「未来の不安」をシミュレーションで解決する!あなたの不安、見積もります

仕事を計画通りに進めるコツは、仕事量やタスクごとの時間配分を事前に「見積もる(シミュレートする)」こと。シミュレーションによって1つの仕事に集中できるようになれば、無用な不安ともさよならできます。集中とシミュレーションを心理学の観点から考える新連載「あなたの不安、見積もります」が始まります。

» 2009年05月14日 12時00分 公開
[佐々木正悟,Business Media 誠]

ビジネスパーソンの不安ポイント

 手帳やスケジューラーに予定を登録するときに、一抹の不安を感じる。「月末だし、ちょうど忙しい時期かもしれない」「ほかの予定と重なるかもしれない」「急な締め切りの仕事が割り込んでくるかもしれない」……こんな不安、どうやったら取り除けるだろう?


 「23日の15時からでよろしいでしょうか?」

 そう尋ねられて、ちょっと不安が頭をよぎることがあります。23日の15時のカレンダーを見れば、確かにそこには空きがある。

 しかしだからといって、そこに「ミーティング」を入れてしまっていいのか? ミーティングには準備するための時間もかかる。移動するための時間もかかる。23日がやってきたときに、もしも1分でも惜しいほど忙しかったりすると、「なぜ今日の15時からミーティングなんかがある!」と腹立たしくなることがあります。でもこれでは、自分以外の誰に怒るわけにもいきません。

 このように、不安はふつう未来からきます。それも、先の読めない未来からやってくるものです。それならば、未来の時間を“見積もる”=シミュレートするツールを使うことで、不安を取り除くことができるはずです。

「今やるべきタスクリスト」を自動作成してくれるToodledo


 これは最近私がチェックして利用しているToodledoというツールです。無料で利用できるWebサービスのほか、Firefoxの拡張機能やiGoogleガジェット、有料のiPhoneアプリなども用意しています。

 このタスク管理ソフトには、非常に特徴的な長所があります。タスクの総時間を見積もることができて、しかもそれをもとに、1週間や1カ月単位の総タスク時間量を計算できるのです。

 さらにその見積もりをシミュレートした結果として、「今やるべきタスクリスト」を自動作成もしてくれたりします。



 見積もり時間は、1日単位で出すこともできれば、1週間単位で出すこともできます。3日も仕事を見積もれば、自分が毎日何時間仕事をこなせるのか、すぐに明らかになります。

 これが分かればかなりの程度まで「未来の自分の仕事ぶり」を読むことができるようになります。平均して12時間程度の仕事をしている人が、急に17時間も仕事をすることができるようにはならないので、仕事を先送りして、未来の時間をどの程度“食ってしまって”いいのかも分かるようになります。

 これが分かると、大事な仕事がきちんと終わるかどうか、十分な確度で分かるようになるため、大きな安心感の中で、仕事を進められるようになるわけです。

時間を見積もって、集中を実現する

 大きな仕事を引き受けて、それが終わるかどうかが「見えない」時というのは、大変に不安なものです。不安だから、がむしゃらにその仕事をやる。しかし、そのせいでおろそかになってやれなくなる仕事があると、そちらの方が今度は気にかかってきます。

 このように、注意を向ける先が一点に落ち着かず、身の回りを囲むいろいろな潜在的危険や潜在的可能性に振り回されてしまう心理状態は、常識的に考えても望ましくありません。ほどよく集中している状態とは、ちょうどこの正反対だからです。

 時間を見積もることで、多種多様な仕事を進めつつも、直近のデッドラインは守れるようにスケジューリングする。そのためにはどうしても、個々の仕事にどれくらいの時間をかけていけばいいのかを、見積もれることが必要です。実際に仕事をする前に、シミュレートできることが必要なのです。

 あれこれシミュレートしてみれば、うまくいくパターンを発見できます。そうすれば、個々の仕事に取りかかった際、自然とそれに集中できるようになります。

新刊のご案内

 「シゴトハッカーズ」「あなたの不安、見積もります」の筆者、佐々木正悟さんの新刊『残業ゼロの「1日1箱」仕事術』が発売になりました。

 次に何をすべきかは分かっている、材料もすべてそろっている、でも、なんとなく取りかかる気がしない……。仕事を前に、こんな状況でダラダラと時間を浪費してしまった経験は誰にでもあるでしょう。

 本書のテーマは、どうやって自分の中から「やる気」を引き出すか……といっても、気合いや根性を総動員するような「精神論」ではありません。

 ご紹介しているのは、最新の脳科学・心理学の知識に基づいた「正しい」モチベーションの上げ方なのです。


筆者:佐々木正悟

 心理学ジャーナリスト。専門は認知心理学。1973年北海道生まれ。1997年獨協大学卒業後、ドコモサービスに派遣社員として入社。2001年アヴィラ大学心理学科に留学。同大学卒業後、2004年ネバダ州立大学リノ校・実験心理科博士課程に移籍。2005年に帰国。著書に、『スピードハックス』『チームハックス』のほか『ブレインハックス』、『一瞬で「やる気」がでる脳のつくり方』、『やる気ハックス』などがある。「シゴタノ!−仕事を楽しくする研究日誌」にて「心理ハック」を連載中。ブログ「ライフハックス心理学」主宰。


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ