ヤマト運輸に学ぶ「見えないコスト」に着目する術トップ1%の人だけが実践している思考の法則(2/3 ページ)

» 2013年02月05日 10時00分 公開
[永田豊志,Business Media 誠]

「機会費用」とは、最善の選択をしなかったため失った利益

 問題のケースでは、顧客の時間指定を可能にすることで1件でも配達があれば、そのために余計に出動するコストや時間指定にかかわる業務コストが増えるように思えます。しかし、不在によるロスが時間指定によって増えるコスト増を上回れば、結果として全体の生産性は増えるはず。配達員が無駄な呼び鈴を鳴らす回数を減らせれば、その時間を使ってもっと生産的なことに使うことができた。これを「機会費用(Opportunity Cost)」といいます。

 機会費用は、その名の通りコストの概念です。ある行動を選択した場合に、最善の決定をしなかったために、逃してしまった利益のことです。そのため費用ではなく「機会損失」とも言い換えられます。機会費用/機会損失は請求書で支払うような普通の経費とは違い、直接、目に見えて現金が出ていくわけではないので、見えないコストと呼ばれるわけです。

 しかし、こうしたコストは意識しなければ、なかなか頭に浮かんでこないもの。世の中には、こうした見えないコストが山ほど眠っています。モノやサービスを取引するときのコストは実感できても、いったん現金を払ってしまうと「その中身がどうであれ支出は同じ」という先入観が生まれてしまうからです。

 実際、ヤマト運輸でも一見コスト高に思える時間指定サービスを提供することでトータルでは、配達の生産性を高めることになりました。

 ちなみに、ヤマト運輸では時間指定のみならず、タイムサービス(午前中発送で当日到着や深夜発送で翌日到着)やメール通知サービス(受け取り予定日時が確認できる)など各種サービスも充実しています。これらも、ユーザーの利便性向上という側面だけでなく、必要なときに荷物が届かない、受け取るときに自宅にいない機会損失を回避するソリューションと考えることができるでしょう(※詳細はヤマト運輸のWebサイトで確認ください)。

 ある問題を議論するときに、その直接的な利益やコストだけを見るのではなく、全体のパフォーマンスに視野を広げることが重要です。そしてどこまでの範囲で成果を見るかは、その人のビジネス視野の広さを示すバロメーターになるでしょう。

在庫切れ、空振りの営業訪問、Webサイトの途中離脱……、身の周りの機会費用に着目

 話を機会費用に戻しましょう。私たちの身近な機会費用として、どのようなものがあるでしょうか?

 1つは、在庫切れがあります。在庫があれば売れて利益が得られたのに、それができなかったというわけですね。これもまた、目に見えて費用が出ているわけではありませんが、販売機会を最大限生かせなかったという損失が出た。つまり、費用が掛かっていると考えるわけです。

 もう1つ身近な例を挙げると、客先に行って商品を案内したが、売れずにそのまま帰ってきたようなケース。同じ時間を使って、ほかの商品をついでに案内するとか、すぐ近くにある別のクライアントにも一緒に回ってくるとか、同じ時間を使ってできたかもしれない利益の機会を逃したことになります。これも1つの機会費用です。

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