iPhoneがハザードマップに!? 「ARハザードスコープ」を使ってみた防災・防犯ラボ(3/3 ページ)

» 2011年11月30日 11時00分 公開
[シックス・アパート 中山順司,Business Media 誠]
前のページへ 1|2|3       

開発のキッカケは「AR技術で人助けをしたい」

 せっかくなので古川さんに、ARハザードスコープ開発のキッカケなど、気になることを幾つか聞いてみました。

ナカヤマ ところで、ARハザードスコープはどのような経緯で生まれたんですか?

古川さん 東日本大震災後のある日、先輩とランチしていたときの会話が発端でした。ARはエンタメ分野での利用が中心なのですが、私たちが得意とする技術を人の役に立つことに生かせないか? という話になったんですね。話題は自然と防災になり、ARと防災を絡めた企画を考えることになりました。

ナカヤマ 2011年10月に発表(ダウンロードは今後予定)できたということは、約半年で形になったということですね。開発中は、どんなことで苦労されました?

古川 浸水の深さをどう直感的に表すかで議論しました。例えば、浸水5メートルというメッセージがパッとイメージできないという問題です。ごく一般の方が「浸水5メートル」といわれても、とっさにどれくらいの高さなのか、分かりにくいんですね。

ナカヤマ 確かに、5メートルを超えると「よく分からないけど、ずいぶん高いなあ」くらいにしか思えませんものね。

古川さん ですので、最初は防災(ボウサイ)にひっかけて、棒を持ったサイのキャラクターを登場させようかという案も出ました。でも、今度はサイの大きさってよく分からないし、サイが立ち上がった高さはもっと分かりにくいという別の問題が出てきてしまって……。で、紆余曲折の結果、最終的に無難なヒト型アイコンを使うことになりました(笑)。

ネットワークに頼らないインストール版も検討中

ナカヤマ 今後の展開は?

古川さん 現在はまだ東京都の千代田区しかカバーできていないので、いずれ全国版を作りたいです。ただ、そのためには各都道府県自治体の協力が欠かせません。自社だけで進めることはできないので、そこまでいくにはちょっと時間がかかるかもしれません。ますは関東版、関西版といった広域版の完成を目指します。

ナカヤマ では最後に、今後の課題は何でしょう?

古川さん どこでも誰にでも使っていただきたいので、カバーエリアを広げていくことが最大の課題です。それともう1つの課題が、災害が起きた緊急時にきちんと使えるようにすることです。ご存じのように、東日本大震災直後は携帯電話の3G回線がまひしたので、そういった状況で問題なく作動するかは大きな課題ですね。ネットワークに頼らないインストール版も検討しています。

ナカヤマ 今日はどうもありがとうございました。個人的にぜひほしいアプリですので、1日も早いリリースを楽しみに待っています。


 印刷した紙のハザードマップを常時携行するのは、正直現実的ではないと思っていました。折り畳むパンフレット状の物を自治体から配布されたこともありますが、「どうせ持ち歩けないし……」と棚の肥やしにしてしまったことも。でも、こういったアプリで持ち歩けるなら重さも気にしなくてよいので助かります。

関連リンク

先進的な3次元ビジュアライゼーション技術を軸に、CG/VR(バーチャルリアリティー)コンテンツビジュアルソリューション自社ソフトウェア製品、スマートフォンアプリ、ARソリューションなど、オリジナリティー溢れる商品、サービスを、さまざまな分野へ提供している

全国のハザードマップ公表状況をまとめたポータルサイト


著者紹介:中山順司(なかやま・じゅんじ)

 シックス・アパート株式会社 / スキナヒト製作所 所長。1971年生まれ。Covenant College(米国)卒業後、携帯電話キャリアでマーケティングと営業に携わり、2000年にネット業界に転身。旅行予約サイト(現楽天トラベル)で観光旅行コンテンツビジネスを立ち上げ、その後始めた個人ブログがキッカケで、ブログソフトウェアベンダーのシックス・アパートに(現職)。

 2010年12月、フツーの男女のフツーの出会いをプロデュースすることに特化した、世界一マジメな恋愛インキュベーション・プロジェクト「スキナヒト製作所(β)」を設立。


前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ