発想の経緯を探る――アイデアマラソンとノートによる“第二脳”樋口健夫の「笑うアイデア、動かす発想」

「すべてのビジネスには毎回、新しい発想が必要である」――。1984年1月に最初のノートに最初の発想を書き留めたことから、筆者のアイデアマラソンは始まった。

» 2008年10月24日 15時00分 公開
[樋口健夫,ITmedia]

 1984年1月に最初のノートに最初の発想を書き留めた。サウジアラビア王国の砂漠の真ん中、首都リヤドに駐在していた時のことである。

 当時、主に営業の作戦だったり、砂漠を楽しむことだったり、自分の発明だったりを書いていた。それが功を奏したのか、新しい発想をビジネスに応用して、連続して受注を獲得したものだ。それ以来、「すべてのビジネスには毎回、新しい発想が必要である」というのが、ビジネスの信条となった――。「アイデアマラソン発想法」の始まりである。

 最初の数年は毎日、数個の発想を書き留めていたが、すぐ調子に乗り、ヨメサンとの対抗意識が高まったりして、どんどん発想ペースが上がった。1999年1月1日からは1日に最低50個の発想を書くようになって、現在に至っている。累計の発想数は、2週間前に29万個を超えた。アイデアマラソンで使ったノートも2つの書棚いっぱいである。

(左)筆者宅の書棚。(右)こちらは筆者が研修しているジャパネットたかたの新人諸君。みんなノートに発想を書き込んでいる

アイデアマラソンの準備と方法
1 まず自分のノートを持つ手帳は書くスペースが狭すぎ。キーワードだけを書くと、後で分からなくなる。スペースが狭いと絵も描けない。だからノート(A5判がオススメ)だ。
2 発想の内容はどんなことでも構わない。領域を限定しない。営業企画、ソフト、コンセプト、計画、夢、俳句、回文、日記、読書感想など、すべてを書き込む。
3 大切なのは書いた後。周りに発想を話すべし。周囲に話せば当然コメントをもらえるはず。こうして発想の質が向上し、発想がネットワーク化していくのだ。
4 蓄積した多数の発想から、最良のものを選択して実行していく。

 アイデアマラソンの中心が、アイデアマラソン・ノート(A5判のマルマン製20穴ファイルノートがベース)である。何を使ってもいいのだが、筆者はこのノートにぺんてると共同開発したデジタルペン「アイデアマラソン・スターターキット for airpen」を使って書いている。一番の利点は、airpenで書いた内容をすべてPCにテキストデータとして保存できること。これならいつでも検索できる――というわけだ。

 ノートには、予定表、電話帳、クリアファイル、ファスナーポケットなど30近いアイテムを追加した。もはや生活必需品。このノートがあるからこそ、筆者は生活できるといっても過言ではないだろう。

筆者のアイデアマラソン・ノート

  1. アイデアマラソン・ノート
  2. アイデアマラソン・スターターキットfor airpenの記憶部分
  3. airpen
  4. 桂米朝先生よりのはがき
  5. せん茶ティーバッグ
  6. 新品マスク
  7. 新幹線時刻表
  8. 印鑑
  9. 名刺(日本語)
  10. 名刺(海外向け)
  11. パスポート用写真
  12. 優れた発想が出たら張るカラーシール
  13. メガネ拭き
  14. SDカード
  15. フラッシュメモリ
  16. airpen交換インク
  17. 家の出発前チェックシート
  18. airpen用交換バッテリー予備
  19. 充電池(eneloop
  20. 目薬
  21. 粘着バンド
  22. 爪切り
  23. とげぬき
  24. 眼鏡用ドライバー
  25. 粘着付箋紙
  26. カード電卓
  27. パスポート

 ――と、ここまで深夜遅くまで書いてITmediaに送ったら、(筆者が内心“鬼のようにでかい編集者”鬼Xと名付けている)担当編集者は電話口でこともなく、

 「樋口先生、アイデアマラソンとノートの重要性という言いたいことは分かります。しかし、これだけでは読者は納得しませんぞ。発想の例を示してくださいな」とカウンターを出してきた。夜中の電話で「ぐちぐち言われても」と軽く言ったら、「そうだプチプチで出してみてくださいよ。グチグチよりもプチプチですね」と挑戦的姿勢だ。そこで寝ないで考え始めた。眠らせない鬼Xと付き合うのもツラいよ!

香水入りプチプチ

 プチプチをイメージしてまず浮かんだのが、プチっとつぶすと小容量の空気が放出されること。これは香水を入れたらいい香りがするのではないか。ただし安物の香水はやめてほしい。本当に素晴らしい香りがいいのである。

関連発想
1 コーヒーの香り入りプチプチ
2 うなぎのかば焼きプチプチ

プチプチで作ったレジ袋

 もともとプチプチは保護のために考えられたもの。レジ袋に使ったら、卵などの割れ物や、冷凍食品などの冷たい物に便利そうだ。価格がネックになりそうだけど、最近は有料化も叫ばれているし、有料の高級レジ袋路線もありだろう。

関連発想
1 プチプチトート(買い物バッグ)
2 プチプチケータイ入れ(ケータイは落とすもの。安価にケータイを守る)
3 保冷剤入りプチプチ

粘着するプチプチテープ

 息子の家で家具の角に布張りしているのを見た。布を張って粘着テープで止めているのだ。これ、赤ちゃんがぶつかって怪我をしないためだが、何かを保護するためのプチプチを粘着テープにしてしまえば便利なのではないだろうか。

関連発想
1 プチプチの粒の大きさと強さを変える
2 プチプチ靴のソール

 このほかにも、

  • プチプチ人形
  • プチプチ水着(これだけで浮く)
  • プチプチ下着(座ったときにクッションになる)
  • 四角いプチプチ
  • ぜったいにプチプチできない強力プチプチ
  • プチプチするとドレミが鳴る

 など、いくらでも出てきた。もちろんすべてアイデアマラソン・ノートに書き込み済みだ。みんなも試してみてはいかがだろう。

今回の教訓

熱中しすぎて寝られなくなっても知りません(鬼X)


著者紹介 樋口健夫(ひぐち・たけお)

 1946年京都生まれ。大阪外大英語卒、三井物産入社。ナイジェリア(ヨルバ族名誉酋長に就任)、サウジアラビア、ベトナム駐在を経て、ネパール王国・カトマンドゥ事務所長を務め、2004年8月に三井物産を定年退職。在職中にアイデアマラソン発想法を考案。現在ノート数338冊、発想数26万3000個。現在、アイデアマラソン研究所長、大阪工業大学、筑波大学、電気通信大学、三重大学にて非常勤講師を務める。企業人材研修、全国小学校にネット利用のアイデアマラソンを提案中。著書に「金のアイデアを生む方法」(成美堂文庫)、「できる人のノート術」(PHP文庫)、「マラソンシステム」(日経BP社)、「稼ぐ人になるアイデアマラソン仕事術」(日科技連出版社)など。アイデアマラソンは、英語、タイ語、中国語、ヒンディ語、韓国語にて出版。「感動する科学体験100〜世界の不思議を楽しもう〜」(技術評論社)も監修した。「アイデアマラソン・スターター・キットfor airpen」といったグッズにも結実している。アイデアマラソンの公式サイトはこちらアイデアマラソン研究所はこちら


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