「ビジネスバイオリズム」と「小銭ひろい」の関係樋口健夫の「笑うアイデア、動かす発想」

筆者が現役のころはバブルの頃だからか、外回りに出かけると毎週、いくらか小銭をひろったものだ。ほとんどが1円玉だったが、この小銭ひろいが、ひょっとするとビジネスのバイオリズムに関係しているのではないかと考えた。

» 2007年08月23日 21時09分 公開
[樋口健夫,ITmedia]

 筆者は現役時代、ずっと営業を担当していた。担当者から部長になるまで一貫して営業畑を歩んだ結果、営業は足だということが分かった。だから部長になっても、外回りを止めなかったし、むしろ部長として定期的に挨拶にまわる重要顧客は増えていった。厳しいお客ほど、本能的に訪問回数を重ねることにしていた。単独だったり、部下と同行したり、1日数社はまわっていた。

 バブルの頃だから今とは違うのかもしれないが、筆者は気が付いた。毎週、いくらか小銭をひろうのだ。ほとんどが1円玉だったが、京都の商人だった両親から「お金が落ちているのを見過ごしてはいけない」と厳しくしつけられてきたのだ。

 ふっと気が付くと足元に1円玉が落ちている。意識して探すわけではないし、意識しすぎると返って見つからないとも思っている。もう1つ気付いたのは、同僚や部下と一緒でも、ひろうのはほとんど筆者だった。小銭ひろいのプロなんていうと恥ずかしいが、とにかくよくひろった。「どうして部長は、そんなにお金をひろうことができるのですかね」と部下が言う。「さあ、どうしてだか。小さい時に虫取りや魚取りで遊んでいたからかな」なんて答えていた。

 1円玉を見付けられるのは、ひょっとするとビジネスのバイオリズムに関係しているのではないか──長年、営業をしているとそう感じ始めた。1円玉を連続でひろう時は、妙に仕事が忙しく、また注文も押し寄せている時だったからだ。気持ちが高揚し、感覚も研ぎ澄まされていたのだろうが、きっとこれにはツキのエンジェルが操作しているに違いないと考えた。

 そんなわけで、営業に行き詰っている新人や部下に筆者は声をかけることにしている。「君ね、頼みがあるんだが」「何でしょう」「君も外回りしているだろう」「はい」「その時に1円玉でも10円でもひろったら『ひろいました』と報告してくれないか」

 営業に配属されたばかりの部下は「何でですか」と怪訝そう。いきなりそんなことを言われたら当然だろう。だが筆者は続ける。「いやぁ、お金をひろうことが、ひょっとしたらビジネスの好不調に関係しているのではと思っているからさ」「そんなものですかねぇ」「君が損をするわけでもないし、協力してくれよ」「分かりました。ひろったらご報告しますね」

 それから約3週間後──。「お金をひろいました!」とその部下。彼の手には初めての注文書が握られていた。「大きな声で言うなよな。それより『注文を取りました』を先に言ってくれ。よくやった」。筆者の仮説は、筆者の個人的確信に変わったのだ。


 ちなみに筆者は10万円と旅行小切手60万円の入った財布をひろったこともある。もちろん、警察に届けた。“金塊”もひろったことがある。土砂降りの雨の朝、神奈川の奥地の駅で乗り換え、歩いている時に“金塊”を見つけたのだ。正体は金歯である。4本の歯が連なる大きな差し歯だった。

 話を聞かせた部下からは「何ですか。どうしてそんなものが落ちているのですか」と聞かれたものだ。「そんなの私だって知らないよ。酔っぱらって、ひっくり返って、差し歯が外れてしまったのではないか」「それでどうしました」「もちろん交番に届けたよ」

 お巡りさんからは「所有権を放棄しますか」と聞かれたから、「これ金でしょう。放棄しません」と笑って回答した。その6カ月後、晴れて金塊は筆者のところに来たのだ。それで、どうしたかって? いつか“再利用”しようと思って大事に保管してあるよ。

今回の教訓

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著者紹介 樋口健夫(ひぐち・たけお)

1946年京都生まれ。大阪外大英語卒、三井物産入社。ナイジェリア(ヨルバ族名誉酋長に就任)、サウジアラビア、ベトナム駐在を経て、ネパール王国・カトマンドゥ事務所長を務め、2004年8月に三井物産を定年退職。在職中にアイデアマラソン発想法を考案。現在ノート数338冊、発想数26万3000個。現在、アイデアマラソン研究所長、大阪工業大学、筑波大学、電気通信大学、三重大学にて非常勤講師を務める。企業人材研修、全国小学校にネット利用のアイデアマラソンを提案中。著書に「金のアイデアを生む方法」(成美堂文庫)、「できる人のノート術」(PHP文庫)、「マラソンシステム」(日経BP社)、「稼ぐ人になるアイデアマラソン仕事術」(日科技連出版社)など。アイデアマラソンは、英語、タイ語、中国語、ヒンディ語、韓国語にて出版。「アイデアマラソン・スターター・キットfor airpen」といったグッズにも結実している。アイデアマラソンの公式サイトはこちら

「感動する科学体験100〜世界の不思議を楽しもう」について

 この原書「100 Things to Do Before You Die」(邦題:死ぬまでにする100のこと)は英国でのベストセラーです。筆者は英ヒースロー空港で入手しました。帰路の機内で読み、あまりの面白さに帰国するや英国の出版社に連絡を取ったものです。この本を日本で出版させて欲しい──。そして、技術評論社での出版が決まったのです。

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