ビジネスホテルでの短期滞在という「準ノマドワーク」(マルチディスプレイ&キーボード編)脱ガンジガラメの働き方(1/3 ページ)

1週間単位でビジネスホテルに短期滞在し、仕事をこなすことの多い筆者。準ノマドワークとでも呼ぶべきこの作業環境を構築するためのTipsを、何回かに分けて紹介する。今回は「マルチディスプレイ&キーボード編」。

» 2011年08月22日 18時10分 公開
[山口真弘Business Media 誠]

 せっかくフリーランスという立場なのだから、場所に縛られずにあちこちで仕事をしてみよう──と思い立ち、全国各地のビジネスホテルに1週間単位で短期滞在(5日〜10日)し、仕事をこなすという試みを始めたのが2010年春のこと。

 それから1年、まさかこのような大きな事故が発生し、ノマドワークが否応なしに注目されるようになるとは想像すらしていなかった。

出先で仕事を完結させるために

 さて、この「ノマド」と呼ばれるワークスタイルは、たんなるモバイル作業と何が違うか。ずばり「出先で仕事を完結させる必要がある」ことだろう。外回り先や出張先でモバイルノートを開いてメールを片付けたり、Excelを開いてデータをいじるのは、必要に迫られて仕事の一部を外出先で処理しているだけであって、ノマドとはちょっと違う。主な作業環境はあくまでオフィスや事務所(以下「メイン環境」と記述)であり、外出先での作業は副次的な位置づけになるからだ。

 これに対してノマドは、すべての作業を出先で行うことが特徴である。「面倒な作業はオフィスに戻ってからじっくり片付けよう」ではなく、出先で作業を完結させなくてはいけないわけだ。そのためには、メイン環境がそなえる機能の大部分を、出先に持ち出して再構築する必要がある。とはいえ、物理的にすべての環境を持ち歩くのは不可能なので、いかにコンパクトな構成でメイン環境同様のオフィスを再構築できるかがポイントになる。本稿では、筆者の考えるノマドな環境を何回かに分けて紹介していきたい。

 なお、一般的に定義されるノマドは、外出先のカフェやレンタルスペース、ビジネスホテルなど場所を問わないことが特徴だが、筆者の場合は主にビジネスホテルでの作業に限った。そのため、一般的なノマド記事によくある電源とネット回線の確保については触れなかったりと、世間で言うところのノマドの定義とは若干ずれた「準ノマドワーク」とでも呼ぶべきスタイルであることを、あらかじめご了承いただきたい。

「マルチディスプレイ」を構築する(その1:Synergyを使う)

 ライターという筆者の職業上、ほとんどの作業をPC上で行うことから、快適な入力環境はなによりも重要になる。IMEやエディタ、使い込んだ辞書などはメイン環境と同じものをもう1セット揃えるとして、筆者的に譲れないのは「マルチディスプレイ」だ。

 筆者はメイン環境、つまり自宅ではトリプルディスプレイで作業をしており、別のディスプレイを見ながら書き物をする習慣が定着している。外出先でノートPCを使って作業をする場合にいちばんに感じる違和感はここであり、ノマドと呼べる環境を構築するからには、マルチディスプレイは是が非でも実現したいところ。3画面は無理だとしても、2画面はなんとか確保したいところだ。

 もっとも手軽にマルチディスプレイ環境を構築するには、USB接続のサブディスプレイを用いるのがベターだ。有名なのはセンチュリーのplus oneシリーズ(例えばLCD-10000Uなど)や、アイ・オー・データ機器の「LCD-USB10XB-T」といった製品だ。ただ、これらの機器はサブディスプレイ以外の用途に使うことはできず、また解像度はともかく画面サイズが一昔前のネットブック程度であることから、個人的にはいまいち食指が動かない。

「Synergy」を使って2台のノートPCのキーボード/マウスを共有しているところ。といっても見た目はただ2台のノートを並べているようにしか見えないのだが、この状態で右のVAIO Xのマウスポインタを左のThinkPadのトラックポイントで移動させることができる

 筆者が現在のところ使っているのは、ノートPCをもう1台用意し「Synergy」を使って擬似的にマルチディスプレイ環境を構築する方法だ。

 この「Synergy」は、LAN内にある別のPCとキーボード/マウスを共有できるソフトで、Synergyを導入したノートPCを2台並べれば、1台のキーボードとマウスで両方のPCを操作できる。つまり、2つの画面の一方で情報を参照しながら、もう一方で入力作業を行うといった、擬似マルチディスプレイとでも言うべき環境が構築できるのだ。

「Synergy」の設定画面。このキャプチャ画像では実際の配置と左右逆になっているが、共有する2台のノートPCの左右配置を設定することで、マウスポインタが画面をまたいでスムーズに移動できるようになる。ただし画面間でのウィンドウの移動はできない
VAIO X。iPadとほぼ同じ軽量さということもあり、筆者にとっては予備機材としての利用が主だ

 「擬似」と書いたのは、本来のマルチディスプレイと違い、画面をまたいでウィンドウを移動できないためだ。そのためPhotoshopのパレットをサブウィンドウに置くといった使い方はできないのだが、そのかわりに2台のPCでCPUの負荷が分散されるという、通常のマルチディスプレイにはないメリットもある。サブ画面で動画再生などCPUに負荷がかかる作業をしながらメイン画面で作業をする場合でも、メインの作業に影響をおよぼすことがないのだ。まあノートPCを2台並べてキーボードとマウスを共有しているだけなので当たり前といえばそうなのだが、実際に使ってみると、これがなかなか快適だったりする。

 また、万一メインPCが故障するなどの事故が発生した際、サブ側のPCをメインに回して急場をしのげる冗長性の高さも、ノマド向きだと言えるだろう。そもそもがノートPCということで、USBサブディスプレイの難点である画面サイズや解像度についても、自由度が高い。筆者は試していないがWindowsとMacでの共有もできるので、汎用性の高さも折り紙つきだ。難点は設定がやや面倒なことくらいだ。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ