65万円の控除を青色申告で得る“超”具体的な方法(やよいの青色申告編)イチから分かる確定申告(1/4 ページ)

いよいよ連載も佳境。今回は、簿記などの知識のない人が青色申告特別控除の65万円をゲットする方法を考えていこう。まずは「やよいの青色申告」を使って実際に入力してみる。

» 2011年03月04日 10時20分 公開
[奥川浩彦Business Media 誠]

 いよいよ連載も佳境に入ってきた。今回は、簿記などの知識のない人が青色申告特別控除の65万円をゲットする方法を考えていこう。

 筆者は2006年の年末に起業、年明けの1月に「やよいの青色申告07」を購入した。理由は名前を知っていたこととシェアが高かったこと、後は画面のイメージが簡単そうに見えたことくらいだった。

 使ってみて分かったことは、一度使うと過去データのコンバートができないので、メーカーを乗り替えるのは難しいということだ。他のメーカーはどうなのかが気になり、当時の編集長に「青色申告ソフトの比較記事をやりましょう」と持ちかけた。

 1本1万円程度のソフトだが自腹で買って試すのは大変。なので、各メーカーさんからお借りして各会計ソフトに膨大な同じデータを入力し、記事で紹介した。その記事のご縁で今年もこうやって原稿を書いている。人生は何が起こるか分からないものだ。

 当時の結果は、簡単さなら弥生、価格はソリマチ、サポートはホロン(当時)となり、筆者は自分は簿記が理解できない、1万円以下ならわずかな価格差は気にしない、サポートに期待しないという考えでその後も「やよいの青色申告」を使用している。

コラム:最終日でも行列に並ばないで申告できる方法

 筆者は2009年、2010年は最終日に確定申告を提出した。当日の朝4時くらいにやっと完成し残り数時間で駆け込みの申告だった。今年もこの連載原稿が終わってから決算作業に入るのでギリギリになる可能性は高い。確定申告の会場は2月のスタート時には空いているが、後半に行くに従い混雑し、最終日は凄いことになっていた。

 2009年の受付会場は近所のショッピングセンター(イオン)の駐車場に建てられたプレハブの特設会場、2010年は街中にある電気文化会館。どちらも完成した申告書を提出するだけの入り口と会場で申告書を作成する入り口に分かれていた。

 筆者のように、自宅で申告書を完成させて添付書類と一緒に提出するだけの人は10人程度の列。こちらはわずかな時間で申告が終了する。一方、会場で申告書を作成する人は、会場に入れないほど長蛇の列ができていた。並ばないと会場に入れない状態なので、内部がどうなっているのかは不明。筆者が会場に行った段階で残り数時間なので、恐らく多くの人は会場に入れないまま終了時間を迎えることになったと思われる。

 PCはかなり普及していると思われるが、長蛇の列を見るとPCを使用して確定申告を行っている人はまだまだ少ない感じだ。読者の皆さんはPCが生活の一部になっている人が多いと思う。もし起業して、あるいは将来起業して確定申告を行うなら、間違いなくPCを使用すると思うが、もし回りの個人事業主の人が手書きで苦戦していたらPC使用を勧めてほしい。PCの使い方などをアドバイスして、65万円の控除ができたら小遣いくらいもらえるかもしれない。


 筆者のように市販の青色申告ソフトを購入する方法以外にも青色申告を行う方法はある。例えば国税庁がプッシュする「e-Tax」(国税電子申告・納税システム)、あるいは無料で使えるフリーソフトという選択肢もある。今回はそれらの方法を比較してみたい。

11月まで領収書を溜め込むだけの“ズボラ式”でも何とかなる

 まずはズボラな筆者の確定申告の流れを紹介しよう。真似しない方がいい例として紹介するが、それでも何とかなるという安心感は感じてもらえるかもしれない。

バインダー
封筒

 財布に貯まった領収書、郵送されてくる領収書(電力会社、ガス会社、カード会社……)は取り敢えずPCのキーボードとディスプレの前にしばらく放置。数週間分が溜まるとうっとうしくなってくるので領収書バインダーに分類して移動する。この段階の分類は「交通費」「消耗品」「飲食」「医療」「公共料金」「その他」の6つ。なぜ6つかと言えば、買ったバインダーが6つになっていたからで深い意味はない。

 年の後半になるとバインダーがパンパンにふくれ上がるので、長形3号の封筒に細かく分類して移動する。現在17枚の封筒に分けている。この段階で少し実際の仕訳項目に近くなるが、交通費の中でもガソリンと出張関係(ホテル、タクシーなど)は別の封筒になっている。通信費も携帯電話と郵便系は別封筒に入れている。領収書の枚数や大きさをそろえておくと、入力するときの効率がよくなるのである。

 青色申告ソフトに入力を始めるのは10月下旬から11月上旬だ。理由は「小規模企業共済等掛金控除」の金額を11月20日までに決めて中小企業基盤整備機構に連絡し、12月20日に引き落とされる年払いの金額を変更するためだ。銀行口座もチェック、ネット通販やオークションで買った物もチェックして約10カ月の売上、経費、固定資産などを入力すれば、残り2カ月はある程度予測がつくので納税額がほぼ決まる。手持ちの現金も考慮する必要があるが、ゆとりがあれば年末までにある程度高額な物を購入すると節税対策にもなるのだ。

 そのまま2月まで何もせず、この原稿を書き終えたら11月以降の領収書を入力、固定資産の償却方法などを結果を見ながら微調整して完成。独立したころは毎月入力しようと思い3カ月ごとに入力、その後半年となり現在は11月までは溜め込むだけの“ズボラ方式”に落ち着いている。

 最初の2年はルーズリーフに領収書を貼ってバインダーに綴じていたが、その後2年は入力済みの領収書をそのまま封筒に戻して放置したままだ。先日税務署の人が来たときに確認したら、貼らなくても保存していればOKとのことなので、今後は適当なファイルボックスを用意して封筒を突っ込んで終わりにしようと思っている。

コラム:税務署の人も納得する、会計ソフトの信頼感

 1月下旬、ピンポ〜ンとインターフォンが鳴り「昭和税務署から来ました」とアポなしで税務署の人がやってきた……ドキ〜ッ。一瞬驚き「税務調査を受けるほど稼いでないぞ……」などと思ったが、訪問の目的は2008年の売り上げが1000万円を越え、初めて消費税の申告をする事業者への指導だった……ホッ。

 訪問してきたのは若い女性署員。最初に「どんなお仕事をされてますか」との質問。丁度、翌週に発表の「お風呂まるごとスピーカー」「ワイヤレスHDMIキット」の準備をしていたので、実際にお風呂まるごとスピーカーをふすまやデモ用のパネルに貼って見せると「スゴ〜イ」と予定通りの反応。ほかにもPCの画面で、レース撮影の仕事や、原稿を書く仕事など行っていると説明した。

 「何業になるのでしょうか」と聞かれたので「フリーター。まあメインは広報業」と答えると「かなり訪問してますけど、この様な仕事をいてる人は初めてです。上司に報告しておきます」。

 ……「(奥川は)フリーターでした」って上司に報告したのだろうか。余談だが女性署員は京都出身で年齢25歳。なかなか可愛かったが、残念ながら(?)既婚である。

 肝心の確定申告の話しとなり「どのように申告されていますか」との質問に「やよいの青色申告」を使っていますと答えアプリを立ち上げた。その効果は絶大でチラッと見て「じゃあ大丈夫ですね」ってことで、こちらが拍子抜けするほどあっさり終了となった。

 当たり前だが、税務署のお姉さんが持ってきた資料には、筆者の過去の決算状況が全て記載されていて、消費税の簡易課税の届け出が出ていることも把握している。消費税は売り上げだけキッチリ入力すれば、みなし仕入率を掛けて自動的に計算され、提出書類もそのまま印刷するだけだ。

 筆者はこうやって税金の原稿を書いているが、実際にそれほど詳しいわけでもなく、手書きで確定申告をすることなど不可能。「やよいの青色申告」に入力していくと自動的に貸借対照表や決算書ができあがるだけだ。メジャーなソフトということもあり、おそらく「やよいを使っているなら大丈夫」と経験で判断したのだろう。

 その後は税金の話を中心に世間話モード。部屋にプロジェクターや自作のスピーカー、真空管アンプ、サンニッパの望遠レンズなど普通の人には価格が分かりにくいものが多いので「簡易課税より原則課税の方が得じゃないですか」とアドバイスを受けたり、税務署が行っている記帳指導や所得税の納付方法の話をした。

 こちらからも質問をした。「e-Taxって使いにくいけどどうなんですか」と聞くと「○△□※↑↓←!#$%&@(税務署の人が読むと本人が特定できるので伏せ字)」と困惑気味。「こっそり増税してる子ども手当ってどう思います」と聞くと「「□$%!#&※↑○△↓←@(同)」と、こちらも答えに窮しているようだった。

 収穫があったのは、領収書の保存方法。最初の2年は分類してルーズリーフに貼り付けバインダーにとじていた。これがかなりの労力で、その後2年は封筒に分類したままほったらかし。聞くと別に貼り付ける必要はないとのことなので“雑な保存方法”に切り替える決心をした。

 もう1つ、雑談の中で自宅と仕事場の案分率の話題になり「50%くらいですか」と聞かれたが、実際には20%にしているので、今後はもう少し仕事の比率を上げてもOKかと思っている。

 少し驚いたのは、ピンポーンと鳴らす前にマンションの管理人に聞き込みをしていたことだ。管理人さんは筆者のことを「いつも不在がちです」と答えたようだが、実際はその逆で「3時に寝て9時に起きて、撮影の仕事がなければ昼間は引きこもり」と言ったら納得していた。

 今回、初めて税務署の人が来たのでその様子を紹介した。誠 Biz.IDの編集長からは「税務調査が入ったら記事で書いて下さい」と言われているが、その日が来ないことを願っている。


インフレ時代の確定申告
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