“建設的な先送り”をしてみませんか? いったん意識の外に置いて、時間的、または空間的に“泳がせておく”ことで、インプットしてきた内容を無駄にせずに済むようになります。
今回の課題:努力に見合う成果を上げるには
コツ:原則を決めてこれを守る
前回の記事「インプットを仕事に確実に生かすには?」では、「残したメモ」や「集めた情報」といったインプットをいかに役立てるかという課題へのアプローチとして、次の2つを取り上げました。
前回は特に1つめの「タスクに落とし込む」ことについて掘り下げましたが、どうしても具体的なタスクに落とし込めないというケースもあるでしょう。
今回はこの対策について触れながら、2つめの「原則を決めてこれを守る」について考えていきます。
結論から先にいえば、タスクに落とし込めない場合は、無理をせずに一定期間“寝かす”ようにします。とはいえ、そのまま放置すれば完全に忘れてしまいますので、泳がせる、すなわち期限を決めて手放すことです。このとき、期限として設定する日は文字通り「忘れた頃」でよいでしょう。
例えば、
「3月28日にまたあらためて取り組んでみて、それでもダメならあきらめる」
といった具合です。このときの「3月28日」は適当に決めた日付です。この日にリマインダーメールが届くようにしたり、手帳に書き込んだりするなど、そこに注意が向くようにします。ただし、その日が休日だったり、出張が入っていたりなど、その取り組みのために時間を割くのが難しいような日は避けた方がいいでしょう。
こうすることで、あらためて取り組む保証が得られると同時に、建設的な先送りができます。すなわち、検討事項をいったん意識の外に追い出すことによって、より重要なことを考えるための余地が生まれるわけです。
このように一定期間寝かせることによる「時間的泳がせ」とは別に、「空間的泳がせ」とでもいうべきアプローチもあります。それは、人に話すことです。
自分一人で考えていたのでは、思考の堂々巡りに陥り、時間を空費してしまいかねないところを、人に話して聞かせることにより、違った角度から見られるようになったり、新たな視点を提供してもらったりできる、といったメリットが期待できます。
自分一人の考えの及ぶ範囲を空間ととらえれば、これを人に話すことによって拡張できる、という意味で「空間的泳がせ」と呼べるわけです。
この2つの「泳がせ」の共通点は、迷う時間を削減するというポリシーです。時間は放っておいても容赦なく減っていきますから、迷ったり考え込んだりといった、何も生み出さない時間は極力減らしたいものです。そもそも、迷ったり考え込んだりするのは、
といった不安があるからでしょう。そうであれば、事前に、
という原則を作ってしまえば、あとはこれを守ることだけに集中できます。すなわち行動を起こすことです。そして、この原則は「とりあえずは」とあるように“β版”でかまいません。テストで70点を取るよりも、70点を100点に引き上げるほうが一層むずかしいのと同様に、完ぺきな原則を追求していては、いつまでたっても行動が起こせないからです。
逆にいえば、行動を起こすからこそ、「うまくいった!」あるいは「期待していたほどではなかった」といった「成果」が得られるのであり、これらの成果が原則をブラッシュアップするための“研磨剤”となるのです。
ところで前回、次のようなことを書きました。
期限を決めることによって、限定された個所に努力を集中投下できるようになるわけです。ちょうどダムに水を溜めるようにです。
ここでいうところの「ダム」とは、溜めるだけのものではなく、必要なときに水門を開いて、溜めたパワーを一気に解放するためのものです。次回は、この「ダム」について詳しく見ていきます。
1974年、東京生まれ。ブログ「シゴタノ!仕事を楽しくする研究日誌」主宰。学生時代よりビジネス書を読みあさり、システム手帳の使い方やスケジュール管理の方法、情報整理のノウハウなどの仕事術を実践を通して研究。その後、ソフトウェアエンジニア、テクニカルライター、専門学校講師などを経て、現在は仕事のスピードアップ・効率アップのためのセミナーや研修を手がける。デジタリハリウッド講師。著書に『「手帳ブログ」のススメ』(翔泳社)『スピードハックス 仕事のスピードをいきなり3倍にする技術』『チームハックス 仕事のパフォーマンスを3倍に上げる技術』『そろそろ本気で継続力をモノにする!』、近著に『Life Hacks PRESS vol.2』『LIVE HACKS! 今を大切にして成果を5倍にする「時間畑の法則」』がある。
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