部下から信頼されない上司がハマる、3つの「落とし穴」そのひとことを言う前に(1/2 ページ)

相手とのコミュニケーションの基本となる「フィードバック」。物事や相手の状態を“過不足なく”指摘するのがコツですが、この“過不足なく伝える”というのが意外と難しいものなのです。さて、あなたはできていますか?

» 2015年03月12日 09時30分 公開
[岩淺こまき,Business Media 誠]

連載「そのひとことを言う前に」

 職場で感じるストレスの原因は、うまくコミュニケーションがとれないことによるものが多いようです。本連載では、伝え方や接し方、聴き方に至るまで職場でよくあるエピソードをもとに、仕事や物事がより円滑に進むようなコミュニケーションや考え方のヒントをご紹介します。言葉を受ける側の立場や気持ちを理解し、自分が発する言葉について見直してみてはいかがでしょう。


 3月になりました。年度が変わる4月からの体制が発表された会社も多いと思います。新年度から新しく部下を持ったり、マネージャーになるという人もいることでしょう。今回は、部下とのコミュニケーションの基本について、おさらいしたいと思います。

 まず絶対にしてはいけないのは、いわゆる“放置プレイ”です。コミュニケーションを面倒に思ったり、ミスを恐れてコミュニケーションができなくなるケースも見受けられますが、これはNG。それが相手を否定するものであれ、肯定するものであれ、何のアクションも起こさないと、相手が「存在を認められていない」と感じ、モチベーションが大きく下がったり、問題行動をとったりする可能性が高まってしまうのです。

 そのため、相手に「見てもらっている安心感」を感じさせるよう行動することが、コミュニケーションの基本と言えます。こう言うと抽象的なイメージを受けるかもしれませんが、要するに相手に「フィードバック」を行うことが大切なのです。以前の記事で、フィードバックについて解説したこともありますが、今回は少し違った角度からその効果を考えてみます。

コミュニケーションの基本、“フィードバック”を考える

 フィードバックを端的に説明すると「相手の状態を指摘する行為」です。その効果はさまざまですが、基本的には、お互いの認識をすりあわせ、円滑なコミュニケーションがとりやすくなることが挙げられます。

 例えば、野球が好き(という自覚がある)なAさんに対し、Bさんが「野球がとても好きなんですね」とフィードバックすれば、Aさんも“Bさんに野球が好きだと思われている”ことを認識し「Aさんが野球好きである」という共通認識が生まれます。こうした共通認識が増えていくことで、お互いの理解が進み、さまざまな話題をスムーズに話せるようになるのです。

 ビジネスの場においても同様です。相手に対しては適切なフィードバックを行うことで「相手を見ている、意識している」ことをアピールでき、良好な関係を築けます。しかし、このフィードバックの使い方を間違えると、相手との関係性を悪化させることになりかねません。先日、OJT講習会の受講者が紹介した話には、やってしまいがちな“失敗フィードバック”の要素が含まれていました。

<ケースA:提案資料を褒められたはずが……>

上司C: この間の提案資料よかったよ。多分、実作業はチームのみんなも頑張ってくれたと思うけどね。納期キツかったのに、よく間に合わせたな。皆にもちゃんと感謝しておくように。

Dさん: そうですね。そう言っておきます(チームは別件で忙しかったから、自分が一番残業しましたけど?)。

<ケースB:資料が分かりにくい>

上司E: (資料をレビューしながら)全体的にわかりにくい。もう一回見直して。

Fさん: すみません、ちなみにどのあたりが分かりにくいでしょうか?

上司E: 2〜3ページ目が伝わらない、まったく。やりなおしてきて。

Fさん: わかりました、では直してきます(もう少し具体的に言って欲しい……)。

 どちらのケースも資料について部下にフィードバックを行っていますが、相手のモチベーションを下げ、信頼を損なってしまいました。これでは逆効果です。前者は“余計”なひとこと、後者は言葉が“足りない”ことが原因です。フィードバックは物事を過不足なく伝えなければならないところに難しさがあるのです。

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