NASAご用達のサバイバルフーズってどんな味?防災・防犯ラボ(2/3 ページ)

» 2011年11月01日 11時00分 公開
[シックス・アパート 中山順司,Business Media 誠]

潜水艦搭載用の軍用食料として開発したものだった

ナカヤマ NASAが採用しているということは、(災害時の)非常食ではなく宇宙食として開発したのですか?

藤枝さん もともとは米ソ冷戦時の潜水艦に搭載する軍用食料として開発しました。当時の潜水艦は一度潜ると長期間浮上できません。当時の潜水艦には冷凍・冷蔵設備が十分ではなかったので、そういう環境でも(1)常温保存が可能で(2)調理が不要、かつ(3)軽量でコンパクトで(4)栄養バランスに優れている食料を必要としていたのです。

 なんと! そういう背景があったんですか……。


藤枝さん 軍用として開発し、宇宙食に発展。そして災害時の非常食に応用するようになったわけです。本格的な登山用に使う場合もありますが、米国内ではマウンテンハウスブランドとして一般的なアウトドア用にも使用しています。

ナカヤマ 商品やサービスには大抵キャッチフレーズがありますが、「NASA採用」は最強の部類に入りますよね? 反論の余地が一切ないというか、無条件にひれ伏すというか。失礼ですが、放っておいても売れますよね?

藤枝さん おかげさまで、多数お問い合わせをいただいています。でも、いろいろと苦労もあるんですよ。

「非常食は不味くあるべき」という思い込み

ナカヤマ 苦労ですか? 変な話、引き合いも多い気がするのですが。

レトルトタイプの非常食(イメージ)

藤枝さん はい、確かに大きな災害後は注文が殺到することが多いです。しかし本来非常食は、平時に計画的に用意するものだと考えています。ですが平和なときは、こちらから営業をしても危機感を煽る印象を与えるだけで「今すぐ必要のないもの」というファイルに分類されてしまいます。災害後はさらに営業しにくいですね。業界の宿命なのかもしれませんが。

ナカヤマ 販売の仕方が難しい商品なんですね。

藤枝さん 「非常食なのに味が良すぎる」とお叱りを受けることもあります。

 美味しくて何が悪いんでしょう? ちょっと不思議です。


藤枝さん 年配の人でまれにあるのが、「非常食が美味しいのは不謹慎だ」という意見です。昔の非常食は炭水化物系の乾きモノが一般的で、ボソボソしていて味もそれなりでしたよね? ところがサバイバルフーズは手前味噌になりますが、すごくおいしいんです。予備知識なしに食べたら、普通の食事と信じてしまうほどの味が再現できます。それで、非常時にこんな美味しいものを食べるとは、ぜいたくすぎるということのようです。

 10数年以上も前ですが「うますぎて、けしからん」って言われた時はビックリしました。でも、非常食だっておいしい方がいいですよね?

ナカヤマ はい、美味しいほうがいいです(笑)。

カレーは断念。雑炊を専用開発

非常食用カレーのイメージ

ナカヤマ シチューやクラッカーが主力製品ですが、日本向けの食事はありますか? 豚汁やカレーなどは日本人の好みに合うと思うのですが。

藤枝さん カレーは挑戦したことがあるのですが、断念しました。日本人好みの味を生産サイド(アメリカ)で忠実に再現することが難しく、味の面で課題をクリアできませんでした。代わりではないですが、日本の料理研究家にレシピを依頼して雑炊を開発しました。

ナカヤマ 確かに雑炊にはシチューっぽさがありますね。でも、雑炊って鍋のシメか病気の時くらいしか食べない印象があります。

藤枝さん 雑炊はけっこう有能ですよ。水分が多いのでのど越しも良く、老若男女誰でも食べやすいメリットがあります。しかも主食(米)とおかず(野菜や肉)が同時に取れて、栄養面でも優れています。

ナカヤマ なるほど。では、時間の経過とともに味が犠牲になったり、栄養素が劣化するといったことは?

藤枝さん 導入を検討する企業の方も気にされる点ですが、味も栄養も、まったく問題ありません。

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