救急車に乗るべきか乗らないべきか、それが問題だ現役医師がズバリ回答

夜中の急な発熱や激痛。救急車を呼んでも断られてしまいやしないか不安です――。

» 2009年05月14日 09時30分 公開
[仁科桜子(企画:ソフトバンククリエイティブ),Business Media 誠]

質問

 夜中の急な発熱や激痛。直接病院に電話をしても診療を断られてしまいました。病院はまだしも、救急車にも断られてしまいやしないか不安です。


 ご質問ですが、これは「救急車に断られてしまう」ということはありません。だって、日本の救急隊はどんな些細(ささい)なことでも国民からの要請があればひとまず行かなくてはならないからです。

 私の著書『病院はもうご臨終です』でもほんの少しご紹介しましたが、とにかくここ数年、タクシー代わりに救急車を呼んだり、病院が混んでいる時に救急車で行けば優先的に診てくれるだろうと思って軽症なのに救急車で来院するなど、あまりに目に余る患者さんが増えています。

 実際、私も何度もそのような例に遭遇しました。「ちょっと指先が切れたから」「のどに魚の小骨が刺さった気がする」なんて言って、夜間に救急車で運ばれた患者さんもいます。こんな要請でも、救急隊の方々はとりあえず行かなきゃいけないんですね。「気がする」っていうだけなら、私だって「人生なんだかツラい気がする」から救急車で運んでほしいよ!

 そして、救急隊のツラいところは、さらにその患者さんたちをどこかの病院に託さないと仕事が終わらないわけです。医者の側としては、夜中の戦場のような救急外来にいきなり救急車で指先からちょこっと血がにじむだけの人が運ばれて来たら、そりゃあ文句の1つも言いたくなります。

 しかし、可哀想なのはむしろ救急隊ですよね。「そりゃないだろう」ってな要請にも急行し、さらに医者から文句を言われつつも受け入れてもらわなくてはならない、まさに板ばさみです。まあもちろん、こういう悪質な例ばかりではなく、多くは本当に救急車で来ないといけないような重症の方ですが、少数であってもこのような的外れな利用をする方たちがいることで、本当に利用すべき人に迷惑がかかってしまうのは困りものです。

 とはいっても、実際に自分の症状で救急車を呼ぶべきなのか、それともタクシーで行くべきなのかを判断するのは難しい場合もあります。今回のご質問の場合は発熱や腹痛ということですから、度合いにもよりますが中には急を要するものもあるでしょう。

 すぐに行かなくてはいけないくらい重症だと思ったから救急車を呼んだのに、実はたいしたことがなくて怒られたとか、逆に無理してタクシーで行ったら「こんなに重症なのにどうして救急車を呼ばなかったんだ」ということになったり、ああ難しい。厳密には診察してみないと重症かどうかは分からないわけですから医者である自分だって判断しかねるケースはたくさんあると思います。

 さて、私のオススメは、「救急相談センター」。東京都が2008年に導入したサービスです。救急相談センターの主なサービスとしては、「医療機関を案内・応急手当をアドバイス・医療機関への交通手段を案内・必要な場合は救急車を出動(東京消防庁ホームページより)」とあります。なんて至れり尽くせりなサービスなんでしょ。

 ちなみにこれは119番ではなく、「#7119」に電話するそうです。私はまだ使ってみたことはないけど、なんだか良さそうですね。ただ、とっさの時にこの番号が思い出せるかしら。ちょっと不安。「シャープな119番」か、それとも「シャープ・ナイイク」か? うーん、イマイチ。紙に書いて首にでもぶらさげておこうかな。

本日の処方せん

  • 「救急相談センター」に電話(♯7119)

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仁科桜子(ドクトル・ピノコ)プロフィール

 女医。医大生時代には体育会に属しつつ、某社キャンペーンガールや大手塾講師など数々のバイトをこなす日々を過ごす。現在は、酒と体力だけには自信アリの外科系ドクターとして病院勤務。

ドクトル・ピノコ名義で「週刊ビジスタニュース」などにコラムを執筆している。2009年1月、仁科桜子(にしな・さくらこ)名義で『病院はもうご臨終です』(ソフトバンク新書)を発売した。


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