後半は、いよいよブレインストーミング――なのだが、その前に「ブレストの4つのルール」をおさらいしよう。
お互いを刺激しあってブレストするプロセスには、ひとまず価値判断はせずにおこう。ちなみにこの判断遅延というルールだが、翻訳によっては批判禁止と呼ばれることもある。だが、ブレストの後半フェーズでは批判することでアイデアのブラッシュアップも行うので、判断遅延(判断を遅らせる)と覚えておくほうがいい。「判断遅延が実行できれば、ブレストの80%はできたも当然」(石井さん)
孫子に「智者の慮(りょ)は必ず利害を雑(まじ)う」とある。創造性の高い人は、思いついたアイデアの長所も短所も思いついてしまうが、あえて短所にはいったん目をつむることも重要だ。マンダラートの時もそうだったが、「面白くない」「平凡だ」と判断してしまうことで発想の障壁が高まってしまう。
とっぴさを歓迎するのは、人間の発想が「AだからB。BならばC」というように連続したものになりがちだからだ。思いもよらないような領域に実は素晴らしいアイデアが潜んでいるかもしれない。
とにかく量を出すことが重要だと言われるブレストだが、なぜ質より量を重要視するかご存じだろうか。石井さんは「頭の中の『とおせんぼ』を排するため」だという。思いついたことをどこかに出さないでおくと、そのことを常に考えてしまい、次のアイデアが出てくることを阻む、すなわち「とおせんぼ」するというわけだ。
それに特定のテーマを考えた時に浮かぶアイデアは最初、「誰が出しても同じようなものが出る」もの。そうした誰もが思いつくアイデアを出し尽くすことで独創的なアイデアが出てくる。「出し尽くすと苦しいブレストになるが、そうなったらチャンス」なのである。
遠慮しがちなのが、ほかの人のアイデアに便乗すること。例えば、車について考えていた時に、「タイヤを2つ増やす」という6輪車のアイデアが出た。続いて「タイヤを1つ増やす」という5輪車のアイデアも出たとする。ここで間違っても「要はタイヤの数を増やすってことでしょ」とまとめないことが重要だ。
というのも「5」という数が大切なこともある――からだ。「5輪で走る自動車を想像すると、5本足のいすが思い浮かぶ。キャスター付のいすのような動きができるかもしれない。神業的な車庫入れもできそう。そういうアイデアは6輪車から生まれない可能性もある」
また、アイデアを思いつくことが得意な人、アイデアを具体化させたりするのが得意な人と、人によって得意不得意もある。「アイデアは、別の頭に移すと良く育つ」と言われる。「他人のアイデアをねじ曲げるのではなく、別バージョンをたくさん作るという気持ちで便乗してほしい」
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