もし、新型インフルエンザが最初に国外で発生した場合、グローバル企業にとっては迅速な対応が不可欠となる。海外拠点を持つ現地への的確な指示が重要だからだ。
「この際、感染した従業員には外出を禁じたり、駐在員に帰国を促したり、場合によっては帰国を停止するなどの措置がなされるため、従業員へのメンタルケアを忘れないでください。新型インフルエンザへの対策は、ローカルスタッフや契約社員など企業にかかわるすべての従業員について考えるよい機会にもなります。特に大企業においては“真のグローバリゼーション”におけるリスクマネジメント構築の基盤作りにつなげることができるでしょう」
一方、人の力で成り立つ中小企業でも、パンデミックのリスクは経営を直撃する問題となり得るため、静観はしていられない。あらためて従業員とその家族を守る意識を強め、取り組みへのリーダーシップを発揮してほしい。
規模の大小に関わらず、昨今では企業の従業員に対するメンタルケアが重要視されつつあるが、新型インフルエンザのパンデミックが発生した場合は、不安が大きくなるので、より慎重な配慮が必要となる。もっとも有効なのは、やはり事前の周知だろう。
「すでに事業継続のマネジメント構築に着手している企業では、新型インフルエンザも包含する取り組みの中で、従業員とその家族向けにハンドブックなどのツールを配布して、啓蒙活動を行っているところもあります。感染を防ぐための基本的な注意事項や、例えば家族に38度以上の発熱があれば出社しないといった、緊急時の取り決めが記載されており、これらはとても有効だと思います」
また、緊急時に向けた準備の1つに、予防用品や食料などの備蓄品をそろえておくことが挙げられる。予防用品には、機能性の高いN95マスクやうがい薬、消毒用のアルコールなどが考えられ、食料は外出が不可能な場合に役立つ。そうした物品をそろえること自体が、従業員の安心感を高める場合もあるという。
そして、力を入れておきたいのが、パンデミック発生時の従業員共通の行動指針の取り決めだ。あらかじめ企業が決めておくと対処しやすいことを、茂木さんに具体例として提示してもらった。
「新型インフルエンザは、発生するかしないかではなく、いつ発生するかが問題だといわれています。ですから、これからますます企業の対策が本格化するでしょう」。企業全体を見直すよい機会ととらえて、一歩を踏み出してみてはいかがだろうか。