ライオンとサンスターと三菱とBiz.ID Weekly Top10

「ライオン」「サンスター」「三菱」――。文具業界を眺めてみると、紛らわしい名前がいくつか出てくる。どうして紛らわしい名前がついたのか、ギョーカイの人に聞いてみた。

» 2007年12月07日 22時56分 公開
[鷹木創,ITmedia]

 先週のアクセスランキング、1位は「プリンタでブックカバーを自作する」だった。読書好きの方を中心に注目を集めたようだ。ほかには、「デジタル大掃除の方法」や「「幹事の心得」といった師走っぽい記事もランクインした。併せて読んでみるのもいいだろう。

 ランキングからは離れるが、筆者は12月7日、東京で開催しているライオン事務器のプライベートショウに出かけてきた。詳細は別途記事にする予定だが、ライオン事務器のスタッフから、こんな風に話しかけられた。

 「ライオンと聞くと、ふつうあちらのライオンさんを思い浮かべませんか」。あちらのライオンとは、アレだ。ハミガキなどで有名な「おはようからおやすみまでくらしに夢をひろげる」ほうのライオンである。

 便宜的にハミガキのほうのライオンとさせていただくが、こちらのライオンの創業は1891年(明治24年)。100年以上も続く名門企業で、当初は創業者の名前を取って小林富次郎商店としていたが、「ライオン洗石鹸」「ライオンコドモハミガキ」などが有名になり、20世紀に入ってから社号にライオンが入るようになった。

 「さすがに100年近くもライオンを名乗っていれば、有名になりますなあ」と筆者も思ったが、実のところ創業自体はライオン事務器のほうが早い(というか古い)。ライオン事務器の創業はなんと江戸時代の1792年(寛政4年)。世界史的にはフランス革命のまっただなかだ。こちらも当初からライオン事務器を名乗っていたわけではなく、「今津屋」という商号で商売していた。

 なぜ「ライオン」なのかというと、今津屋のトレードマークが「獅子印」だったからだ。1895年(明治28年)に商標も取得し、以来、顧客からは「ライオンさん、ライオンさん」と呼ばれるようになった。だが、商号がライオン事務器になったのは1980年。ハミガキのほうのライオンと比べると半世紀以上も遅れてしまった。

ライオン事務器の由来になったトレードマークのライオン。結構リアル系だ
真ん中が二つに折れるタイプのデスクも、実はライオン事務器の特許。卓球台が有名だ

 筆者が話を聞いたスタッフは「あちらのライオンさんと紛らわしいかもしれませんが……」と苦笑い。オフィス文具の老舗としては、当然ハミガキのほうのライオンともビジネス上の付き合いがある。商売敵ではないものの、商売相手に遠慮していたら社名変更が遅くなってしまった、というあたりが本音かもしれない。

 文具業界を眺めてみると、こういう紛らわしい名前がいくつか出てくる。文具王の高畑正幸さんが所属するサンスター文具も、生活日用品を販売するサンスターとは全く関係がない。

福井商店時代の家紋。確かに3つの菱でできてはいるけど、いわゆる三菱とはだいぶ違うような……

 有名なのは三菱鉛筆。いわゆる三菱グループとは何の関係もない。ライオン事務器によると、「三菱鉛筆という名前にしたほうがいいと、ライオン事務器からも働きかけたんですよ」という。何でも三菱鉛筆を取り扱っていたライオン事務器(当時、福井商店)の家紋も3つの菱から成り立っていて、三菱というブランド名で販売したかったからだそうな。

 先人たちがブランドや社名にかける商魂のたくましさを垣間見た気がしたが、関連リンクに「ライオン事務器」「ライオン」「サンスター文具」「サンスター」――などと並ぶのを見て、「やっぱり紛らわしいよ」と思ってしまう筆者であった。

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