持ち向けの雑誌はじわじわ増えている、という情報もある。


 では、またドリーマーへ。そんなしみったれた話ではなく、もっと積極的に!

房野(A) でも、一回、大きなことをやってみないと、前例だってできない。もしかしたら、うまくいくかもしれない!


 でも、そうはいうけれど……(ドリーマーからクリティクスへ場所を移動します)

房野(B) なかなか、そううまくいくものではない。雑誌は廃刊になる方が多いのだから、今の会社の状態では危険だ。


 でも、そうは言うけれど夢を持って……。(またドリーマーのイスへ移動します)

房野(A) 思い切りやらないと前には進まないし、お金持ち向け雑誌が増えてきている今、ここでやらずにいつやるのだ!


 では、リアリストの立場で、両方に。

房野(C) じゃあ、とりあえず、パイロット版を作ってみてよ。

平本 ディズニーストラテジーをやってみて、どうですか? 

房野 言いたいことは、それぞれの立場で意外にあるものだなあ、という感じです。


 大事なのは順番ではなくて、あちこち行きながら徹底して話をすることです。ウォルト・ディズニーも我々も同じように夢があるのですが、何が違うかというと、夢も批判もごちゃごちゃになっている点です。ディズニーは、夢を言うときは、ものすごい夢を言いますし、批判するときは、ひどくシビアに批判する。そして、両方の共有点がないかと探ると、夢がむちゃくちゃなようで、案外、実現するんじゃないか、とか、ここで言っている批判は認識しておかないとやっぱり無理じゃないか、ということなどがわかるのです。

 ディズニーのように、実際に部屋を変えてもいいのですが、我々日本人には難しいかもしれません。会社だったら、ブースを変えてもいいでしょう。でも、くれぐれも自分が普段使っているブースをクリティクスにしないでくださいね。いつも嫌な気分になりますから。

 椅子で立ち位置を変えてもいいし、もっと簡単に、紙に3つの場所を書いて、指で指しながらそれぞれの立場で話してみるのもいいでしょう。要は、立場をはっきり分けて話すことが大事です。

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ピークパフォーマンス 代表取締役

平本相武(ひらもと あきお)

 1965年神戸生まれ。東京大学大学院教育学研究科修士課程修了(専門は臨床心理)。アドラースクール・オブ・プロフェッショナルサイコロジー(シカゴ/米国)カウンセリング心理学修士課程修了。人の中に眠っている潜在能力を短時間で最大限に引き出す独自の方法論を平本メソッドとして体系化。人生を大きく変えるインパクトを持つとして、アスリート、アーチスト、エグゼクティブ、ビジネスパーソン、学生など幅広い層から圧倒的な支持を集めている。最新著書は「成功するのに目標はいらない!」。コミュニケーションやピークパフォーマンスに関するセミナーはこちらから。


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