ビジョン型と価値観型 タイプ別アクションプラン──価値観型・中編成功するのに目標はいらない

明確な目標を持って人生を設計していくビジョン型に対して、日々の暮らしの中での“価値観”を大切にする価値感型の人でも、行動のアクションプランを作ることは可能です。

» 2007年11月01日 05時22分 公開
[平本相武(構成:房野麻子),ITmedia]

ビジョン型に続き、今回は価値観型のアクションプランの立て方、中編です。

 未来の目標が立てられない価値感型の方でも、アクションプランを作っていくことが可能です。前編で見え始めた価値観を、今回はさらに深く確認していきましょう。

好きな人、記念日、もしくは不満から価値観を導き出す

 過去の充実した場面が思い浮かばない人は、好きな人、尊敬する人を思って、その人の何がいいか、と考えてみてください。

 「あの人、なんかいいなあ」「ああいう風になりたいな」という人がいたら、その人の何がいいのか、じゃあ、自分にとって何が大事か、というのがわかるはずです。例えば「イチローが好き」となったら、「彼の何がいいか」を問うてみる。例えば「やっぱり自分のやることに誠心誠意かけているのがいい」とか「職人っぽいのがいい」とかが出てきますね。人が思い浮かばない場合は、好きな場所や好きな感覚なんかも思い出してみてください。

 それでも浮かばない場合は、何かの記念日を思い出してみてください。誕生日やクリスマス、正月、お盆などを振り返っていきながら、何か印象に残っている場面はないか思い出してみてください。良かったときや充実していたときがないでしょうか。「昔、おばあちゃんの家に行ったとき、すごく楽しかった。洞窟の中に入ったり、海からワカメを採ってきて食べたりした。すごい自由な感じがして良かった」など。「それの何がよかった?」と自分自身に聞いてみる。すると「気取らずに自分のペースでできたのがいいかな」みたいなことが出てくるでしょう。「じゃあ、自分にとって何が大事?」と問い、「周りにプレッシャーをかけられるのではなくて、自分のペースでできるのがいい」みたいな感じになります。

 これでも何も出てこない人の場合はもう1つ裏の手があります。それは、不満を思い出すこと。今の生活、今の仕事をしていて、不満に思うことを出してみてください。

平本 これは嫌だ、納得できない、ということはありませんか? こういうお客さんが嫌だとか、こういう上司/部下が嫌だとか。

S 最近ちょっと嫌なのが、よく20時半くらいに仕事の電話がかかってくることですね。その時間って、家に帰ってきて、お風呂に入ったり家族とご飯を食べたりしている時間なんですよ。特に、よくお風呂に入っているタイミングで電話がかかってくる。電話に出られないというのも嫌なんですが、生活のタイミングがずれているのがすごく嫌ですね。

平本 それの何が嫌ですか?

S 家族水入らずの時間に仕事が入ってくるのが嫌ですね。

平本 じゃあ、自分にとって、何が大事ですか?

S 家族と話す時間、かな。家族との大事な時間に邪魔されるのは嫌ですね。


 このように、長い会議や意味のない残業、遅い時間に電話が来ることなど、嫌だということを思い出すと、それを裏返して、結局、自分にとって何が大事か分かります。

現在の価値観がどれくらい満たされているか確認する

 過去の楽しかったことや現在の不満の裏返しから、自分が大事にしたいこと、価値観をいくつか引き出してきました。ところで、実はビジョン型の人は、価値観に優先順位が付きます。大事な順に価値観を並べたり、避けたい順に価値観並べたりできるのです。

 でも、価値観型の人は、価値観に優先順位をつけることができません。全部大事です。例えば、冒険、つながり、ゆとり、感動、安心、豊かさ、好奇心、愛という8つの価値観があったとしたら、どれが一番大事ですか? という問いに価値観型の人は答えられません。

 そこで、優先順位をつける代わりに、“価値観のバランス”という発想を持ってほしいのです。生活や仕事の中で、価値観の全てをどう満たしていくかを考えていきます。

平本 過去の充実体験や、現在の不満の裏返しから導き出された価値観を書き出してみてください。なるべくキーワードっぽく、一言でまとめてほしいんです。

S 知識欲、経済的安心、チャレンジ、好奇心、独立感、心のゆとり、といったところです。

平本 どうですか、優先順位がつくというよりは、全部満たしたいですよね?

S そうですね。どれを優先というのは、考えても結論が出ない気がしますね。

平本 そうなんですね。価値観傾向の強い人は、優先順位をつけずにやります。この表(下図)を使って、今挙げた6つの価値観を記入します。Sさんの場合は価値観が6つ出てきましたので、円を6等分してください。真ん中は丸く開けて、周囲に自分の価値観を記入してください。円は10層になっていて、後でやっていただきますが、それらの価値観の満たされ具合を塗るようになっています。

平本 ざっと見てみて、どうでしょう。全部の価値観が必要ですか?

S 全部必要です。

平本 全部満たした方がいいですか?

S 満たした方がいいです。

平本 全部満たしているとしたら、どうですか? 充実していますか?

S 充実しています。

平本 このグラフを満たすようにすればするほど、成果が出てきます。究極的には、これが全部10になるようにアクションをとっていきます。現在の状態を塗る前に、もう1つ。円の周りに価値観を書いていますが、それを見て、真ん中の丸に入れたい言葉があったら入れてみてください。周りのワードを見ながら、全体を象徴するフレーズでもいいし、自分の名前でもいいです。

S 「研究者」みたいな感じかな。

平本 いいですね。どうですか、全部で研究者みたいな感じがしますか?

S しかも「中世の」みたいな。

平本 じゃあ「中世の研究者」と真ん中に記入してください。ここにくるワードは、自分のアイデンティティ(セルフイメージ)の可能性もあるし、すべての価値観を象徴するエッセンスかもしれません。

 さすがに、「毎日、中世の研究者のように生きましょう」といわれても、どうしたらいいか分からない。だから、周りにある価値観を毎日満たしていく。ということになります。

 では次に、現状の価値観の満たされ具合を10段階で決めて、グラフを塗ってみてください。

平本 現状を見てみて、どうですか?

S ちょっと足りていないところもありますが……。まあ、チャレンジはこのくらいでもいいかな。多ければ多いほどいいかというと違うかもしれないし。1日中、チャレンジングな状況ばかりというのも、ちょっと(笑)。でも、ないと物足りないんですよね。

平本 このように、まずは現状を知ることが大事です。


 ここまでで見えてきた価値観の内容を元に、次回は具体的なアクションプランの立て方に入ります。

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ピークパフォーマンス 代表取締役

平本相武(ひらもと あきお)

 1965年神戸生まれ。東京大学大学院教育学研究科修士課程修了(専門は臨床心理)。アドラースクール・オブ・プロフェッショナルサイコロジー(シカゴ/米国)カウンセリング心理学修士課程修了。人の中に眠っている潜在能力を短時間で最大限に引き出す独自の方法論を平本メソッドとして体系化。人生を大きく変えるインパクトを持つとして、アスリート、アーチスト、エグゼクティブ、ビジネスパーソン、学生など幅広い層から圧倒的な支持を集めている。最新著書は「成功するのに目標はいらない!」。コミュニケーションやピークパフォーマンスに関するセミナーはこちらから。


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