単一のアプリケーションをSaaSとして活用するだけでなく、複数のSaaSをどう組み合わせるかが今後の課題。その際に重要なのが業務の流れに沿ってつなげていくこと。SaaS型メール「Zebra」を提供するフィードパスが、SaaSとマッシュアップについて話した。
「今年はマッシュアップ元年だ」──。
11月29日に都内で開催された「SaaS World 2007」の講演で、SaaS型メール「Zebra」を提供するフィードパスの岩上由高プロダクトマネージャがこう話した。
岩上氏が話す企業向けサービスのマッシュアップとは何か?
グループウェア、営業支援、帳票作成、そしてメール──。企業が業務用のソフトウェアを内部に持つのではなく、“サービス”としてネットを通じて利用するASPやSaaSの導入が増えている。
ところが複数のサービスは相互につながっていない。実際には、あるアプリケーションから別のアプリケーションに、ユーザーが手作業で情報をコピー&ペーストしているのが実情だ。
「複数のアプリの画面を寄せ集めてもダメ。画面の切り替えがなくなるものではなく、アプリという区切りで考えるのではなく、業務の流れにそってサービスをつなげていくことが重要」だと岩上氏。これを“マッシュアップ”だと呼んだ。
SaaSとASPの違いを敢えて言うとすれば、業務の流れに沿ってアプリケーションをつなげていくこと──つまりマッシュアップが重要だという。
例えば顧客とのアポイント。まずメールで連絡を取り、予定が確定したらグループウェアに登録する。この時点で本来1つであるべきが、2つのアプリケーションにまたがってしまっている。その結果、ダブルブッキングしてしまったり、日付を間違えてしまったりといったミスが発生する。
同社のZebraでは、SaaSのメールサービスを軸に、ほかのSaaSサービスを連携(マッシュアップ)させた。メールの文章を自動解析し、日付の部分をクリックするとスケジューラ(サイボウズ Office for ASP)の内容が現れ、さらにそこからスケジュールの登録も行える。住所があれば、Googleマップの地図がそこから表示できる──といった具合だ。
「なぜメールなのか? メールはレガシーで気にしなくてもいいものと思われがちだが、業務のさまざまなパターンでメールは必ず登場している。やっかいもの扱いするのではなく、メールにスポットライトを当てられないか」という観点が重要だと岩上氏は話す。
各アプリケーションをSaaSに移行するだけでなく、SaaS間を、業務の流れに沿ってつないでいくこと。それが今後の進化のポイントになりそうだ。
今後のSaaSはどんな方向に進化していくのか。
1つ目として岩上氏が挙げたのは、シングルサインオンの進化だ。複数のSaaSサービスを、1つのIDとパスワードで利用できるようにするシングルサインオン。そこに、SaaSごとに異なる権限を一括して管理できる機能が重要になると見る。
「シングルサインオンは当然だが、個々の社員、個々のサービスによって権限設定が異なる。1人登録する際に、いちいち登録するのは大変。ポリシーを決めて、各サービスに登録できるようにしなくてはならない」(岩上氏)。技術的にはSAML2.0へ期待している。
2つ目は、各SaaSを横串で検索できる仕組み。APIを揃えて……など大ごとにはせず、もっと軽い仕組みで取り組めるといいと話した。
3つ目は、SaaSを支えるインフラ部分。アプリケーションだけでなくデータも外部に保管するだけに、サーバ仮想化や地震などに対応するディザスタリカバリ(DR)、サービスレベル保証(SLA)などが、より重要になると見ている。
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