第1回 ストレスとは何か? を知るリラクゼーションの7種の技法(2/2 ページ)

» 2007年04月06日 17時44分 公開
[平本相武(構成:房野麻子),ITmedia]
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斎藤 リラックスしっぱなしという状態は、それはそれで困るのでしょうか? 

平本 リラックスしっぱなしの人はエネルギーが溜まっているはずなので、使い道があるはずですね。3年寝太郎みたいなものですね。3年間寝たら、力が出てきた、みたいになるはずです。

斎藤 何か事を起こすときには緊張した方がいい、ということはないんですか?

平本 多くの人は、集中すればするほど、リラックスできなくなります。そして、リラックスすればするほど、ボーッとしてくるわけですね。ほとんどの人は、集中とリラックスは反比例していて、集中するとリラックスできず、リラックスすると集中力欠如でぼーっとする。でも理想的なのは、リラックスしながら集中している状態なんです。意識がしっかりしていて、でも身体は休んでいる状態が、実は最もパフォーマンスが高い。例えば、アスリートがそうです。ギンギンに力が入って集中していてもダメだし、リラックスしすぎて、「あ、試合だった」なんてことになるのも困りものです。


自分の身体と心の状態を知る

 大事なのは、オンとオフをコントロールすること。適正反応を引き起こせることが大事です。「今から仕事です」となったらオン、「じゃあ、休み」となったらオフになれる。このオン/オフがすごく大事です。オンの状態にする方法はまた別の機会に回して、今回はオフの状態、リラックスに関してお話します。

 具体的なリラクゼーションの技法を紹介する前に、まず、現在の自分の心と身体の状態を把握しましょう。「心/身体のマッピング」のグラフを見てください。縦軸は心の状態、横軸は身体の状態です。

 心に関して、特に悩みもなく、心配事もなく、仕事で気になることもなく、すごくいい状態をプラス10、いろいろ考えて悩んでいることがあって困っているという状態をマイナス10とします。次に身体に関して。すごく調子がいい状態をプラス10、体調が悪くて辛いという状態をマイナス10とします。これは毎日変わるのですが、今の時点でそれぞれ何点になるでしょうか。グラフに点を打ってみてください。

心/体のマッピング

平本 まず、自分の心と身体の状態、事実を知りましょう。どのくらいになりましたか?

斎藤 心はプラス5くらい、身体はプラス2くらいです。

房野 身体は0くらい。悩み事ではないですが、締め切りで心配なものがあるので、心はマイナス1くらい。

平本 では、どうしてその位置になるのか、理由を書き出してみてください。本来は書き出してもらいますが、言ってもらえますか?

斎藤 それが微妙なんです。怪我をしていたり病気だったりということはないので、1でも2でも……10かもしれません。

平本 特に身体に問題はないと。

斎藤 怪我をしていたり、辛かったりすればマイナスだと思いますが、かといって『今日はものすごく調子がいいな』ということでもなくて……。運動をやっているときは、身体が軽いと感じることもあるんですが、最近はあまりそういうのもなく、普通、無事、という感じです。

平本 心がプラス5ですね。

斎藤 心の方もまた微妙で、すごく辛いことがあるときは確かにマイナスですが、ないときはたいていプラスになります。

平本 じゃあ、特に心配事もないのでプラスだと。

斎藤 はい。辛くなるほどの心配事はないです。


 以上のようなことを書いてみてください。これがステップ1で、まず事実を知ります。自分にウソをついて、「いやいや、大丈夫、大丈夫」なんてやりだすと、泥沼にはまります。まず事実を知りましょう。

現状を受け入れる

 次にステップ2、現状を受け入れましょう。夜通しPCに向かって作業するような仕事をされている人は、身体も心もかなりのマイナス状態であるにもかかわらず、「いける、いける」「大丈夫、大丈夫」と結果を受け流してしまうことがあるのです。これはマズイです。自分の状態を認めてください。もっと悪いのは、「心も身体もプラス10だよ」というもの。これが最も怪しいです。両方ともプラス10なんてことは、まずあり得ません。

 心も身体も、どちらもプラス10だとか、どちらもマイナス10だと思い込んでいる人は危険信号です。「10/10で絶好調ですよ〜」、とかいいながら1週間も徹夜続きだとか、3カ月間、土日返上で仕事をしているけれど、「両方10/10なんですよ」などという人は、正しく自己評価できない状態かもしれません。

マップの点数を1つ上げるためにできること

 3つめのステップで、マップの位置が1つ上がっている状態はどういう状態かを想像します。このステップでは行動はしません。1つ上がると、どんな状態になるかをイメージするだけです。

平本 点の位置が1つ上がっている状態は、どんな状態かを考えてください。心の状態を1つ上げてもいいし、身体の状態を1つ上げてもいいです。どっちを上げたいですか?

房野 私はとりあえず心を0にもっていきたいです。

斎藤 僕も心をもう1つ上げたいです。

平本 1つ上がっていると、どんなふうになっていると思いますか? または、どういう風になっていると、1つ上がりますか? 例えば、身体だと肩コリが楽になったとか、腰が辛くないとか……。

房野 原稿執筆が終わっていれば……。

斎藤 やらなきゃいけないリストがクリアになっていれば……。

平本 それで1つ上がりますか? もっと上がっちゃいますか?

斎藤 1つ上がります。

房野 私はだいぶ上がります。プラス5くらいになるかも。

平本 そんなに上がりますか。1だけ上がるとしたら、どういう状態ですか?

房野 原稿のアウトラインが決まれば……。

平本 アウトラインができれば、0になりますか?

房野 はい。


1つ上がるための具体的な行動を取る

 ステップ3で状態を1つ上げるためにどうすればいいかをイメージしたら、次のステップ4で具体的な行動をとります。イメージした状態になるために、今日、自分なりに何ができるかを考えましょう。

平本 では、アウトラインを作るために、リストをクリアにするために、今日、何ができますか? 全部じゃなくてもいいですよ。書き出すだけとか……。

房野 テープ起こししたものを、プリントアウトします。

斎藤 さぼらずコツコツやれば……。

平本 具体的にどうします? もう一度見直すとか、順番を入れ替えるとか、日付をつけるとか……

斎藤 一番上のリストに取り掛かる。

平本 いいですね。このように、ステップ1で事実を知って、ステップ2で現状を受け入れて、ステップ3で1つ上がっている状態を想像して、最後のステップ4で具体的な行動を実際に行います。そうすると、心と身体の状態が上がりますね。


 「心/身体のマッピング」は、できれば毎日付けてみてください。心も身体も、ずっとマイナスの位置が続いているようだと、ちょっと危険信号です。これから紹介するリラクゼーションをやってみてください。心と身体の2つの面からリラックスできます。

ところで、マッピングは毎日変わります。今日、心が−5だからもうだめだ、なんて思わずやってみてください。

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ピークパフォーマンス 代表取締役

平本相武(ひらもと あきお)

 1965年神戸生まれ。東京大学大学院教育学研究科修士課程修了(専門は臨床心理)。アドラースクール・オブ・プロフェッショナルサイコロジー(シカゴ/米国)カウンセリング心理学修士課程修了。人の中に眠っている潜在能力を短時間で最大限に引き出す独自の方法論を平本メソッドとして体系化。人生を大きく変えるインパクトを持つとして、アスリート、アーチスト、エグゼクティブ、ビジネスパーソン、学生など幅広い層から圧倒的な支持を集めている。最新著書は「成功するのに目標はいらない!」。コミュニケーションやピークパフォーマンスに関するセミナーはこちらから。


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