不況こそ文書管理で生産性アップ――ボトムアップが鍵紙、時間、空間――3つの無駄をなくす文書管理(2/2 ページ)

» 2009年02月02日 12時00分 公開
[鷹木創,ITmedia]
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デジタル化は必須ではない――現場が混乱するなら

 文書管理が難しいのは導入の部分。アナログにせよデジタルにせよ、文書管理は新しいルールを導入することになる。「今までだってうまくやっていたのに、そんな文書管理なんか面倒なだけだ」とネガティブに思われないようにしたい。目的やメリットを分かりやすい形で説明するのはもちろん、なるべく面倒ではない方法を選ぶといい。

 例えば、昔の書類については新しい文書管理のルールを適用しないのも方法だ。新規に作り出した書類からルールを適用していくのである。ルールに則って文書を入力したら、インセンティブを用意するような社内キャンペーンも効果的だ。

 「入力」はシステムの影響も大きい。複合機やドキュメントスキャナなどを導入してデジタル化に取り組む場合、肝心のスキャンが面倒だと続かない。「複合機は共有なので、当然混んでいる。後回しになってやらなくなるパターンもあると聞く。ドキュメントスキャナについても紙詰まりが多かったり、操作方法が難しいと使わなくなってしまう」(キヤノンマーケティングジャパン広報)

 デジタル化については、「原本管理だけのためなら不要」(エプソン販売プロダクトマーケティング部の浅野英威さん)という。前述の矢次さんも「作成段階でデジタルな書類であればそのままデジタルのシステムを利用できるが、アナログの書類をデジタル変換しようとするとコストがかかる。極力抑えるのも方法だ」と、すべてをデジタル化する必要はないという意見だった。

文書管理をやるかやらないかは労働環境のせい?

 文書管理の考え方は、個々人が管理していた書類を会社のものとして管理するというもの。米国などの企業では労働流動性が高い。今日一緒に働いていた同僚が、明日になったら急にいなくなっていたということも少なくない。こうした環境で、属人的に文書管理していたら、担当者が辞めた瞬間に仕事が回らなくなってしまう。だからこそ、会社での情報共有の意識が強いのだという。

 日本国内に目を移すと、今でこそ転職や派遣労働などによる流動性が高まってきているが、これまでの労働者のほとんどが終身雇用制。1つの会社に定年退職するまで勤めるのである。現在ではジョブ・ローテーションの制度などを持つ会社も増えてきたが、以前はそれこそ営業畑、経理畑、総務畑といったその畑でのベテランになることを望まれてきた経緯もある。ともすれば、文書を残して情報共有するよりベテランならではの“あうんの呼吸”で仕事をする方が効率的だったというわけだ。

 とはいえ、今や国内の労働流動性も高まりつつあり、また最近では他社や他業種とのコラボレーションも増えてきた。文書管理を導入するのは、新しい労働環境に適応するためでもあるのだ。


会社の業務を知ることが文書管理、現場の暗黙知を共有すべし

 ここまで文書管理の大筋を説明してきた。詳細については次回以降に譲るが、書類の分別や運用ルールなど具体的な部分は、それぞれの会社の業務フローに依存する部分が多い。逆に言うと、これといった一般的なルールがないことが文書管理の難しさでもある。

 この難しさを前向きに考えると、文書管理とはとりもなおさず自分自身の業務フローを知る作業になる。「グループワークは暗黙知が増える」と言ったのはPFUの楠さんだが、文書管理に取り組むことで、こうした暗黙知を共有できれば、自然と業務効率の向上につながる。いるのかいらないのか分からない書類を捨て、どこに何があるのかが分かるようになれば、答えはもうすぐ分かるはず。

 それに作業を続けていくうちに、もしかしたら、社内で同じようなことに取り組んでいる人たちにもぶつかるかもしれない。会社ごとに大きく異なる文書管理、成功の秘けつは社内の成功事例を探ることだという。

 まずは現場の文書管理に取り組んでみるのがおすすめ。隣の部署にも伝播して、いずれは会社全体に――あなたが始めた文書管理がボトムアップのプロジェクトになるかもしれない。

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