iPadを接続して使うドッキングスキャナ「iスキャミル」。このiスキャミルを使いながら、最新のポータブルスキャナのトレンドや、製品選びのポイントについて見ていこう。
キングジムが発表した、iPad専用のスキャナ「iスキャミル」。本体をDockに見立てて上部にiPadを接続。専用ユーティリティを用いることで、スキャンした文書データをそのままiPadのカメラロールに保存できるというユニークな製品だ。
本製品に限らず、昨今では紙資料をデータ化するための製品として、PFUの「ScanSnap」シリーズをはじめとするドキュメントスキャナ、さらに本製品の従来モデルに相当する「スキャミル」などのポータブルスキャナなど、さまざまな種類の家庭用スキャナが目白押しだ。また、スマホを簡易スキャナ化するカメラアプリも定番になりつつある。
これらの背景には、紙資料を処分してすっきりさせたいというニーズがあるのはもちろん、Evernoteなどにデータを保存してスマートフォンから容易に取り出せるようにしたいというクラウドブームの影響もありそうだ。今回は「iスキャミル」の実力チェックに加え、これらスキャナ製品選びのポイントについて、さまざまな視点から見ていくことにしたい。
「iスキャミル」がユニークなのはその挙動だ。まずは動画をご覧いただこう。
いわゆるフラットベッドタイプのスキャナを含め、スキャナと名のつく製品にはさまざまな種類があるが、このようにデータ化のプロセスを可視化した製品はこれまでなかった。もちろん「可視化」といっても擬似的に見せているだけではあるが、原稿がiPadの中にスルスルと入っていくかのようなインタラクティブな動きは使っていても面白いし、分かりやすさという意味でも秀逸だ。iPadの画面の大きさをうまく生かしたこの挙動、なかなかのアイデアといっていいだろう。
そもそも、これまでのポータブルタイプのスキャナは、原稿の読み取り結果の確認方法に難があった。というのも従来のポータブルスキャナの多くは、本体に液晶画面を持っておらず、読み取り後にUSB接続もしくはmicroSD経由でPCにデータを転送しなければ、読み取り結果を確認できなかったからだ。何十枚もスキャンしたあとにPCにデータを転送して確認したところ、どれも斜行していたり、色味がおかしかったり、あるいは表裏を間違えていて全部真っ白だったりということは、十分あり得たわけだ。
今回の「iスキャミル」も、従来製品と同じく画質面ではドキュメントスキャナに及ばないのだが(詳しくは後述)、読み取り結果をiPadの大画面ですぐに確認できるため、スキャンしたデータがまるで使いものにならないという致命的なミスは回避可能。PCが不要で使用でき、iPadさえあれば本体内にデータを直接保存できることも評価していい。
ちなみに本製品の従来モデルに相当する「スキャミル」は、本体に2.4型のカラー液晶を搭載することで読み取り後のチェックをPCレスで行えることが特徴だったが、画面サイズが一般的な携帯電話よりも小さい2.4型ときては、さすがに使い勝手はよいとは言えなかった。その点、9.7型のiPadに表示できるというのは、完全な原寸大ではないにせよ、実用性は高い。やや使い古された表現ではあるが「ポータブルスキャナ2.0」と言っていい製品だ。
と、「iスキャミル」のすぐれたポイントを紹介したが、これは従来のポータブルスキャナと比べた場合の話で、ドキュメントスキャナもひっくるめて比較検討すると、何ができないのかが見えてくる。本製品の仕様面を見ながら、ひとつずつチェックしていこう。
解像度は300dpiで固定となっており、変更はできない。また読み取りは片面のみで、保存形式はJPGだけだ。読み取った原稿をiPadのカメラロールに保存する以外に、加工や補正などの機能はいっさい持たない。保存後は別のアプリを使ってよろしくやってね、という割り切ったスタンスだ。PDFに対応しないことからOCRなどの機能も備えない(OCR機能追加のアップデートを予定しているとのことだが、いまのところ詳細は不明)。
最大読み取りサイズは約216×356ミリ。つまりA4サイズ大だ。キャリアシートを用いてのA3サイズの原稿の取り込みや、長尺モードでのスキャンは行えない。辺が50ミリ以下の小さな原稿については添付のスキャン用シートにはさみ込むことで読み取りが行える。
背面に給電用のUSBポートを備えており、iPad付属のUSB-AC電源アダプタを用いてUSBケーブルでコンセントに接続する。ドキュメントスキャナのようにPCに直結して読み取りが行えるわけではないので注意したい。ちなみに本体の電源をオフにした状態ではiPadの充電も行えるので、充電スタンドとしての役割も果たす。
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