【特別編】漫画家の卵たちとブレインストーミングしてみるアイデア創発の素振り(4/4 ページ)

» 2008年07月22日 14時45分 公開
[鷹木創,ITmedia]
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浮かんだアイデアをどうする?

 ブレストというと、アイデア出しに終始してしまいがちだが、実はこの後、アイデアの中から一番良いものを選び出し、そのアイデアをブラッシュアップする作業がある。

 もっとも良いアイデアを選び出すのは簡単だ。良いアイデアにチェックをつけるだけ。ブレストのメンバーが6人であれば、最大6つのチェックがつくはず。このチェックの数で上位20%に絞る。さらにアイデアを個別に確認して、同じようなアイデアを統合するなどして、最も魅力的な案を1つ選び出すのだ。

 この最終的に残ったアイデアをブラッシュアップするわけだが、石井さんが紹介したプロセスは「PPCO(Pluses, Potentials, Concerns, Overcome concerns)」という手法である。

 ブラッシュアップする時、いきなり批判から始めてしまうと、アイデア自体がくだらないものに思えて、モチベーションが下がってしまう。「心が折れる」瞬間だ。PPCOの最初の作業は「PP」、つまりアイデアの長所と可能性を考えること。「無理やりでもいいから、徹底的にほめる」。アイデアの長所や可能性を最大限膨らませておけば、心が折れるのを避けられるという。

 続いては「C」。いよいよ批判ブレストだ。PPとは逆に懸念となる点を徹底的に指摘しあう。ブレストの4つのルールで、「批判禁止ではなく判断遅延」と伝えた理由はこの批判ブレストというプロセスが存在するためだ。批判したくて我慢していた人はぜひこの機会に思う存分伝えるべきだが、実際は「懸念点を20〜30も指摘できればいいところ。相当クリエイティビティに富んだ集団で50点ほど」だという。

 洗い出した懸念点を解決するフェーズが「O」の段階。もちろん、すべてを解決しようとしていたら大変だ。「会議の時間が、いくらあっても足りない」という。そこで良いアイデアを選び出すのと同じ手法で、懸念点をメンバーでチェック。上位3点をそれぞれ解決することを目指す。「3つの懸念点をまぜないようにするのがポイント。1位、2位、3位というように1つ1つ解決策を探る」

 もしかしたら批判ブレストであがった懸念点全部が気になる方もいるかもしれない。「十中八九の懸念点は、上位3点が解決できれば解決できたり、無効化できたりするもの」だという。

名刺カードにアイデアを――さそうさんも実践

 最後に石井さんは、自身の発想ツールを紹介。これは名刺大のカードに思いついたアイデアを書き込んでいくというもの。書き込んだカードは名刺入れや名刺ホルダーで整理できるのも便利そうだ。

 偶然だが、さそうさんも同じような名刺カードにアイデアを書き込んでいた。「ちょっとしたメモのほか、イラストも書き込めるから便利」。町で見かけた気になる人物像を書き込んで、後のマンガ製作に役立てるのだ。

(左)こちらは石井さんの名刺カード(右)こちらはさそうさんのカードだ


 というように進んでいった講義であったが、必ずしもすべて順調というわけでもなかった。カードの指令に従ってブレストを進めるブレスターだが、必ずしもマンガのストーリー作りのために作られたわけではない。「上下逆さまにしたらどうですか」といったカードを手に、途方にくれる学生もいた。

 そもそも漫画家は複数人でブレストをすることも少なく、与えられたテーマそのものに「これじゃ、イメージがわかない」という難しさもあったようだ。その一方、「混乱したけど、楽しかった」「ネタに困った時に役に立ちそう」「またやりたい」などの声もあった。

 石井さんは最後に、「チャレンジがくじけそうな時、(アイデアを発想するためのスキルが)一歩前進するための力になればいい」とコメント。「1年前の自分と、2年前の自分とブレストする時もある」と1人ブレストのコツも伝えた。

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