――次は、ある程度本を読む習慣が付いている、中級者向けの読書術について、お話を聞かせてください。「勝間和代の『年収10倍アップシリーズ』を出した出版社社員の給料は10倍になったのか?」など、自己啓発本についての皮肉は、かなり強烈でしたね。
小飼 本は読むものであって、読まれるものではありません。誰かの本の“信者”になってはいけない。(何かこれはすごいと思う本があったら)立場が逆の本も必ず読みなさい、と言います。
――それは、いろいろな著者の本を読みなさいということになりますよね。逆に、ある一人の作家が書いた本をすべて読む、という読み方の人も多いと思いますが。
小飼 深く読めるようになるのは、広く読めるようになってからでいいんです。なぜなら、広さがないと、深さに広がらないから。深く読もうなんて、10年早いって言いたいね(笑)
――もう1つ、本に書き込んだり付せんを貼ったりしない、というのも意見が分かれるところです。
小飼 メモや付せんが、読むことの妨げになるのが良くないと思うので、メモを書き込んだり付せんを貼ったりすることを私は薦めていません。
――2回、3回と読むときもはらないんですか? 「あとで読もう」と思ったところに付せんをはる、といったことはしている人が多そうです。
小飼 最初に読むときは要らないでしょう。付せんを貼るなら、2回目以降に読むときでいい。1回目に読んで「ここはあとでもう一回読もう」と思ったときは、(新刊案内など、本に入っている)紙を挟んでおきます。だって買った本なんだもの、あとで読み返せばいいじゃないですか。
あとは……付せんを貼るな、書き込むな、というのは「古本屋に高く売れるように」というもくろみもあります(笑)。我ながら貧乏くさいですね。といいつつ、自分は不要になった本を古本屋にちゃんと売れていないので、床に積み上がっているんですけど。
――テクニック的なところでいくと、「Webを活用して読む」というのはイマドキですね。「読みながら書け」「tsudaって読め」という提案は、なるほどなと思いました。
小飼 これまでも本を読んで読書メモを取る人というのはいたはずですが、読んだ内容を書いても世に出す方法がなかった。そういう意味で、ブログやTwitterの登場により「読んで書く」ことができるようになったのは、読書の歴史の中ではけっこうな発明だと思うのです。
Twitterを薦めるのは、ためずに出す、まず出す習慣を付けることが大事だと思うからです。本棚も脳も、実はため込んでしまうと有効活用ができない。少し出すことによって、スムーズに必要なものが取り出せるようになるんです。
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