残業削減、休暇取得は社員の“課題”――ファイザー(後編)“有給&残業”攻略法(1/2 ページ)

前回ファイザーの残業削減への取り組みを紹介した。今度は有給休暇取得への取り組みについて聞いてみた。残業削減、有給休暇取得における大きな課題もあった。

» 2009年05月28日 14時00分 公開
[塙恵子,Business Media 誠]
photo 奈須野雅子さん(左)と海宝和養部長(右)

 金曜日の時短制やノー残業デーなど、残業削減の取り組みを積極的に行っているファイザー。残業についてここまで制度化をしているのならば、有給休暇の制度についても強化しているのではないだろうか。

 ファイザーでは有給休暇の取得をどのように推進しているのか、前回に引き続き、労政部の海宝和養(かいほう・かずやす)部長と、奈須野雅子(なすの・まさこ)さんに聞いた。


他社よりもプラス10日休暇が多い

 意外にも社員の有給休暇の取得率はあまり高くないという。

 その理由は特別休暇や休日の豊富さにある。例えば土日祭日とは別に「フレックス休日」として年5日の休日があるほか、いわゆる有給休暇と呼ばれる休暇とは別に、社員本人や家族の怪我や病気、子供のスクールイベントなどで年5日まで取得可能な「ファミリーサポート休暇」を有給の形で付与する。2001年に導入したファミリーサポート休暇は、順次活用枠を広げ、2009年の7月からはさらに体調不良や、妊産婦健診など医療機関での検査でも取得できるようになる予定だ。

 「勤続年数によって違いはあるが有給休暇の付与日数は、年間最高で20日。他社に比べてプラス10日、休日と特別休暇が充実しているため、なかなか有給休暇の取得にたどりつかない」(海宝部長)。有給休暇は1年繰り越せるのに比べて、特別休暇は1年でなくなってしまう。どうしても特別休暇を優先して使うため、有給休暇の取得にまでいかないのが現状のようだ。

絵を見ると有給休暇取得の促進につながる?

photo リフレッシュカレンダー

 一方で有給休暇の促進対策として、「ゆとりの日」というものを設けている。有給休暇を、休日や祝日と併せて年に3日「ゆとりの日」として有給休暇取得日を設定し、連休を確保することで、計画的な有給休暇取得を促進する制度だ。全社員対象として、暦上3連休のところに1日休暇を加え4連休にするなどの提案を会社側が行っており、これに加えて独自の「ゆとりの日」を用意している部門もある。

 また前回紹介したGPTW推進部では「リフレッシュカレンダー」を部署ごとに配布。左端に名前を書き入れ、それぞれの休暇予定日を事前に入れていくもの。一覧になっているため、部内のだれがいつ休暇を取るのかが事前に分かり、自分も休暇が取りやすくなる。カレンダーには、社員とその家族が描いた「休暇の絵」を入れ、有給休暇取得の促進に役立てている。休暇の絵はコンテストによって選ばれる。

 休暇の絵コンテストの狙いは2つあるという。まず、家族がコンテストに参加することによって、会社の休暇や制度を家族も巻き込んで興味を持ってもらう。家族に「どんな休暇があるの?」と聞かれ、初めてきちんと休暇の種類を確認し、各休暇の意味や目的を知ったり、休暇の多さを再認識する社員もいるそうだ。次に、子供の素朴な絵で社員に計画的な休暇取得を促す。楽しそうな絵を見て「早く帰ったり、計画的に休暇をとるために、効率よく仕事を終わらせよう」という気持ちになったと言う社員もいる。

男性社員が育児休職する

 前回も触れた通り、ファイザーでは仕事と子育てを両立する労働環境作りにも注力している。「育児休職をとった男性社員が、この10カ月で20人います」(海宝部長)

 ファイザーではそれまで育児休職するのは女性ばかりで、男性はほとんどいなかったという。本来休職は無給だ。男性が休職すると大きな収入減となることが多いため、必然的に女性が休職することになる。

 ファイザーで育児休職をとる人が増えた理由は、2008年に育児休職制度を改訂し、最大2週間は有給としたことにある。休職中の一部ながら、休んだ期間も給料が支払われることによって、男性でも育児休職をしやすくなった。男性が育児休職することで、女性への理解の促進にもつながる。「こういったロールモデルを多く作ることが、労働環境改善の早道ではないかと思う」(海宝部長)

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