未来の自分へメッセージ──孫子の兵法に学ぶ「やる気」メソッド【解決編】シゴトハック研究所

「やる気」をうまく引き出す方法を持っていますか? 「人を致して人に致されず」という孫子の兵法をヒントに、Webサービスを活用して、やる気を引き出す方法を伝授します。

» 2006年11月10日 13時18分 公開
[大橋悦夫,ITmedia]

今回の課題:慢性的にやる気が出ない状況を打破するには

 コツ:自分を出し抜く


 【問題編】では、ミスにつながりかねない「慣れ」から来るやる気が出ない問題を取り上げました。今回はこの「やる気」をうまく引き出す方法について考えてみます。

 そもそも「やる気」というのは、なかなか自分の思い通りにならないものです。気づいたら1つの仕事に夢中になっていたり、上司や同僚のちょっとした一言がきっかけとなって俄然やる気が湧いてきたりします。

 つまり、自分で「さぁ、やる気を出そう」と思って意図的に引き出したり「やる気を出せ」と言われてすぐに出せたりするものではないのです。

 CMプランナーの多田琢氏は雑誌「ゲーテ」のインタビューの中で仕事について、次のように語っています。

 うまくいけば面白いんだけど、下手したら大失敗になるかもしれないっていうときに、ものすごく注意深く作業すると、それは必ず面白いものになる。だから楽しいじゃないですか、仕事って。うまくいった! って喜ぶことは、うまくいかないかもしれなかったこと、だから。


 「やる気」が出ているときの状況を考えてみると、そこには「面白さ」「楽しさ」「喜び」というキーワードがあることに気づきます。さらには「うまくいかないかもしれない」という不安をバネに「予想外」というキーワードが浮かび上がってきます。

孫子の兵法「人を致して人に致されず」に学ぶ

 孫子の兵法に「人を致して人に致されず」という言葉があります。これは、人を思い通りにさせて、同時に思い通りにならないようにさせる、といった意味合いです。まさに「予想外」です。

 以前の記事「仕事が思うようにはかどらない日があって困る」の中で以下のように書きました。

 “飽き”というのは「次はどうせこうなるんだろう」という予想がついてしまうことから漂い始めるものですから、「あれ、次はこうじゃないの?」という予想を裏切るような、ある意味で自分を出し抜くような“変化球”が有効です。


 こういった自分にとって「予想外」となる要素を仕込んでおくことで、「あれ?」という感覚が生まれます。自分でやっていることにも関わらず、まるで別の人からちょっとしたアドバイスをもらった時のように、それまで眠っていた力が目を覚まし、気づいたらやる気モードにシフトしている、という状況を作り出すことができるのです。

 このように擬似的に人から何かを言われた時のような感覚を呼び起こすことで、「自分を致して自分に致されず」が実現するわけです。

未来の自分にメッセージを託す

 では、具体的にどうすればこれを実践できるでしょうか。

 例えば、ある1つの仕事を終えて、その仕事を振り返ったとき、「あそこはもっとこうすれば良かった」とか「事前にこういう準備が必要だった」といった課題や教訓が浮かび上がることがあります。せっかく引き出すことができた課題や教訓ですので、次回に活かしたいものです。

 でも、自分の中だけに留めておくと、つい「分かっているつもり」になり、うまく活用できないことが多いのではないでしょうか。

 そこで、忘れた頃に、あるいは同じような仕事をすると思われる時期に、その教訓が目の前に現れるようにしてみます。例えば、Remember The Milkcheck*padのような、メールでリマインダー(通知)を受け取れるサービスを使って、「未来の自分」に向かって課題や教訓を申し送るのです。

 例えば、

  • この間痛い目にあった○○の仕事だけど、教訓は活かせそう?
  • そろそろ締め切りまで1週間だけど、○○の準備はできてる?

 という、自分で今後心がけるべきだと思ったことをメッセージに託して、タスクとして登録しておきます。

 自分では分かっているつもりだったことでも、改めてメールやメッセンジャー(Remember The Milkの場合)を通して目の前に現れることによって、人から言われたときのような感覚が生まれ、「あ、そうだった。やらなくちゃ」というやる気を引き出すトリガーになるでしょう。

 こういったリマインダー・メッセージは、忘れた頃に届く方がより高い効果が期待できます。取り立てて期限のないメッセージについては、いつ届くかが自分でも分からないようなリマインダーの方が望ましいといえます。

 このような場合には、タイムカプセルというサイトが提供しているサービスが便利です。未来の自分にメッセージを託し、あとでメールとして受け取ることができるというものですが、そのメッセージが届く日をきっちりではなく、ざっくりと指定できるところに特徴があります。

 指定できるのは、1年後、近い将来、遠い将来、1週間後、1カ月後、1時間後、適当に、の7種類で、日時を細かく指定できない点がミソです。サイトには「到着時間には誤差が生じます」と書かれていますが、だからこそ「いつ届くか分からない」という、今回の用途にマッチした効果が期待できるわけです。

 誰よりも自分のことを分かっている自分からのメッセージには、昔書いたブログや日記を読み返したときに得られるような、自分を奮い立たせるパワーがあります。

 リマインダーは、やるべきことを思い出させてくれるだけでなく、忘れかけていた過去の自分を「やる気」とともに呼び戻してくれるわけです。

筆者:大橋悦夫

仕事を楽しくする研究日誌「シゴタノ!」管理人。日々の仕事を楽しくするためのヒントやアイデアを毎日紹介するほか「言葉にこだわるエンジニア」をモットーに、Webサイト構築・運営、システム企画・開発、各種執筆・セミナーなど幅広く活動中。近著に『「手帳ブログ」のススメ』(翔泳社)がある。


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