青色申告ソフトをインストールして売り上げ、経費、控除額などを入力すれば課税所得や所得税額が算出できる。もうかった年は税額が増える。その額を見てガッカリしたら節税だ。Aさんの場合は節税対策をしなければ課税所得が税率20%のところにいるので、積み上げた経費の約3割を節税できることになる。
経費には水道光熱費、通信費、旅費交通費、接待交際費などさまざまな項目がある。経費が増えれば納税額は減るが、用もないのに長電話をして通信費を増やしたり、寒くもないのに暖房して電気代を増やしても意味はない。事業に有効なものに投資(支出)して、経費を増やすことを考えよう。
遠く離れた取引先へ出張し(旅費交通費)、菓子折(接待交際費)を持ってあいさつに行けば、翌年以降の事業拡大につながるかもしれない。普段お世話になっている取引先と忘年会(接待交際費)をするのもよいだろう。とは言え師走で忙しくて遠出も宴会も無理となれば、消耗品の購入が手っ取り早い方法だ。
消耗品と聞くとプリンターのインクのように減ってなくなるものを想像しがちだが、ここでいう消耗品とは10万円未満または使用可能期間が1年未満の少額減価償却資産だ。簡単に言えば10万円未満の備品が対象となる。
ノートPCを新調して9万円、タブレットを購入して4万円、ミラーレス一眼を7万円で買えば合計20万円の経費を増やすことができる。Aさんの場合なら約6万円の節税となる。今まで欲しかったもの、今後必要になるものを大幅割引で買えるチャンスだ。
タブレットやデジカメなどの数万円のものじゃなく、クルマを買ってドカンと節税したいと思う人もいるだろう。残念ながらそうは問屋が卸さない。10万円以上のものは消耗品ではなく固定資産として処理をする。資産により耐用年数が決められていて、クルマの場合は6年(72カ月)、カメラは5年(60カ月)、PCは4年(48カ月)などと定められている。
クルマを例にすれば、長期に渡って使用するので、72カ月(6年)に分割して経費として計上する。360万円のクルマなら毎月5万円が経費ということだ。なので節税のために12月に360万円のクルマを買っても、経費として落とせるのは5万円だけ。1万5000円の節税にしかならない。
ただし、減価償却には特例がある。10万円以上20万円未満の資産は一括償却資産として3年で均等に割って償却することが可能だ。例えば18万円のデジタル一眼レフを購入し通常どおり5年(60カ月)で償却すると、1カ月分の経費は3000円だ。年末に買っても節税効果は1000円以下となってしまう。これを一括償却資産として3年で均等に割って償却すれば12月に購入しても3分の1の6万円を経費にできる。白色申告の人にお勧めなのはこの方法だ。
もし青色申告をしているなら、10万円以上30万円未満の資産は「少額減価償却資産の取得価額の必要経費算入の特例(措置法28の2)」により、その年に全額を経費として落とすことができる(合計額に制限あり)。先ほどの18万円のデジタル一眼レフなら12月に購入しても全額が経費となるので約6万円の節税となる。この特例を使って25万円のものを4つ購入すれば100万円の経費を上積みすることも可能だ。クルマを買うのは無理でも、そこそこドカンと節税するには有効な特例だ。
常に業績が安定している場合は、固定資産を通常どおり数年に分けて償却しても、特例を使って1年で償却してもトータルの節税額は同じとなる。業績の浮き沈みが激しい場合は、もうかった年に償却した方が節税効果が高くなるので、特例を上手く使うと納税額を減らすことが可能だ。
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