Wikiを活用する秘訣はどのようなものなのか。5万人近くがWikiを開設して活用している「livedoorウィキ」の担当者に、活用法を聞いてきました。
Wikiを仕事にもっと活かすには?
コツ:「透明度」を高める
【問題編】で決定した通り、ライブドアを訪ね、livedoorウィキご担当者にお話をうかがって来ました。内容は以下の通りです。
取材日(2006年12月末)現在のlivedoorウィキの開設数とアクセス状況は次のような数字でした。
状況 | 数値 |
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Wikiの開設数(=IDの数) | 4万7000 |
総ページ数 | 58万ページ |
月間ページビュー | 1100万 |
月間ページビューの数字が誤っておりました。お詫びし、訂正させていただきます |
livedoorウィキは、1つのIDにつき1つのWikiしか作ることができないため、IDの数がそのままWikiの開設数になります。4万7000個のWikiに58万ページですから、1つのWikiに含まれるページ数は平均12ページとなります。
それがどれぐらいの頻度で更新されているかというと、
1日あたりに新規追加されるページ数 | 約1000ページ |
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1日あたりに更新されるページ数 | 約1200ページ |
新たにページを追加するよりも、すでにあるページを編集(更新)する方が多い──という点でブログとは異なるWikiならではの使われ方が浮かび上がります。
livedoorウィキには、ユーザー単位で閲覧および編集を制限する機能が付いており、特定のユーザー同士で情報をシェアするという使い方が簡単にできるようになっています。そして、閲覧制限をかけているWikiは徐々に増えているそうです。
例えば、過去3カ月間に更新されたWikiのうちの40%は閲覧制限がかかったWikiで、過去1カ月に限定すると43%、過去1週間になると45%、といった具合に増加傾向にあるようです。これは、「個人用のメモ帳として使われているのではないか」とのことでした。
そもそも、ほかのポータルサイトでは提供していないWikiのサービスをなぜ始めたのかは気になるところです。livedoorウィキ担当の眞子裕介氏によると「他がやっていなかったから始めた」というシンプルな理由でした。
ライブドア社内では、引き継ぎ資料や業務マニュアルなどの用途にWikiが「普通に」使われているそうです。今後は、メーリングリストやグループウェアなどと同様に、純粋にツールとしてWikiが活用されてもいいのではないか、というスタンスでした。それゆえ、livedoorウィキについても、特定の使い方を押しつけることはせず、自由に使えるように、ツールとしての“透明度”を重視しているそうです。
電話やメールはもはやツールとしては日常的なものとなっており、「あ、いま受話器を握っている!」「メールが届いた!」などといちいち驚くことはありません。しかしWikiの場合は「Wikiを使っている」という感覚に馴染みが薄いために、ツールとしての透明度がまだまだ低い、というわけです。
いくつかのユーザー事例をご紹介いただきましたが、「みんなで寄ってたかって編集できる」というメリットを活かしているWikiと、管理人のみが編集権限を持ち、個人サイト的に運営されているWikiの大きく2つに分かれるようです。
いずれの方針を選ぶかは、Wikiの内容によるところが大きいようです。例えば、「辞書にない英語」については、本当に辞書に載っていない言葉なのかどうかの検証作業が一般の人には難しく、たくさんの辞書を持っている管理人(本業は翻訳家)が判断せざるを得ない、という事情から管理人のみ編集という体制になっているとか。
「ライブドア社内ではWikiが普通に使われている」と書きましたが、何か活用テクニックはないかと聞いたところ、2つ教えていただきました。
これは、Wikiの内容をPowerPointのように、クリックすることで次のスライドに切り替わるようなプレゼンテーション形式で次々と表示していく機能です。社内ミーティングなどで、日頃からWikiに収集している業界情報や技術情報などを発表する場合に、改めて資料を作る手間が省けるため、有効な方法だといえるでしょう。
外部の関係者との資料のやり取りが継続的に発生する業務がある場合は、閲覧制限をかけたWikiを1つ用意し、ここでシェアするようにします。
実は筆者自身も、今月末刊行予定の書籍の執筆にWikiを活用していました。共著者、DTP担当者、編集者など関係者の間で原稿をWiki上でシェアしていたのです。メールにファイル添付の形で送るよりもスマートにやり取りができました。
現状は、上記に挙げたようなゲームの攻略法や雑学系など、どちらかというとエンタメ系に近いWikiが多いのですが、今後はもっと仕事に活用してもらえるような方向を目指しているそうです。とはいえ、前述の通り、使い方を押しつけることはしない方針のため、あくまでもツールの提供者としてのスタンスを崩さない範囲で、今後も運営を続けていくとのことでした。
「ツールとしての透明度」という言葉が出てきましたが、ツールだけでなく、仕事を効率よく行うための方法(あるいはハック)もまた、透明であるべきだと、今回の取材を通して改めて感じました。
シゴトハック研究所では、引き続きWikiを仕事に活用するための「透明度の高いハック」を追究していきます。
仕事を楽しくする研究日誌「シゴタノ!」管理人。日々の仕事を楽しくするためのヒントやアイデアを毎日紹介するほか「言葉にこだわるエンジニア」をモットーに、Webサイト構築・運営、システム企画・開発、各種執筆・セミナーなど幅広く活動中。近著に『「手帳ブログ」のススメ』(翔泳社)がある。
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