「ほぼ日手帳」制作現場は雑談奨励、席替えはクジ引き――東京糸井重里事務所:みっちゃんのオフィスちゃっかり訪問(2/2 ページ)
ちゃっかり者のみっちゃんが気になる会社におじゃまする新連載「みっちゃんのちゃっかりオフィス見学」。第2回は「東京糸井重里事務所」のオフィスです。「ほぼ日手帳」制作チームのみなさんにお話を聞いてきました。部署や自分の業務範囲を制限しないで緩い関係が特徴。協力しあって仕事をする――そんな職場でした。
読者向けの「ただいま制作中」が社内向けにも効果
さらにチームや社員の間での情報共有を促進しているのが「ほぼ日刊イトイ新聞」中の「ただいま製作中!」というコンテンツ。制作中のプロジェクトの様子を写真付きで伝えるもので、お互いに何をやっているのかが分かります。本来、読者向けのコンテンツなのに、社内で雑談が生まれるいいツールになってたりもします。誰かがおもちを食べているようななんでもないところを掲載したりもしていて、「社員の家族が昼間のパパの姿を楽しんだりもしています」(冨田さん)。
複数の仕事をかけもちしていたりすると目標設定や評価の仕方が気になるところですが、「特に評価に関する困りごとはこれまでありませんでした」(中林さん)。個人の評価よりも会社が読者に支持されるかどうかが大切で、会社が支持されて伸びたらその分みんなで分ければいい。自分の評価を気にすることよりも楽しいことを生み出すことに集中すれば会社は支持され、成長できるはず、という考えです。
実際「ほぼ日手帳」の売り上げ数は、2006年14万部、2007年23万部、2008年25万部と確実に成長しました。勤務時間は「何時(開始時間)から8時間仕事をします」と年に1回申請して決定。退社が遅くなってしまった時に翌日の出勤時間をずらしたりするのは「人に迷惑をかけなければよし」(石川さん)と、各人の裁量に任せているのです。勤務時間中も会社にいなければいけないという決まりはないので、カフェで原稿を書いたり、集中したいときは大きなヘッドフォンをつけて集中したいことをアピールしたりと各人で仕事を進めるための工夫もします。
オフィスを決めたポイントは、日当たりがいいことと、人どおりがあって街からの刺激を受けられるということ。内装のテーマは「ベンチ」で、話を聞いた会議室のイスもベンチでした。横に並んで座ると、同じ側にいることになるのでイヤなことをしない。「共有したり協力して解決しよう」という象徴がベンチなのです。
最大70人収容の会議室は、何か特定の目的があって作ったというより、広い場所があれば何かができる、という発想から作りました。全社員を集めたミーティングや、ゲストを招いてのトークライブ、撮影などさまざまな用途に活用しています。人に仕事がつくように、場所に仕事がついたのですね。
「同じ船のクルー」(石川さん)としてみんなで協力してやっていこうという考えが、働き方から評価、オフィスなどに浸透していました。だから社員もみんな安心して楽しんで仕事をして、楽しいコンテンツを生み出しているみたい。私もここでお仕事したいなあ……。ああ、履歴書もって行けばよかった……。ちゃっかりし忘れたみっちゃんなのでした。
著者紹介:満木葉子(みつき・ようこ)
1976年神戸生まれ・鹿児島育ち。立教大学心理学科卒業後、国内大手企業4社にて営業・人事・総務を経験。立教ビジネスクリエーター塾の役員を務めるほか、NPO団体やイベントのPRを行う。洪水で実家水没、震災で実家倒壊、さらにピッキング、スキミングの被害に遭うもいつもちゃっかり助かる。特技はあいづちで、このためか営業時代は多数受賞。趣味は俳句と深夜ビール片手にする手芸。いくら食べても太らない体が唯一の自慢。
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