毎月、何かしらの社内行事が行われているイノベーション。予算的にも時間的にも、厳しいのではないだろうか?
「確かに、予算が潤沢にあるわけではありませんし、仕事も忙しい(苦笑)。そのエネルギーを営業活動に向けて売り上げを伸ばすことに力を注いだ方が効率的です。『だったら、社内行事なんか、やらなきゃいいじゃないか』と思われるでしょう。でも、『この人たちと一緒にがんばった』という経験が、社員のモチベーションの向上につながって、中期的に見れば売り上げに貢献して、みんなの給料アップにつながる……と、いいサイクルが回り始める。私は、社内行事をその1つのきっかけにしたいのです」(富田さん)
大企業では難しいが、人数の少ない組織ならば「社内行事」を社風として定着させる、という方法もある。「イノベーションでは、採用の段階で『社内行事がたくさんある会社ですよ』と示しています。自然とそれに賛同できる人が集まってきます」(富田さん)
また、スポーツビズの千葉さんは「世代によって、社内行事に抱いている感情が違うことも念頭に置いてほしい」と言う。「就職に対する満足度が高い人は社内行事を肯定的に受け止めている傾向があります。やはり、氷河期世代は満足度が低い人が目立ちますね。さらに、雇用形態によって社内行事へのモチベーションが異なりますから、このことも意識してほしいです。正社員、契約社員、派遣社員、パート、アルバイト、みんなが平等に参加できて、しかもフラットな関係で社内行事を楽しめるような工夫が必要です」(千葉さん)
前回、アンケート結果でも紹介したが、社内行事にまつわる企業の悩みの1つに「社員がどれだけ参加するか」がある。特に、レクリエーション的な社内行事は、半ば強制的にイヤイヤ参加させたため、本人もほかの社員も楽しめなかった……では、せっかくの行事が台無しになってしまう。
「自分の意思で参加してもらうことが大切です。当社でも運動会の時は実行委員が2週間前から、会社の入り口で出社してくる社員に参加を促すビラを配っていました。そういうPR活動はいいけれど、上司や先輩が部下や後輩に『絶対、参加しろよ』と強制してはいけません。それぞれプライベートの予定や家庭の事情があるのは当たり前。でも、本人が『参加したい』と思ったら、自分でやりくりして参加してくれますからね。その気持ちを引き出すようにすればいいのです」(富田さん)
スポーツビズの千葉さんも「社内行事は、会社のヒエラルキーをバラして行う必要があります」と、指摘する。
「実行委員には、さまざまな部署、役職、年齢の人たちが集まります。当然、部課長クラスの人もいるわけで、ついつい上司っぽく振る舞ってしまいがちです。でも、それが失敗のもとなのです。実行委員として行動するときは対等な関係になること。社員に参加を頼む時も『綱引きに出てもらいたいんだけど、お願いできるかな?』とお願いしに行く。目上の人がわざわざ自分のところに出向いてきて、お願いされたら、不思議と『参加しようかな』って気分になるものなんですよね」(千葉さん)
次回は、引き続き社内行事を成功させる第4、そして第5の鍵を見ていきます。
『月刊総務』2008年5月号 「イマドキ『社内行事』事情」より