ガイガーカウンター比較――中国製「FJ2000」とロシア製「GAMMA」ガイガーカウンターガイド

ガイガーカウンターの性能や使い勝手などを比較するガイガーカウンターガイド。第3回の今回は、中国製「FJ2000」とロシア製「GAMMA」の2機種を紹介する。

» 2011年07月08日 11時00分 公開
[日本放射線監視隊,Business Media 誠]

 ゴールデンウィーク前に入手できたガイガーカウンターの性能や使い勝手などを比較するガイガーカウンターガイド。第3回の今回は、中国製「FJ2000」とロシア製「GAMMA」の2機種を紹介しよう。

お断り

 本来こうした比較は、新品で行うべきもの。しかしほとんどの製品をネットオークションで購入した結果、なかには中古や倉庫で眠っていたデッドストック、被災地で使われた可能性のある製品もある。このため本来の性能を発揮できなかった製品もあるかもしれない。あらかじめお断りしておく。

 ポイントとしては、(1)測定値が安定しているか、(2)使い勝手は良好か、(3)線量当量率(μSv/h:1時間に放射線によって現れる影響の度合い)と累積線量当量(μSvまたはmSv)のどちらも測れるか、の3つ。学術目的というよりは、ボランティア活動や被災地に住む人々、風評被害で苦しんでいる観光地の人々の使用など、福島第一原発事故を前提に各製品を検証している。

 ほとんどの製品で日本語マニュアルが付属していなかったため、製品の呼び名やボタンの名称などで実際の製品と異なる可能性がある。また仕様に関しても、付属マニュアルの仕様に疑問を感じたものは、テストした結果から導きだしたものを記載した。さらにサイズや重さに関しても、電子ノギスやはかりで測った実測値を書いている。このため本書でのみ通用する個所が多々あることを、あらかじめお断りしておく。



割り切って使うのにはもってこい――FJ2000

 FJ2000はγ線の測定が可能で、線量当量率の最小は0.0μSv/hから。小数点2ケタまで表示できるほかの液晶搭載製品からすれば劣るが、ボランティア活動や東北方面への一時的な旅行などであれば、小数点2ケタの表示は必須ではない。小型で誰にでも使いこなせるという点では、一定の評価ができる製品だ。

FJ2000
線量当量率の測定方法
(1) 電源ボタンを押して電源を入れる
(2) 電源が入ると即、測定を開始する
(3) 測定が終了したら電源ボタンを押して電源を切る
スペック
測定モード 線量当量率、累積線量当量
測定範囲 線量当量率(0.1μSv/h〜99.99mSv/h)
累積線量当量(0.0μSv〜99.99mSv)
サイズ 92×55×18ミリ
重さ 約91グラム
電源 単四形×2本
※サイズや重さはカタログ値より実測値を優先

 中国製のFJ2000は、MODEボタンで線量当量率と累積線量当量を切り替えるだけ。その表示も小数点1ケタまでと、実に割り切った製品だ。そのぶん、初心者でも操作に迷うことがないだろうから、考えようによっては悪くない。

 1つとまどう点があるとしたら、電源を切っても液晶表示が消えず、数値が変化することだけだろう。ただ、測定はしていないようで、数値は落ちる一方。液晶表示を完全に消すには、本体から電池を抜く必要がある。

 ガイガー・ミューラー管は本体右側に搭載。ケタ数の問題で高い放射線をだす物質でないと表示の数値がなかなか上がらなかった。製品自体のつくりは堅固で、多少の高さなら落としても破損することはないはずだ。本体裏にはベルト止めもついており、はさんでボランティア作業などを行うにも都合がよい。汎用性はないが、選択肢の1つに入れてもいいだろう。



γ線だけ測れます――GAMMA

 ロシア製の「GAMMA」は、その名が示すとおり、対応する放射線はγ線のみ。興味深いのは、かなり大きなガイガー・ミューラー管を採用しており、このガイガー・ミューラー管自体に金属(アルミ箔)を巻きつけ、β線を遮断する仕組みになっていること。すなわちこの製品は、名前どおりγ線測定専用ということである。なお、電源のオン/オフ、警告音の音量がほかと比べて際立って大きく、使用にあたっては配慮が必要だ。

GAMMA
線量当量率の測定方法
(1) 機器上部のボタンを長押し、電源を入れる
(2) 電源が入ると即、測定を開始しするので、液晶左上の値をチェックする
(3) 4回計測すると平均値を表示する
(4) 測定が完了したら機器上部のボタンを長押し、電源を切る
スペック
測定モード 線量当量率
測定範囲 線量当量率(0.01〜9.99μSv/h)
サイズ 130×横70×高さ26ミリ
重さ 約146グラム
電源 9V形×1個
※サイズや重さはカタログ値より実測値を優先

 GAMMAはサイズが大きく、つくりも堅固。このあたり、いかにもロシア製らしい。電源のオンとオフ、リセットを兼ねたボタンが1つだけと、構成も実にシンプル。線量当量率の測定範囲は0.01〜9.99μSv/hで、液晶の左上下に線量当量率と平均線量当量率を表示する。

 この製品の1つのウリに、強い放射線を検知するとすさまじいほどの警告音が鳴る、というのがある。これは製品の性格上、理解できるのだが、電源オン/オフ時の音量まで大きいのは正直どうかと思う。それから、中古だからかもしれないが、液晶を取りつけた基板とガイガー・ミューラー管が接触しないように、紙が間に挟まっていた。新品でははたして……。



連載「ガイガーカウンターガイド」について

 本連載は6月9日に発売した「ガイガーカウンターGuideBook」を基にした連載です。

ガイガーカウンターGuideBookを読む前に

 本書の目的は、福島第一原発事故を受け、ガイガーカウンターの仕組みの理解と製品選びの知識を高めることだ。このため本書を読んだあと、実際に製品を購入し、放射性鉱物などを使った動作確認を考える人もでてくるだろう。

 しかし本書ではこれをすすめない。なにも知らない家族が触って被ばくするかもしれないし、子供やペットが誤って放射性物質を飲み込んでしまう可能性だってある。本書を読めば放射性物質の知識は少なからずつくだろうし、それ以上のテストは不要であろう。動作確認なら環境測定だけで十分なはずだ。

 放射線の影響は、大人より子供のほうが受けやすい。そして放射線の影響は、いつでるのか分からない。数年後、自分の子供の被ばくが判明し、後悔しても遅いのだ。もちろん、以前から鉱物採集やウランガラスのコレクションを趣味としている人に、いまさら入手するなとはいえない。こういう人は取り扱いや管理に関しては十分な知識をもっているだろうから、そこはもう自己責任の世界である。とにかく放射線は目に見えない危険な存在なのだ。興味半分で手をだすことだけは、絶対にやめてほしい。


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