同じ内容の話をしても、人によって説得力や影響力に差が出ることがあります。そんなとき、「世の中、不公平だ!」とぼやいて終わらせるのは未熟者がすることです。「対人認知」の心理を押さえて、状況を変えていきましょう。
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本記事は企業実務のコンテンツ「表現のプロが教えるスピーチの兵法」から一部抜粋・編集して掲載しています。
前回お伝えしたように、私たちの言葉による表現は、
に分かれます。
しかし、いざ人前で話をすることになったとき、最初に、この言語表現・非言語表現について戦略を立てることはお勧めしません。
その理由は、「何を話そう」「どのように話そう」ということを考える前に押さえておきたい重要なポイントがあるからです。それは、「どのような自分としてスピーチをするのか」ということです。
皆さんは、テレビやPCを使って楽しむゲームの初期設定(キャラクター設定)をしたことがあるでしょうか? ゲームソフトによっては、プレイヤーがゲームに登場するキャラクターの役割や能力をあらかじめ設定する必要があります。男性なのか女性なのか、年齢は何歳か、どんな服装(装備)にするのか……など、“自分の初期設定”を行うわけです。
スピーチの戦略を考えるときのファーストステップは、このゲームを楽しむときと同じ。まず相手に与えたい自分の印象を決める、これがとても大事です。そのうえで、自分が決めた印象に合わせた話し方のテクニック、表現方法を考えていきます。なぜなら、ビジネスにおいては「何を言ったか」「どのように言ったか」よりも「誰が言ったか」のほうが重要な判断基準となるからです。
こんな場面を想像してみてください。
当月分の経費の精算は、翌月5日までに経理に申請することになっているのに、提出期限が過ぎても出張旅費精算書を提出しない営業部員Aさんがいます。
経理担当者のあなたが提出を促したところ、Aさんは、「今日中の提出は無理です。明日ではダメですか? 絶対明日は持っていきますから」と、期限のさらなる延長を依頼してきました。ちなみにAさんは、たびたび期限を守らないことがあるうえ、提出された精算書は毎回誤字や計算ミスだらけです。
では、同様の申し出を、いつも当月末までに出張旅費精算書を提出し、計算ミス等がほとんどないBさんから受けた場合、あなたはどう受け取るでしょうか? 同じお願いごとであっても、Aさんの場合は「あいつの“絶対”なんてアテにならない」と、Bさんの場合は「よっぽどの事情があるのだろう。仕方がない」と受け取るのではないでしょうか。
それは当然のことなのです。
私たちは日々のコミュニケーションのなかで相手に対して一定の印象を抱き、その印象をベースに見聞きした内容をジャッジしています。つまり、あなたの話す内容が信頼されるかどうかは、他人からどのような人物と思われているかで結果が変わってしまうのです。
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