総務の仕事――夏(7〜9月)新人・若手担当者のための総務の仕事術(2/2 ページ)

» 2015年03月18日 06時00分 公開
[企業実務]
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防災体制を見直す

 9月1日は「防災の日」で、この日を含む8月30日から9月5日までの1週間が防災週間です。防災週間には、各自治体がさまざまな取組みを行っています。

 例えば大阪府では、2014年の9月5日に「大阪880万人訓練」という大規模な避難訓練を実施しました。午前11時に南海トラフ巨大地震が発生したと想定して警報を発令、その3分後には大津波警報を発表と、本番さながらの訓練が行われました。

 これにあわせて、ある産業用ガス充填会社では、工場内に保管している200キログラムの窒素ボンベが倒れ、けが人が出たとの想定で訓練を実施しました。その後、防災マニュアルと実地訓練での違いを検証して、マニュアルの不備な点を改善しています。

 以下、防災体制見直しのポイントを確認してみましょう。

(1)事業継続計画という考え方を取り入れる

 事業継続計画=BCP(Business Continuity Plan)とは、災害や事故等が発生した場合でも損失を最小限に抑え、事業を継続させていくための計画(取組み)です。

 前述したガス充填会社の訓練では、全社員に安否確認メールを送ったものの総務への返信がなかったり、指定した避難場所が社員に伝わらなかったりと、いくつかの課題が見つかりました。

 訓練時間は平日の午前11時でしたが、仮に業務時間外だったとすると、社員の安否確認はさらに難しいものになるでしょう。

(2)過去・現在の災害時の教訓を生かす

 「想定外の災害」とは、阪神・淡路大震災でも東日本大震災でも繰り返された言葉です。

 阪神・淡路大震災のとき、筆者のオフィスでは書庫が倒れて、その前の事務机を直撃し、机の中央部が陥没しました。早速、手を付けたのが書庫の固定です。書庫の上下にジョイントを付け、壁に固定器具で固定し、さらに転倒防止器具などを付けました。

 激震時には扉が開いて中のものが飛び出します。そこで、重いものは書庫の下段の引き出し式の収納部分に入れて飛び出しを防止し、上段部分には軽いものを収納するようにしました。PCやプリンタなどは機器そのものが飛んで凶器化しますから、できる限り固定します。

 地震などの自然災害に見舞われる映像を目にしても、私たちは対岸の火事と考えがちです。自社に重ね合わせて、「想定外の災害」を想定内にする対策を練り、安全・安心な職場環境を実現するようにしてください。

自社の労働災害事故を防ぐ

 7月の全国安全週間は、労働災害防止活動の推進と安全に対する意識向上等を目的としています。

 安全意識や危機感受性を高めるための取組みとしては、次のようなものがあります。

(1)ゼロ災運動とKYT(危険予知訓練)

 ゼロ災運動は、ゼロ災害・ゼロ疾病を究極の目標として、すべての働く人がそれぞれの立場、持ち場で労働災害防止活動に参加し、問題を解決する職場風土づくりをめざす運動です。

 一方、KYT(危険、予知、トレーニングの頭文字)とは、職場や作業の状況にひそむ危険要因とそれが引き起こす現象について、危険のポイントや重点実施項目を指差唱和・指差呼称で確認して、行動する前に解決する訓練です。

 いずれも、中央労働災害防止協会のホームページを見ると、関連情報が掲載されています。

 安全意識や危険予知は、個人の特性に左右されがちですが、同協会の「安全行動調査」では、個人のエラー傾向やパーソナリティ傾向が把握できます。ヒューマンエラー防止対策に使えます。

(2)ヒヤリ・ハット活動

 ヒヤリ・ハットとは、結果として重大事故に至らなかったものの、ヒヤリとしたりハットした「事故一歩手前の事例」です。

 「1つの重大事故の背後には、29の軽微な事故と、300のヒヤリ・ハットが存在する」というハインリッヒの法則を根拠にしているのがヒヤリ・ハット活動です。

職場のあんぜんサイト(出典:厚生労働省)

 厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」ではさまざまな場面で発生するヒヤリ・ハット事例がイラスト入りで紹介されています。これらの事例を見るだけでも、総務として職場の安全をどう確保すればよいのかが想定できるでしょう。

著者プロフィール:森口ひろみ

株式会社 ファースト・アシスト代表取締役。社団法人日本産業カウンセラー協会 産業カウンセラー。1969年4月大西公認会計士事務所創立とともに入所。1971年より同事務所発展による事業拡大により総務職に就く。総務主任、総務課長、総務部長を経て、1989年10月株式会社第一会計設立とともに取締役総務部長に就任。2002年4月株式会社ファースト・アシスト代表取締役に就任。現在は総務職としての経験を生かし、クライアント企業の中期経営計画の策定、間接部門の確立・コンピテンシー人事制度の導入などを中心としたコンサルタント活動のかたわら、講演活動や女性経営者としてさまざまな異業種交流団体での活動を行っている。


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