アイデアパーソンになるための6つのこと(後編)『アイデアパーソン入門』インタビュー(1/2 ページ)

アイデアパーソンになるにはどうしたらいいのか。『アイデアパーソン入門』の著者・加藤昌治さんへのインタビュー後編。前編で聞いたブレストのコツに引き続き、後編では、加藤さんがビジネスパーソンの基本スキルと考えている「たぐる」を中心に話を聞いた。

» 2008年12月28日 15時00分 公開
[鷹木創,ITmedia]

 2009年1月に発売する『アイデアパーソン入門』。Biz.IDでもその一部を発売前に掲載している。著者の加藤昌治(かとう・まさはる)さんは、大手広告会社に勤務するビジネスパーソン。加藤さんが考える「アイデアパーソン」とは一体どういうものなのだろうか。

 前半に引き続き後編では、加藤さんがビジネスパーソンの基本スキルと考えている「たぐる」を中心に話を聞いた。

「たぐる」はビジネスパーソンの基本スキルに

st_sho01.jpg 「アイデア出しが苦手」「アイデアが浮かばない」――そんな人にぴったりな『アイデアパーソン入門』。あの『考具』の著者・加藤昌治さんの新刊です。

 「アイデアを出すには、既存の要素をいっぱい持っていることが大事」というのが加藤さんの持論だ。既存の要素とは、すでに世の中に出ている製品だったり、サービスだったり、そうした情報だったりする。こうした個々のパーツの組み合わせによって、新しいアイデアになる――というわけだ。

 そうした既存の要素をどうやって収集するか。加藤さんがたどりついたのが「たぐる」というキーワードだった。

 「情報収集の行動を意識するようになったのは、この1年半ぐらい。名前も付けないで勝手にやっていました。意識していなかったんだろうと思います。失敗も多かったですね」

 いいアイデアが出なかったのは、いい既存の要素を得られなかったから――。数年前に、既存の要素を「集められなかったこと」と「思い出せなかったこと」が原因だと気付いたという。「押さえる」「ぶつかる」「ほる」「思い出す」の4つの技で構成する「たぐる」も、集められなかった知らないことや、思い出せなかった知っていることをどうやって“たぐり”寄せるか、を考えた結果なのだ。

 「(たぐるようになってからは)それまでは自分の興味関心に従って無手勝流にやっていたのが、多少は戦略的になりました。具体的に言うと、興味がある分野の本はそれまで2冊しか買わなかったのが、5冊買うようになりました。それはちょっと“ほって”やろう、という意識があるからだろうし、“押さえる”にしてももう一歩やってやろうと。いろいろ知っていて損はないわけだし。人間は放っておくと好きなことしかやらなくなっていく。意外な出会いが減っちゃうから、たぐるで引っ張ってくるんです」

 「(広告業などの)アイデア稼業の人は(たぐる作業を)やらなきゃいけない」とする一方で「全員がやる必要はない」ともいう。「ただ、恐らく普通に働く人もアイデア的なことが必要になるはず。『読み書きそろばんパソコン』に加えて『アイデアを出す』ことも、ビジネスパーソンの基本的なスキルになるんじゃないのかな」

Web検索だけではダメ、人を巻き込むには「自分ごと化」

 検索エンジンの登場以降、知らないことを調べるのが簡単になった。『ビジネスパーソン入門』でも、たぐる手段としてWeb検索することを上げている。だがそうした検索しただけの状態では、企画につながるアイデアにならないのではないか。加藤さんはこう言う。

 「アイデアは自分の中からしか出て来ません。極論を言うと、自分が知ってることからしか出てこない。『ビジネスパーソン入門』では、わがままなアイデアを推奨していますが、そもそもわがままって自分の中からしか出てこないでしょう」

 「アイデアは既存の要素の組み合わせ」という加藤さんの持論に従えば、検索したりプログラムで組んだりしても、アイデアは生まれるかもしれない。「でも、いい意味での思い込みがない限り、そのアイデアは自分のものとして考えられないんじゃないかな。情熱かモチベーションか分かりませんけど、アイデアにそういったものが多少は入ってないと、企画にして前進させることは難しいんじゃないのでしょうか。それが、アイデアの“自分ごと化”という意味でもあります」

 Webで検索すれば、最新情報はすぐ分かる。「でもそれでは知っているだけ。コピー&ペーストでしかない」という。最新情報を調べたら、それをどうやって自分自身のものにするか、すなわち“自分ごと化”できるか。これがアイデアを広げたり、企画に進ませたりする上で重要なファクターなのだ。

 「自分に対してもそうだし、自分が何かを巻き込んでいく時に、相手にも自分ごと化してもらわないと進まない」。確かに他人のアイデアを他人ごととして聞いていると、「それいいね」だけで終わってしまうことがある。どうやって他人のアイデアを“自分ごと化”すればいいのだろうか。

 「面白いアイデアには乗っかる」のが第一歩。そのためにチームで作業するのも効果的だ。「アイデアの所有権、著作権ていうのかな。最初に言い出した1人にある感じがしますけど、みんなで議論したり、ブレインストーミングしたり、企画として肉付けしたりすると、“権利者”が増えていく。云い出しっぺの人だけのものじゃない」。そういう土壌が会社にあれば、ほかの人のアイデアも自分ごと化できるというわけだ。

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