今でも多くの社会人が資格取得の勉強をしています。
かつては、資格を持っている人は「専門知識を持っている人材」「努力を惜しまない人物」という一定の評価を受けることができ、昇給や手当、昇進や転職などにおいて少なからず恩恵をあずかることもできました。
しかし現代においては、「覚える」という行為の価値はどんどん低くなっています。たくさんの資格を持っていると「ヒマな人」という評価になりかねません。
さらに、資格の問題点は、需要と供給のバランスの崩壊です。例えば、司法試験・司法書士・公認会計士・税理士・社会保険労務士・中小企業診断士・宅地建物取引等主任者の国家資格ホルダーは、平成に入ってからだけでも100万人以上増え、いまだに毎年5万人以上の合格者が生まれています。昭和の時代から数えると、有資格者はものすごい人数が存在することになります。
さらに、簿記やFPなど、公的機関による資格取得者も含めると、毎年膨大な数の資格ホルダーが生まれているわけです。
では、これからの人口減少時代、そうした有資格者に対するニーズは高まっていくでしょうか? 供給過剰になり人が余り、ダンピング競争になることが容易に想像できます。そんな競争過多の世界で勝ち残るには、よほどの商才が必要です。
もちろん私は資格取得を全否定しているわけではありません。税理士や弁護士はもちろん、そもそも法律で独占業務として定められている資格も多数存在しますし、知的財産権の分野などのように、今後需要の拡大が見込めるものもあります。そうした独占分野で専門性の高いスキルを身につけて独立したいという、明確な意志がある場合もあるでしょう。
しかし、「手に職をつけたい」などという漠然とした理由で取り組むには、資格取得に要する時間とエネルギーはあまりに大きいと言えます。
そのため、資格取得を目指す前に「その職にニーズはあるのか?」「これからもニーズはあり続けるのか?」「どのような方法で収益化できるのか?」をしっかり考えてから取り組む必要があります。
「20代のうちは自分に投資しなさい」という主張は確かにうなずけますが、「投資」であるからには回収しなければなりません。つまり、勉強を始める前に、どのように回収すればいいかを同時に考えておく必要があります。
最も重要な回収方法は、当然ながらお金を稼ぐことです。ビジネスパーソンの勉強とは、最終的に「どれだけお金を稼ぐ自分になれるか」という指標で測られます。
なぜなら、顧客に喜んでもらってはじめてお金をいただけるわけですから、換金できない勉強は社会の役に立っていないということを意味するからです。それはつまり趣味の世界、暇つぶしです。
お金を稼ぐ自己投資とは、「身体を動かしてマスターする」ということを意識することです。例えば、コピーライティングの本を読んだらすぐにコピーを書いてみる。トップ営業のノウハウを聞いたら、家に帰ってすぐにロールプレイングしてみる。新しい英語表現を学んだら、すぐ口に出して何度も繰り返す。
そのようにして、学んだことと身体の動きを直結させることを意識して、知識を実践力に変換することが大切です。
つまりビジネスパーソンの勉強とは、覚えることよりも、学んだらすぐ自分の手足を動かして身体で習得すること。実戦経験を積み重ねる中で、成果を出す力を獲得することです。
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