年収440万円、独身の場合は? 節税のコツが分かる税金の話大増税時代(3/6 ページ)

» 2012年02月06日 17時45分 公開
[奥川浩彦Business Media 誠]

各種控除は節税の最重要ポイント

 (2)給与所得−各種控除=課税所得の各種控除が、家族構成などの差を税金で補う部分だ。専業主婦や年収が103万円以下の妻がいると配偶者控除、高校生の子供がいると扶養控除、生命保険に入っていると生命保険料控除といった形で税金が少なくなる仕組みだ。平成23年(2011年)の主な控除は以下の通り。

控除名 金額 概要
基礎控除 38万円 全員が一律に受けられる控除
配偶者控除 38万円 所得が38万円(所得控除前で103万円)以下の配偶者がいると受けられる控除
配偶者特別控除 〜38万円 所得が38万円を越え76万円未満(所得控除前で103〜141万円)の配偶者がいる場合の控除
扶養控除 38万円+α 高校生以上の子供や親の面倒を見ている人が対象となる控除。大学生、70歳以上は増額
寡婦控除 27万円+α 夫と死別、離婚した女性のための控除。条件により増額
寡夫控除 27万円 妻と死別、離婚し子を扶養、所得500万円以下の男性のための控除
社会保険料控除 その年の支払額 年金や健康保険、雇用保険を納めた分の控除
生命保険料控除 〜5万円 生命保険の支払いがある人が対象となる控除
地震保険料控除 〜5万円 地震保険の支払いがある人が対象となる控除
医療費控除 その年の支払額−10万円 年間の医療費が10万円を超えた分に対する控除

 実際の控除の例を独身の人と妻子持ちの人で比べてみよう。独身で生命保険に入っていない人が受ける控除は基礎控除の38万円のみ。これに対し、専業主婦の奥さん(控除額=38万円)と高校生の息子(同38万円)、65歳の母親(同38万円)がいて、生命保険を10万円以上支払って(同5万円)いると基礎控除(同38万円)を加えた157万円の控除が受けられる。所得により税率は異なるが、仮に税率が10%の場合、控除額に119万円の差があるので納税額は11万9000円の差となる。毎月1万円手取りが増える計算だ。それぞれの控除の内容も確認しておこう。

配偶者控除が抱える「パートの年収103万円の壁」

 配偶者は一般的に妻を指すが、妻が稼いで旦那が専業主夫をしている場合は旦那が配偶者控除の対象となる。控除対象となる配偶者の条件は稼いで納税する人(納税者)と「生計を一にしている」こと、年間の所得が38万円以下であることなどがある。

 控除の要件でよく出てくる言葉が「生計を一にしている」だ。同居している場合はもちろん、自分自身が単身赴任している場合や地方の大学にいる息子も「生計を一にしている」として扱われる。要するに同じ財布で生活していれば、離れて住んでいても要件を満たしていることになる。

 年間の所得が38万円以下というのは、先ほどの式(1):給与の収入金額(年収)−給与所得控除=給与所得に出てきた給与所得控除後の金額が38万円以下という意味で、給与所得控除は最低65万円なので年収にすると103万円以下となる。

  • 103万円(年収)−65万円(給与所得控除)=38万円(年間の所得)

 よく言われる「103万円の壁」がこのことだ。パートの年収が103万円以下なら、まったく働いていない専業主婦と同じ扱いとなり、旦那は配偶者控除の38万円を受けられる。

年収141万円までは対象となる配偶者特別控除

 一方、妻の収入が103万円(所得で38万円)を越えると配偶者控除がなくなり、旦那の税金が増えて実質はマイナスになるかというとそうでもない。103万円を越えると配偶者控除がなくなった代わりに配偶者特別控除という制度がある。妻の収入が103万円を越え徐々に増えても、141万円までは旦那の控除が徐々に減る仕組みだ。配偶者特別控除は旦那(控除を受ける納税者)の所得が1000万円以下(年収で約1230万円以下)という条件が新たに加わる。収入、所得、控除額は以下の表となる。

配偶者の収入 配偶者の所得 控除額
103万円〜105万円未満 38万円〜40万円未満 38万円
105万円〜110万円未満 40万円〜45万円未満 36万円
110万円〜115万円未満 45万円〜50万円未満 31万円
115万円〜120万円未満 50万円〜55万円未満 26万円
120万円〜125万円未満 55万円〜60万円未満 21万円
125万円〜130万円未満 60万円〜65万円未満 16万円
130万円〜135万円未満 65万円〜70万円未満 11万円
135万円〜140万円未満 70万円〜75万円未満 6万円
140万円〜141万円未満 75万円〜76万円未満 3万円
141万円以上 76万円以上 0円

 例えば妻の収入が113万円になった場合、配偶者特別控除は31万円。旦那の控除額が7万円減るので税率10%の旦那なら所得税は7000円増えることとなる。住民税の増税分を加えても9000円なので、妻の10万円分の働きがマイナスになることはない。妻の収入にも税金が掛かるようになるが、それでもマイナスになることはない。

 旦那の所得が1000万円を超えると話は別で、妻の年収が103万円を越えると38万円の控除がゼロになる。高額所得者である旦那は税率も23%となり所得税は9万円近く増えることとなる。

子ども手当とは別にもらえる扶養控除

 扶養控除は配偶者以外の家族が対象となる。一般的には子供と親がいると受けられる控除で、生計を一にしていて所得が38万円以下(年収103万円以下)という条件が付く。控除額は38万円。平成23年(2011年)から条件が加わり12月31日の年齢が16歳以上(高校生以上)となった。2010年までは中学生以下も扶養控除の対象だったが、中学生以下は子ども手当を支給することとなったため、その財源として中学生以下の子供を持つ家庭(納税者)の扶養控除が廃止となり、増税している。

 大学生の子供がいる場合(19歳以上23歳未満)は特定扶養親族として25万加算され63万円の控除が受けられる。大学生がいるとお金が掛かるから税金をさらに減らしましょうということだ。これも2010年までは高校生、大学生が対象だったが、公立高校の授業料無償化の財源として高校生は対象外となり増税している。

中学生以下の控除38万円と高校生の控除25万円が廃止となり、増税となった

 70歳以上は老人扶養親族として同居していると58万円の控除、別居だと48万円の控除となっている。これも高齢者の面倒をみるのは大変だろうということで控除額が上乗せしている。

区分 年齢条件 控除額
一般の扶養親族 下記以外 38万円
特定扶養親族 19歳以上23歳未満 63万円
老人扶養親族 同居老親など 70歳以上 58万円
同居老親など以外 70歳以上 48万円
インフレ時代の確定申告

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