「あのときに戻れるとしたら」どうする?10分でできる簡易セルフカウンセリング(2/2 ページ)

» 2007年12月14日 20時12分 公開
[平本相武(構成:房野麻子),ITmedia]
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自分に関する知識の質と量を高めよう

 不安やうつは悪いものだと思わずに、信号だと思ってほしいですね。不安やうつのアラームが鳴り出したら、方向をよく見て、こっちでいいのかなと考えて修正する必要があるということです。赤信号というのは、それ自体が悪いのではなく、今、進むとぶつかるよ、ということを教えてくれているわけです。

 同じように、Aさんがむなしいと感じるのは、むなしいのが悪いわけではなくて、休日の過ごし方が能率的ではないよ、ということをAさんに教えてくれているのです。集中できないまま次々やることを変えても、自分にとって結局はあまり役に立たないということを教えてくれている。じゃあ、今度から事前に予定を入れるとか、1個やってダメだったらすぐ連絡するなどの対処法が分かります。

 対処法が分かったら、今度からこれをやれば全部OKになるかもしれませんが、OKにならなかったら、もう一度同じことをやります

 「平本さんに言われて、ああいう風にやってはみたものの、やっぱりむなしくなる。どうも、友だちと過ごすだけではダメみたいだ」となったら、また別の対処法が出てきますね。例えばですが、「友だちと過ごせば楽しいと思ってやってみたけれど、コイツといてもつまんないな」とか(笑) そう思ったら、「そうか。予定を入れればいいだけじゃないんだ。人を選ばないと」みたいなことが分かるわけです。夏場はアウトドアが好きなB君がいいとか、冬場はCさんがいいとか、自分にとってのよりいい過ごし方のバリエーションが出てきます。それは自分にとっての知識となります。

 著名なコーチのアンソニー・ロビンズが言っていることですが、「知性とは、違った状況でどれだけいろいろな反応ができるかの、選択肢の質と量」だそうです。

 例えば、エスキモーは雪に80種類の名前を持っているらしいです。北極やアラスカで、私たち日本人とエスキモーと、どちらが知性を持っているといえるでしょうか。明らかに彼らの方が知性を持っていますね。食べていい雪、危険な雪、解けやすい雪、歩いていい雪、乗ってもいい雪みたいに、違った状況に対して、どれだけ質と量のある選択肢が出せるかといったら、絶対エスキモーです。ところが、エスキモーが日本に来たら、今度は私たちの方が知性があります。絶対的な知性というものはなくて、その地域や生活環境、仕事の中で、自分がどれだけ知性的になれるかなんですね。

 例えば、普通の人は、飛行機に関してそれほど知性がなくてもいいわけです。ところが、パイロットが、発進、上昇、降下、左右に旋回、だけの知性しか持っていないとしたら、かなり困りますね。乱気流ならこうする、雪ならこうする、風ならこうすると、できるだけたくさんの数と質の良い知識がないとダメです。

 普通の人は、飛行機に関して知性はそんなになくてもいい。けれど、自分の仕事では知性があるほうがいい。その知性が、休みの日に必要なのも同じことです。3日くらい休みが取れたときに、それに対する自分の知性がなくてはいけない。仕事をしているときには選択肢の質と量が十分あるのに、時間が空いた瞬間、お手上げみたいになっちゃうと、むなしい3日になりますね。

 一人でゲームをして過ごすのも選択肢の1つですが、選択肢がこれしかないということでは知性として不十分です。電話するというのも知性、事前に約束するのも知性です。同じ予定を入れるにしても、誰彼なしに約束するのではなくて、こんなときはこの人がいい、あんなときはあの人がいい、あいつがダメならこいつと、選択肢は数がたくさんあって質が高いほどいい過ごし方ができます。このように、知性とは、どれだけ違った状況の中で選択肢の質と量を発揮できるかです。

 仕事だったら、ある情報があったら、これは○○に関する数字、これは××に関する数字といった具合に、必ず分類できますね。仕事に関してはちゃんと分類できるのに、なぜ自分の考えや感情、行動をちゃんと分類しないのでしょう。してしまえば、楽になるはずです。

「感情」を意識的に出せる人は、意識的に止められる

 カウンセリングをしているときに感じることですが、最近、なかなか「感情」が出てこない人が多くなりました。感情の代わりに、「考えていること」ばかり出てきます。例えば、どんな風に感じましたか? と聞くと、「がんばらなきゃって感じました」という風に答えます。「がんばらなきゃ」「がんばりたい」というのは「思考」なんです。でも、そういう人が多くなっています。

 感情が出にくい人は、過去の楽しかった場面を思い出す練習してほしいですね。そのときの場面で、目に見えるもの、聞こえるもの、身体で感じるものをありありと思い出しながら、どんな気持ちだったかも思い出してください。うれしいってこんな感じだな、とか、安心感はこうだな、という練習をしてほしいです。

 ポジティブな感情で練習できたら、次はネガティブな感情も練習してほしいですね。あんなことを言われて悔しいとか、コンペで負けてがっくりしたとか、母親が亡くなったときは悲しかった、みたいな感じで、ネガティブな感情を思い出す練習もしてください。でも必ず、前後にポジティブな感情を思い出してください。ネガティブなことだけを思い出すと、むなしくなりますから。

 意識的に感情を思い出せるようになると、意識的にやめられます。なぜわざわざネガティブな方も練習するかというと、ネガティブな感情を意識的に思い出せる人は、意識的に止められるからです。自分で「さあ、父親が亡くなった場面を思い出すぞ」と思い出して悲しい気持ちになれる人は、自分の意志で、その悲しい気持ちを止めることができます。ところが、亡くなった父だけは思い出さないように、思い出さないようにしながら、つい悲しくなってしまう人は、その悲しい気持ちから抜け出せません。

 感情が出ない人でも、感情を感じていないわけではないのです。多くの人は、感情を感じていながら、気づいていないだけなのです。

 感情に気づかないことは、かなり危険で、信号を無視して、バンバンぶつかりながら車を走らせているようなものです。特に、自分の人生のバランスを取るためには、感情に気づくことは非常に大切です。これに気づかないようだと、ストレスで押しつぶされて、過労死も想定内ということになりますよ(笑)。「そろそろヤバイなあ」と気づくことができるなら、自分でペースダウンしたり、ちょっと休みを入れたり、マッサージに行ったりと、リフレッシュすることができますが、気づかないと、「まだ行ける行ける」とやってしまって、突然コテンと倒れてしまいます。

 感情に気づくことの重要性を再認識してもらいたいと思います。

 カウンセリングに限らず、コミュニケーションの上でも、どの部分でその感情が生まれたのかに気づくことは大切です。そしてそれは、ほんのちょっとしたことがきっかけである場合もあるのです。

 例えば、夫の何から何までが嫌になって、絶対離婚するといっていた妻が、実は食事のときの夫の実に些細な行動がネガティブ感情の根本になっていることに気づき、それを止めてもらったことであっさり円満になった、というケースがあります。

 人間とはそんなもので、ほんのちょっとしたことが嫌な気持ちを引き起こし、小さなトラブルに発展し、売り言葉に買い言葉がだんだんエスカレートして大事になる──ということがあります。しかし、実は原因はほんの小さなことである場合が多いのです。例えば、「あの上司が嫌い」というのも、もしかしたら、話すとき最初に言う「えーっと」が嫌なだけかもしれません。「リポートのこの3行を必ず開けろ」と言った、あの言ったときから嫌だったのかもしれません。そんな、ちょっとしたことなんですよ。

 そうすると、逆にいえば、自分でそのことに気をつければいいということです。この上司には、リポートの3行を開けることだけ気をつけよう、と思った瞬間、ほかのことは気にならなくなるわけです。


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