“昭和上司”にならないために、彼らから学ぶべき3つのこと若手社員のうちに学びたい、「上司力」入門(1/3 ページ)

「社内でのコミュニケーションをどうすればいいのか」と悩んでいる人も少なくないだろう。今後、上司になっていく人に身につけてほしいのは「巻き込み対話力」である。

» 2012年12月13日 08時00分 公開
[吉田実,Business Media 誠]

若手社員のうちに学びたい、「上司力」入門:

 著しい労働環境の変化に振り回される昨今、上司がマネジメントに徹することは難しく、実務をこなしながら部下育成やチーム作りを行うことは、もはや当然のことになりつつある。しかし働き方が多用化する中で、影響力を発揮できる「上司力」を持つ人材は少ない。そこで本連載では「上司力入門」と題し、20〜30代前半の若手社員のうちから「上司力」を鍛える方法を、人材育成の専門家が解説する。

著者プロフィール:

吉田実(よしだ・みのる)

株式会社シェイクの代表。

大阪大学基礎工学部卒。住友商事株式会社に入社。通信機器の営業、携帯電話を活用した新規事業立ち上げに携る。2003年シェイクに入社。営業責任者として、人材育成事業の立上げ、拡大に従事。2006年よりファシリテーターとして登壇し、実績は新入社員から若手・中堅社員、管理職層まで多岐に渡り、育成に携わった人数は1万人を超える。

2009年9月より代表取締役社長に就任。最近は、中堅社員育成の専門家として、メディアでも広く取り上げられている。2011年1月に書籍『「新・ぶら下がり社員」症候群』(東洋経済新報社)を出版。


 私が社会人になった15年前、所属していた会社では、秋になると社内運動会が開催された。会社の寮が2つあったため、寮対抗の騎馬戦が行われ、寮のメンバーが一丸となって必死になっていたことを思い出す。

 1990年代までは企業では、このような運動会や泊まりがけの社内旅行、ボーリング大会などが当たり前のように行われていた。「飲みニケーション」も盛んで、飲みに行った後に上司や先輩とビリヤードやカラオケに行くことも多かった。そのような場で、昼間には見られない上司や先輩の一面を見ることができたものだ。

 このような流れが変わってきたのは、2000年前後に成果主義が広がってきたころである。自分の仕事の範囲がきちんと定められ、高い成果を出せば評価をされる仕組みが浸透にするに従って、社員は決められた自分の仕事に没頭するようになり、他人の仕事にまで関心を持てなくなってきた。効率化やコスト削減が推進され、会社の寮は次々と廃止され、運動会などのイベントも減っていき、そのような流れの中で、仕事帰りの「飲みニケーション」も当たり前ではなくなってきた。仕事は仕事、プライベートはプライベートと割り切る人も増えてきて、業務時間外まで、上司や先輩といることを避ける傾向も高まった。

 実は最近、社内運動会などの社内イベントや飲みニケーションが見直される傾向が出てきている。「社内運動会」運営のアウトソーシングを受ける専門会社が立ち上がっているほどだ。トヨタ自動車では毎年、職場対抗の駅伝大会が行われている。優良企業と言われる企業では、昔から一貫して社内イベントを続けている会社も多い。

「人の変化」を起こすコミュニケーションとは

 成果主義の広がりにより一時はなくなりかけた社内イベントが、復活し始めたのには理由がある。実は、このようなイベントを通じて行われるコミュニケーションにこそ、人を元気にしたり、人の関係性を深めたりする要素が含まれているからだ。

 職場におけるコミュニケーションには、大きく次の3つのパターンがある。1つ目は「会話」である。「会話」とは主にお互いの情報を交換する際に行われるもので、ホウレンソウなども、会話形式で行われるコミュニケーションと言える。効率的に仕事を進めていく上では、この会話によるコミュニケーションは欠かせない。

 2つ目は「議論」だ。ビジネスにおいて、適切な解を見出すために、一人ひとりが自分の意見をぶつけ合い、何らかの結論に導いていく。会議などにおいては、結論が出ない会議は無駄な会議と言われる。結論を出すことを目的にしたコミュニケーションである。

 3つ目は「対話」である。「対話」は情報を交換することを目的にするわけでもなく、結論を出すことを目的にしているわけでもない。お互いに考えていることや感じていることを共有しあうコミュニケーションである。相手の考えの背景を理解したり、感情を理解しあうことがポイントだ。

 ビジネスを効率的に進めるには「会話」や「議論」によるコミュニケーションは不可欠である。しかしながら、人間関係を深めたり、「この人と働きたい」といったような感情の変化を起こしたり、「もっとがんばろう」という意欲の変化をもたらすためには「対話」が有効であることが多い。

 社内イベントや飲みニケーションで行われるコミュニケーションは「対話」が中心である。相互に理解することで、一緒に働くことに喜びを感じるようになったり、モチベーションが上がったりするものだ。

 第4回でご紹介したぶれない軸を持った「志」リーダシップ第5回の部下をその気にさせる「ゆさぶり力」に引き続き、これからの上司になっていく人に身につけてほしい3つ目の力として、紹介したいのが「巻き込み対話力」である。

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