一流は「対立」を恐れない、逃げない一流の働き方(1/2 ページ)

どんなに優れた頭脳の持ち主でも、「精神的に疲れを知らない粘り強さ」がなければ意味がない。優れた80の頭脳があっても、精神の強さがゼロなら、その人の総合能力は80点以上にはならないのだ。

» 2013年12月05日 10時00分 公開
[川北義則,Business Media 誠]

集中連載『一流の働き方』について

 本連載は、2013年11月26日に発売した川北義則著『一流の働き方』(アスコム刊)から一部抜粋、編集しています。

 なぜあの人の仕事は、いつもうまくいくのか? 一流は困難なときこそ楽天的である。「忙しい」は、二流の口グセ。「努力」は、他人に見せたときに価値を失う。仕事ができる人は、孤独を恐れない――頭角を現す人にはこのような条件を持っている。

 本書は、人気ベストセラー作家が「頭角を現す人」の究極の仕事術を39の条件にまとめ語り尽す一冊。あなたも「あの人のようになりたい」といわれる人間になろう!


 「雨降って地固まる」

 言い古された言葉だが、仕事における人間関係は意見の対立やトラブルなどを乗り越えて成果を上げたときに深まるものだ。まずはお互いの主張をぶつけ合う。相手の正しい主張は取り入れるが、納得できない部分については安易に妥協しない。合意が見られない場合は、お互いに納得できる代替案を出し合いながら着地点を見い出す。

 これがビジネスの交渉事の基本だ。初めから双方の言い分が完全一致することなどない。だから、常に「和気あいあい」というわけにはいかない。「罵詈雑言」とまではいかなくても、「侃々諤々(かんかんがくがく)」の議論は必ずある。お互いに自分の属する側の利益を左右する問題なのだから、当然のことだ。

 だから、こういう場面で最も役に立たないのが「打たれ弱い人間」である。どんなに頭がいいといわれ、仕事の知識が豊富であっても、気後れして、交渉事の実戦でそれを使えなければ、ないのと同じだ。

 ひと言でいえば、精神面で弱くてはダメだということ。精神面で弱い人の特徴は、「自分が傷つくことを恐れる」ということだ。ビジネスのタフな交渉の場では、これは致命的である。タフネゴシエターにはなれない。お互いに、自分あるいは自分が属する側の優位を求めて交渉の場に臨んでいる。それが脅かされる可能性があれば、相手がキツイ言葉や硬い表情で対応するのは当たり前。それが仕事の厳しさというものだ。

 相いれない主張の局面ともなれば、お互いに感情むき出しのシーンもあるだろう。それを「傷つくから」などという感情にこだわるのは、仕事よりも自分の心の安定を優先しているだけ。仕事への冒とくである。さらにいえば、真剣勝負なのだから傷つくことなど織り込みずみのはずである。

 かなり以前のことだ。当時、まだ若かった編集者との打ち合わせの席で、企画の切り口について、お互いの主張が噛み合わなかったことがある。

 「読者から見ると、ちょっとお節介のように思えます」

 若い編集者のひと言が、かんにさわった。

 「お節介のどこが間違っているのか。私の書いていることは、ある意味で、すべてお節介なんだよ!」

 まさに、売り言葉に買い言葉である。

 お互いに、いい仕事をしたいと思っての熱い議論だったが、彼の言葉に、私はいくらか感情的になってしまった。「腹でものを考えない」のが私の流儀。不満や怒りは必要以上に隠さず、相手にぶつける。ただし、後々までグタグタいわない。

 どれくらいだろうか。おそらく時間にして3分くらい、かなりキツイ言葉でその若い編集者を叱りながら反論したと思う。「申し訳ございません」を何度か口にしながら、私の話を聞いていたのだが、その彼の視線にちょっと驚いた。

 普通なら、うなだれる。だが、彼は違った。しっかりと私の目を見据えて、視線をそらさず話を聞いているのだ。怒り出した手前、私も止められないのだが、しまいには彼の視線にやや気圧されるような気分になってしまった。

「なかなか腹の座った男だな」

 私はそう思いはじめていた。

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