中には「生活できるレベルの収入があれば良い」と、割り切っている人もいる。もちろん生活できるレベルで収入を得ることも大変なのだが、割り切っていれば余計な無理もしなくて済む。しかし「今」だけを見ていると、痛い目を見るだろう。そういう人には、こう聞いてみたい。
「いつまで仕事をしているつもりですか?」
会社員なら、60〜65歳が定年。再雇用などもあるが、多くの人は定年退職から仕事を離れ、第二の人生を歩み始めるだろう。今をバリバリ働くビジネスマンの中には「一生仕事をしていたい」人もいるかもしれないが、本当に年を重ねても同じことを言えるだろうか。
フリーになれば、将来の貯蓄もしっかりする必要がある。年金は国民年金となって、受け取れる金額も厚生年金より下がる。家持ちならそれだけでも最低限の生活はできるかもしれないが、賃貸なら家賃でそのほとんどがなくなるだろう。いや、もしかしたら年金だって受け取れない時代がくるかもしれない。未来は、誰にも分からないのだ。
では将来を不自由なく生活するのに、どれだけのお金が必要か。逆算して、今からその分まで収入を得ておく必要があるだろう。厳しいようだが、「誰も守ってくれない」のだから。
その他にも、フリーになるとさまざまなことが起きる。例えばもし仕事が上手くいかなかった場合、そのときの実績や仕事内容にもよるが再就職も厳しくなるだろう。もし勢い余って事業ローンでも組んでしまったら、どんなに苦しくてもその返済責任は個人に課され続ける。
仕事については、営業から事務、経理まで全てを自分で行う必要がある。外部に委託することも可能ではあるが、それならばさらに稼ぐ必要があるだろう。
仕事以外で見るならば、社会的信用度が会社員より下がるため住宅をはじめとしたローンなどは組みづらくなる。自宅を購入したいなどと考えているのなら、それは夢と消える可能性もあるのだ。また独身であれば、結婚するのも一苦労かもしれない。フリーのような働き方に理解のある人は決して多くないし、結婚となればどうしても収入面である程度の安定性は求められる。これは、フリーという働き方にとってハードルが高い。
私はそれでもフリーランスを選んでいるわけだが、ここに挙げたのはリスクのほんの一部にすぎないことは覚えておいてほしい。これは何も脅しているわけではなく、それでもチャレンジしたいかを考えた上で挑んでほしいのだ。リスクを知っていれば、事前に回避策を講じることもできるだろう。
こうしたリスクを軽視して独立し、仕事が上手くいかなかった例を私はこれまでいくつも見てきた。私だっていつまでも今の働き方でやっていける保証はないし、だからこそやっていけるように毎日必死である。
フリーで働くということは、大きな自由を得る。しかし、大きなリスクと隣り合わせであることもまた事実なのだ。
1983年岩手県生まれ、宮城県育ち。人材コンサルティング会社、Web関連会社での勤務を経て、2010年6月にナレッジ・リンクスとして独立。「時間の自由」を第一としたワークスタイルを実践中。多くのSOHOやフリーランスワーカーとパートナー関係を持ち、業務機会の提供を行っている。プライベートでは2人の子どもを持ち、マラソンやトライアスロンにも挑戦。ITやビジネス全般を中心とした執筆活動も行う。
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