ビジョン型と価値観型 タイプ別アクションプラン──ビジョン型・中編成功するのに目標はいらない

「ビジョン型」と「価値観型」では考え方からアクションまで異なるものになります。今回はビジョン型の人にフォーカスを当てて、アクションプランを考える中編をお届けします。

» 2007年10月24日 10時12分 公開
[平本相武(構成:房野麻子),ITmedia]

 成功するには目標は必須ではない──なぜなら、人にはビジョン型と価値感型があるからです。以前紹介した「ビジョン型、価値観型」の例を前提に、ではそれぞれのタイプの人は、どんなアクションプランを立てたらいいのかを紹介します。

 前回に引き続き、ビジョン型の人のアクションプランを作っていきましょう。

今から3年後のありたい姿を想像する

 このように、自分が望むような20年後になるために、これから1年後、3年後、5年後くらいには、どうなっていればいいかを次に想像します。自分にとっていい区切りのところを選んで想像してみてください。実は、5年後、10年後、というのもあるのですが、今回は省略させていただいて、今回は3年後ということで想像してみてください。

平本 そんな20年後になるために、これから3年後はどうなっていればいいですか?

T 米国に進出してすごいサービスを作るなら、まず資金が必要で、そのための知名度も必要なので、ファーストステップとしては上場して、資金を調達して、事業を拡大します。

平本 素晴らしいですね!


 ここでワンポイント。ビジョン型の人が目標設定するときのコツをお教えしましょう。まず、“最高の目標”を1つ決めてください。「これ以上はありえない」「こんな風になれば最高だよ」という最高の目標です。

 そして次に“余裕の目標”を決めてください。「さすがに今のまま行けばこれはOKだろう」という余裕の目標です。最後に“今回の目標”を決めます。今回の目標というのは、最高の目標と余裕の目標の間にある目標です。

 「これ以上はありえないよ」と思った最高の目標以上の目標というのは、実現しないんです。なぜなら、自分があり得ないと思っているからです。「3年後にビル・ゲイツを超える」なんて言いませんよね。それはあり得ないことで、自分の中でもあり得ないと思っているからです。でも「3年後に東証一部に上場」はありえるかもしれないという人は、必ずそうなるかどうかは分からないし、可能性は0.1%かもしれないけれど、射程の範囲には入っているのです。

 それを「いや、さすがに一部は無理でしょう」と思ってしまうと無理です。余裕の目標は、「今のウチの会社のペースでいくと、3年後にはそれくらいの規模になっていないと問題外だよね」というもの。そして、その2つの間にある目標が実現します。“今回の目標”には、そういうものを設定してほしいんです。

 下の線が余裕の目標です。そして上が最高の目標です。この間を外れる目標は実現しません。

 例えばスポーツでいうと、県大会優勝を最高の目標にした人は、県大会で優勝してもインターハイにいったら勝てないのです。なぜなら県大会を目標にしているから。でも、日本一を最高の目標にすると、インターハイ優勝はあり得ますよね。余裕の目標で「さすがに県大会でベスト16には行ける」と思ったら、ベスト16には入る。けれど、余裕の目標を「1勝はできるでしょう」とすると、1勝で終わる可能性もあるんです。ところが「余裕で県大会優勝は間違いないでしょう。あとは日本一」という人は、グラフの上の線が上がります。今回の目標はこの上と下の間に設定されます。ちょうど中間である必要はありません。今回は安全に余裕に近い方にしようとか、上を目指そうとかでいいのです。

平本 では、「3年後、もうここまでいったらすごいよね」という最高の目標は何にしますか?

T 市場から資金を50億円くらい調達したいですね。なので、どこかに上場したいですね。

平本 どこに上場しますか?

T 東証一部だったら最高ですね。

平本 頼もしいですね。では、「これは余裕でしょう」という目標は?

T 少なくとも地方市場、アンビシャスやヘラクレスくらいへの上場は大丈夫だと思います。

平本 地方市場は今のペースでいけば順当だと。

T 行こうと思えば問題ないですね。

平本 分かりました。では、東証一部上場以上、地方市場以下にはなりません。こう設定した以上、ニューヨーク市場は無理です。余裕で地方の市場にはいけると思えるようだったら、たぶん、できます。では、この間で今回の目標をどうしますか?

T やっぱり、ITやハイテク関連企業の多いジャスダックへの上場ですね。

平本 では今回の目標は「ジャスダック上場」ということに決まりました。


大目標が達成できた場面をありありと思い描く

 このように、20年後のプライベートもビジネスも含めたビジョンから逆算して、まずは当面、「3年後のジャスダック上場」が目標になりました。この目標に落とし込む際に大事なのは、最高の目標、余裕の目標、今回の目標、の順に決めること。Tさんの場合は、今回の目標がジャスダック上場に決まりました。

 図を見ていただくと分かると思いますが、ビジョン型の人は、20年後の「ビジョン(未来の夢)」から逆算して、まず3年後のジャスダック上場という「大目標」を決めます。さらにここから逆算して小目標を決めていきます。

平本 今回は「ジャスダック上場」ということで、未来の夢から大目標が設定されました。では、その目標が実現された場面をありありと思い描いてください。どんなシーンが浮かびますか? 聞いた話だと、上場のときに鐘を鳴らすらしいですね。

T 上場セレモニーはうれしいですね。報道関係者なんかがいる前で鐘を鳴らして、「本当にオレ達はやったんだ」と、自分達を褒めたい気分、それまでの苦労も吹き飛んでしまうようです。もちろん、これは通過点に過ぎないけれど、これを目指してやってきて、達成できたんだと、とても誇らしい気持ちです。それと同時に、これからのことを考えて身の引き締まる思いも感じています。

平本 会社ではどうですか?

T お祝いの電話とか、花がいっぱい贈られてきて、仕事が手に付かない(笑)。あと、社員に向かって、「おめでとう、ついに上場できた」と報告して、みんなで喜んでいますね。「次は日本から飛び出して、世界に羽ばたくんだ」ということも言っています。でも、もしかして、感極まってうまく挨拶できないかもしれない……。

平本 いいですよ。そんな風に、ありありと思い描いてください。「ここは通過点だ、絶対3年後に実現してやる」そんな気持ちになってきましたね。

T やる気が出てきました。


 次回は、最終的な1年後の目標を決めていきます。

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ピークパフォーマンス 代表取締役

平本相武(ひらもと あきお)

 1965年神戸生まれ。東京大学大学院教育学研究科修士課程修了(専門は臨床心理)。アドラースクール・オブ・プロフェッショナルサイコロジー(シカゴ/米国)カウンセリング心理学修士課程修了。人の中に眠っている潜在能力を短時間で最大限に引き出す独自の方法論を平本メソッドとして体系化。人生を大きく変えるインパクトを持つとして、アスリート、アーチスト、エグゼクティブ、ビジネスパーソン、学生など幅広い層から圧倒的な支持を集めている。最新著書は「成功するのに目標はいらない!」。コミュニケーションやピークパフォーマンスに関するセミナーはこちらから。


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