若いころ、血気盛んだった私はよく職場でイライラして感情をそのまま上司にもぶつけていた。ある日のこと、私がプンプンと怒りながら報告しているのに、上司は落ち着いて聞いていた。そして、ポツリとこう言った。
「田中さんは○○の件で怒っているんだね」
「ボクだってそれはおかしいと思う」と同調するのではなく、単に「あなたは怒っているんだね」というだけだった。それでもこの時私は、ふと我に返り、冷静さを取り戻したのだ。
「はい、そうです。怒っています」と答えた。そして、すぐに「怒っていても仕方がないので、事実関係だけもう一度説明します。その上で対処法について相談に乗ってください」と言えたのだ。
この時、「なるほど、こういう風に気持ちを受け止める方法があるのだなあ」と学んだのだった。この時、もし上司が「いい歳して、その程度のことで怒ったりしないで、冷静に話しなさい」とか「感情論はいいから、事実だけ簡潔に報告して」と言ったりしたら、私は冷静さを取り戻すのに時間がかかっただろう。しかし、上司が「田中さんは怒っているんだね」と言ってくれたことで、私は自分の感情に気付き、感情面は脇に置くことができた。
同じ気持ちにならなくても、感情面では十分受け止めてもらえたとこの時感じた。
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