海連から8月上旬に発売予定の、手のひらサイズの液晶プロジェクタ「X Pro920」。本体外観と付属品をチェックしたところで、いよいよ実際の投影性能について見ていこう。
X Pro920はその小ささから、通常のプロジェクタとは違ったさまざまな使い方が想定できるが、今回はまずベーシックに、ノートPCに接続して会議室で投影してみることにした。スクリーンは、普段からプロジェクタの投影に使っている全面ホワイトボード仕様の壁だ。
電源ボタンを長押しすると、ブーンという音とともにレンズ部のLEDランプが光り始めた。起動時間は1秒ほどで、レスポンスはかなり早い印象だ。アナログRGBケーブルでPCに接続し、ディスプレイを投影モードにすると、スクリーンに映像が投影された……のだが、室内灯のもとではほとんど投影画面は見えない。壁際の蛍光灯を消して部屋をうす暗くすると、ようやく映っていることを判別できる程度になった。
とりあえず投影はできたが、机の上に直接置くと投影画面の位置が低すぎる。さらに、本体に高さがないため、机の端に投影光が映ってしまっている。本体を机の端ぎりぎりに置けばいいのかもしれないが、本体が軽いため、誤って接触しただけで下に落としてしまいそうで、なんだか不安だ。
そこで、高さ15センチ程度の小さな三脚を使うことにした。ところがここで問題が発生。本体が190グラムと軽いため、ケーブルの重さに引っ張られて、小さな三脚では安定しにくいのだ。きちんとバランスを考えないと足が浮いてしまう。今回は結局、しっかりした大きな三脚を持ってきて設置することにしたが、ノートや書籍を積み上げてその上に置くというのも一つの手かもしれない。レンズカバーなどを本体の下に敷いてレンズの角度を上向きにするという方法もあるが、投影画面は台形になってしまう。自動台形補正機能などは搭載していないため、できれば本体ごと高めの位置に設置したいところだ。
さて、三脚を使っての設置も完了したので、再度投影に挑戦してみた。画面サイズは取扱説明書によると、1メートルの投影距離で25インチ。投影できる解像度は本来VGA(640×480ピクセル)までだが、入力する画面の解像度がXGA(1024×768ピクセル)でも縮小表示できる。今回もXGAの画面を縮小表示させている。
あらためて投影してみて気付いたのは、冷却ファンの音がわりと大きめということ。会議などで使用する際には特に問題ないレベルだが、DVD鑑賞などで使う場合は気になる人がいるかもしれない。また、5分ほどの使用でも、本体底面はけっこう熱くなる。
投影画面は、室内灯をつけたままではやはりほとんど見えない。壁際の蛍光灯だけを消して試してみたところ、画像などは判別できる程度の映るようになったが、小さな文字などを読むには苦労する。そこでさらに灯りを消して室内全体を真っ暗にすると、プロジェクタ位置と同程度の近距離からであれば文字などもかなり見やすくなった。会議室などで使用する際には、室内を暗くすることが必須条件と言えそうだ。
ただし、投影距離1メートル程度だと、スクリーンから離れたところからではやはり文字が読みにくい。これは画質の問題というよりも、画面サイズが25インチ程度にしかならないためだ。また、画面中央部と比較して、四スミは明るさが落ちる。さらに、入力する画面の解像度をXGA、VGAともに試してみたが、レンズ部のつまみでフォーカスを調整しても細部が少しぼやけ、完全にシャープにはならなかった。
では、会議などの目的で使用する際には、具体的にはどの程度の投影距離を取って、何ポイント程度の文字を映すのがよいのだろうか。8ポイントから36ポイントまでの大きさの文字を並べたテスト用のPowerPointファイルを作って、それぞれ1メートル、2メートルの投影距離で映してみた。
投影距離1メートルで試したところ、文字の大きさは18ポイントあたりからつぶれずにかなりはっきりと読めたが、やはり画面サイズが小さい。ノートPCのディスプレイと比べて少し大きい25インチ程度だ。これでは、出席者が10人以上の会議の場合に、スクリーンから遠いところに座った人には文字が読みづらいだろう。実際に、スクリーンから5メートルほど離れたところからでは、20ポイント程度の文字でも読みにくかった。
次に、投影距離を2メートル取った場合について見てみよう。画面サイズは、一般のプロジェクタを使用したときに比べ一回り小さい程度で、会議室などでの使用にはこちらの方が適している。写真を見る限りでは気になりそうな画面の明るさも、実際に肉眼で確認したところ、20ポイント以上の文字であれば5メートル離れたところからでもはっきりと読めた。
ただし、三脚などを使って、なおかつ投影距離を2メートル取るためには、スクリーンと机が2メートル以上離れている必要がある。この問題を解決するため、本体底面にペンをはさむなどして、レンズを上向きに調整してみた結果が以下の写真。投影画面は台形になってしまうが、この程度なら気にならないという人には、手軽にできるのでやってみてもいいかもしれない。
今回の結論としては、室内灯を消した部屋で、2メートルの投影距離があれば、X Pro920を会議中のプレゼンなどに使うことが可能であるということだ。文字の大きさは20ポイント以上であれば、画面でもつぶれず、プロジェクタから離れて座っていても読みやすい。また、本体が小さく軽いため、設置を工夫する必要がある。
通常のプロジェクタとはやはり使い勝手が異なる製品だが、まずは今回、基本的な投影性能に関してリポートしてみた。しかし、超小型というX Pro920の特徴を生かせば、会議室での使用以外にももっと面白い使い方ができるはず。ということで次回は、このプロジェクタの特徴を生かすために、どのようなシーンでどのような使い方ができるかを考えてみることにする。
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