百科事典の情報をツリー状に表示「知のコンシェルジェ」

日立システムアンドサービスは百科事典などの情報をツリー状に表示できるWebアプリケーション「知のコンシェルジェ」を開発した。これを利用したオンラインサービス「ネットで百科 for ブロードバンド」を11月に開始する。

» 2006年10月30日 22時34分 公開
[吉田有子,ITmedia]

 日立システムアンドサービスは、百科事典などの情報をツリー状に表示できるJavaによるWebアプリケーション「知のコンシェルジェ」を開発した。これを利用したオンラインサービス「ネットで百科 for ブロードバンド」を11月に開始し、2007年3月までは試行期間として無償で利用できる。対応するOSはWindows 2000/XP、Mac OS X 10.4以降。ブラウザはInternet Explorer 6.0以降、Safari 2.0以降をサポートする。

「知のコンシェルジェ」の構成図。辞書などのデジタルコンテンツを、百科事典の項目名と関連項目名のように関連付けした「体系化された知識」と体系化された知識とコンテンツの対応を定義した「コンテンツプロファイル」で整理し、見つけやすくする。コンテンツプロファイルとは、例えば「富士山」という知識に対して、百科事典の項目「富士山」と地図の地名「富士山」が存在することを示す情報だ

 従来のPCから利用する事典・辞書の場合、見出しや説明文をキーワード検索することで目的の内容にたどり着く。しかし、適切なキーワードを考え出さなければ検索できなかったり、キーワードによってはヒット件数が多すぎたりなどのデメリットもあった。

 一方「知のコンシェルジェ」は、専門家による人手で体系化した情報をツリー状に表示。各項目をクリックするとさらに関連項目のツリーが広がり、関連する項目全体を見渡すことができる。

 例えば「富士五湖」の関連情報を求めると、「富士箱根伊豆国立公園」「富士山」「山中湖」などの情報を表示する。つづいて「富士箱根伊豆国立公園」をクリックすると、周りに「箱根」「伊豆半島」「大島」などを、「富士山」をクリックすると「日本一」「成層火山」「関東ローム」などの関連情報を表示する仕組みだ。ホテルで食事やレジャーのアドバイスをしてくれる「コンシェルジェ」のように、対話型で情報を探すことができるという。

情報をツリー状に表示できる

 「知のコンシェルジェ」は百科事典として「世界大百科事典」「マイペディア」、日本と世界の地図をコンテンツとして標準装備しているほか、ユーザーが独自のコンテンツを追加することもできる。

一般的な百科事典のように、キーワードの解説を表示することもできる
東京大学大学院情報学環の石田英敬教授

 東京大学情報学環・学際情報学府は「知のコンシェルジェ」に専門的なコンテンツを追加し、2007年度から講義に利用する。東京大学大学院情報学環の石田英敬教授は「現在の学生は書籍やインターネットを通じて多くの情報に触れているが、情報が体系的になっていない」と問題点を指摘する。「Googleによる検索結果のような、情報が組織化されていない環境に対して、専門家が体系化した情報を提供できるのが大学の存在意義」とし、大学の講義における「知のコンシェルジェ」の具体的な利用方法を解説した。

 学生は教官のWebサイトから授業で利用した講義スライドをダウンロードして学習するが、講義スライドの特定の単語は「知のコンシェルジェ」にリンクしている。逆に「知のコンシェルジェ」の項目から教科書の電子版にもリンクしている。専門分野の書籍などから「知のコンシェルジェ」に情報を入力し、ツリー状に表示するための関連付けは人手で行ったという。


東京大学学際情報学府で利用する学術用語をツリー状に表示した

 日立システムアンドサービスは、2007年4月から「知のコンシェルジェ」の販売を予定しており、研究・教育、コンテンツ関連、一般企業でのナレッジマネージメント用途を想定している。

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