解説編 すればするほど効果あり――法人営業が成功する秘けつとは?大口兄弟の伝説(1/2 ページ)

訪問先でひたすらお客の言うことを聞き、宿題を持ち帰る。宿題といっても、その場で答えられることがほとんどなのだが、わざと持ち帰るのだ――これが法人営業が成功する“秘けつ”なのである。

» 2009年01月28日 10時00分 公開
[森川滋之,ITmedia]

 前回から、「大口兄弟の伝説」編を解説しています。

 前章「震えるひざを押さえつけ」編では、どちらかというと営業担当のビジネスパーソン個人としてのテクニックや心構えについての解説が多かったのですが、「大口兄弟の伝説」では、営業チームや営業リーダーとしての考え方を中心に解説しています。

 今回は「大口兄弟の伝説」編の第3話「今度という今度はダメかもしれない」、第4話「オレはリベンジしたいんだ」、第5話「不運続き」について説明します。

法人営業はなぜ訪問する回数を増やすほど成功するのか

今度という今度はダメかもしれない

 2つのチームは、訪問先でひたすらお客の言うことを聞き、次回のアポを取り、宿題を持ち帰る。宿題といっても、その場で答えられることがほとんどなのだが、わざと持ち帰るのだ。

 これは個人的テクニックになりますが、リーダーとして指示したいことでもあります。売っているものにもよりますが、法人営業においては、「短気は損気」ということわざがぴったりと当てはまります。

 今の時代、商品やサービスの差はそれほど大きいものではありません。その中で購入を決めてもらうのは、営業の人間性です。しかし、実際には人間性といっても評価は難しい。となるとよく会う人、よく会いたいと思う人から買うことになるわけです。

 訪問回数を増やすのは、このためです。1回で決めようとしてはいけません。

 もう1つ。間を空けることで、うかつな受け答えを減らせます。そればかりか、じっくりと準備して、先方の期待以上の回答を次回に持って行くことが可能となります。さらに詳しい人間を手配して連れて行くこともできます。

 営業はステップで考えるべきなのです。

まず方法論、次に結果、そしてやる気を重んじる

今度という今度はダメかもしれない

 「そうかしら? 奇跡なのかしら? がんばってた当然の結果じゃないの?」

 さりげなく書いていますが、実は一番言いたかったことの1つです。「震えるひざを押さえつけ」でクオーターが起こした「奇跡」は必然だったと思うのです。

 営業経験のなかったクオーターに、和人は効果的な方法論を教え込みました。そして、結果が出始めてからは、自主性に任せました。それでクオーターはやる気になりました。最初に方法論を教え、次にやらせてみて結果を出させ、その後はやる気を重んじる。

 部下の育成法として、もっとも理にかなったやり方です。クオーターが早いタイミングで大きな結果が出せたのは、当然のことなのです。

極限状態で気をつけなければいけないこと

今度という今度はダメかもしれない

 「分かった。俊子。君の言うとおりだ。せめて、あいつらを最後まで信じきると約束する」

 大口兄弟を中小企業担当に回すことで、なんとか日本一を狙おうと考えた和人でしたが、結局は彼らを含めた営業所員全員を信じきること――つまり今のままで進めていくことを決心しました。結果として、この決断が日本一につながったわけです。

 和人はある意味極限状態に追い詰められていました。こういうときに小手先の対策を採るのは、実はもっともいけないことです。

 私自身も売り上げがないときに、本筋でない仕事を必要以上に受注したことがありました。そのときは良かったのですが、事業としての体力がなくなり、取り戻すのに数カ月かかり、その間はかなり絶望的な気持ちになりました。

 苦境のときには、もちろんいろんな手を打つべきですが、大方針を変えることだけは避けるべきだと思います。

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